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毎日1曲『三種の神器』20220201 - 君のひとみは10000ボルト

作詞、作曲、歌唱、演奏、DTMを趣味や仕事にしている人に向けて書いています。毎日1曲、頭に浮かんだ曲を取り上げて、僕が独断で『ヒット曲の三種の神器』と呼んでいる、世界のヒット曲に共通する不思議な法則を数値化して解説をしているコラムです。興味を惹かれたら『ヒット曲の三種の神器』の詳細についての過去記事もご覧ください。

今日の1曲

日付:2022年2月1日
タイトル:君のひとみは10000ボルト
アーティスト:中村佳穂/オリジナル:堀内孝雄

『三種の神器』度数

ヨナヌキメロディ度:0
弱起度:0
客観描写度:5
解説:
メロディパートはAメロとサビの2つ、いずれもファもシも多用され、ヨナヌキ度数は0で、弱起度数も0です。歌詞はAパートに隠喩的な情景描写があるものの、「君のひとみは10000ボルト 地上に降りた最後の天使」という、曲の大半でたった2行のサビをを延々と繰り返す、広告のキャッチコピーそのものが歌になったようなシンプルさがヒットにつながったと分析します。

Wikipediaによれば「君のひとみは10000ボルト」というコピーを使うことが、CMのクライアントである資生堂からの指定だったとのこと。そのコピーを膨らませて歌詞が出来、その歌詞に曲をつけたという順番です。

言葉をモチーフにして作られた曲にはブレがありません。言葉にはすでに音楽があり、テーマがあるからです。逆にメロディやサウンドは情緒を表現できますが、テーマは抽象的なことが多いです。ポピュラー音楽に限って言えば、例えば「運命」とタイトルのメロディに歌詞をつけるのは難しいのです。

コメント:
1978年に資生堂のCMの為に作られた曲が大ヒット。当時人気絶頂だったフォークロックグループ「アリス」へのオファーだったのですが、アーティスト側の都合でメンバーの堀内孝雄のソロ名義のシングルとして発売されました。

今年、資生堂の創立150年アニバーサリーのキャンペーンCMが公開されています。その中で「君のひとみは10000ボルト」が再び使われているのですが、流れているのはオリジナルバージョンではなく、京都在住のアーティスト中村佳穂さんによるカバーバージョンで、それが素晴らしかったので取り上げました。

今年、1日1曲のシリーズコラムを書き始めて、多くのヒット曲が実はカバー曲であったり、モチーフとなった原曲が存在することを知りました。

音楽に限らず、文化芸術とは人が作ったものから受けた感動が動機となって作品が生まれ、その作品がまた後世の人に受け継がれていくことそのものだということを実感します。つまり、文化芸術はパクリこそが本質なのです。それを盗用だと訴えたりするのは、文化芸術人としての矜持の小ささを晒す行為だと思います。

化粧品メーカーとして知らない人はいない資生堂は、全世代の日本人女性へのエールとして「君のひとみは10000ボルト」という45年前のコピーを再採用しました。

偶然かな、マスクでほとんど人の瞳しか見えない時代に、このメッセージは示唆に富むと考えさせられたのであります。

各種リンク

150周年企業広告「美しさとは、人のしあわせを願うこと。」60秒篇|資生堂
中村佳穂(Wikipedia)
君のひとみは10000ボルト(Wikipedia)
君のひとみは10000ボルト 堀内孝雄

『ヒット曲の三種の神器』解説記事

大平太一流 作詞作曲の必殺技『ヒット曲の三種の神器』解説記事です、是非あわせて読んでみてください。
①ヨナヌキメロディ/なぜか覚えやすい音階の不思議
②弱起/インパクト大!言葉やメロディが飛び込んでくる
③客観描写/具体的で無感情な描写が人の心に感動を生む

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