見出し画像

【解説】福島原発事故の真実


<前文>

筆者が文中に書いたことは事実と信じていること

文中菅直人元首相は資料や時系列の関係上「菅直人首相」と記載した
また「放射能=radioactivity」という言葉は使っていない
福島第一原発は耐用年数の目安だった30年を6年過ぎていた
筆者が文中に書いたことは数々の資料に当たって事実と信じていることだ
疑いがある方はネットの時代なのでご自分で資料に当たってください

4つのプラントがほぼ同時に壊れた

<本文>

これは大変優れた作品だ

キャストの方々

宮崎さんの映画がTLに溢れる中で体調不全のため出掛けることが出来ない筆者は家でNETFLIXの「THE DAYS」を観た これは大変優れた作品だがある理由によってあの時東京で被災した方にはお勧めし辛い それはキャストの感情をダイレクトに揺さぶる演技・スタッフの想像を絶するであろう努力・そして中田秀夫監督の踏ん張りによってあの時のヒリヒリするような焦燥感が蘇ってしまうからだ

あの時何が辛かったかと言えば「しっかりした情報が無かったこと」これに尽きる まず東電本店(本社ではないところが東電の特殊性を示している)<注1>は現場とテレビ電話で繋がっているにもかかわらずその情報を隠し原子力災害対策本部にはリアルタイムの報告をしていない 第十五号報告は本店ではなく福島第一原子力発電所の吉田所長が内閣総理大臣に通報している<注2>

<筆者体験談>

関東汚染地域に何が起きていたか

TDRの駐車場の液状化

あの時は東京でも大きな混乱があった 筆者は当時非常勤講師をしていた学校の卒業式の会場である浦安のホテルで東日本大震災に被災した TDRの駐車場は液状化して冠水状態でホテルの外壁にもひびが入った 周辺道路も液状化して冠水していたが慣れた道であるのと隣のトラックのタイヤを目安とした走行が可能だったので生徒の安全確保後に車で帰宅を試みた 首都高が安全確認終了まで通行禁止だったので下道を走行した 筆者はドライブが好きで湾岸道路も京浜道路も慣れていたので困ることは無かったが他の車はカーナビが頼りの走行らしかった

そうなると幅の広い道路では左側車線がカーナビに示されるので一本道走行となってしまい大渋滞となった 交差点は勿論信号が消えている 初等教育以来の軍人教育が沁みついいる日本人は警察官の誘導無しでも片側三車線の交差点を一台ずつ譲り合って右折も含めてこなしていた この驚くべき秩序だった行動は多くの海外の方も指摘されていた 日本人はまるで軍人のように自分のやるべきことを粛々と遂行していると

高速が使えれば45分の距離を6時間半かかって自宅に帰ったら損害は本棚の本が1冊倒れたくらいと軽微だった 家族は猫を連れて近所の広域避難場所に移動していた 隣家のインドの方の世話になったらしい 無事を喜び合ったのもつかの間翌12日に1号機が水素爆発を起こした 非常な幸運(これについての意見はあるが控える)で北風だったため放射性降下物の大半は海洋に落下してブルームの一部が神奈川に飛来するにとどまった<注3>

で被災後相模原でも放射能に曝露してしまいキツイ目にあった 多かれ少なかれ首都圏の住民は同じ目にあっている 風向きの関係で神奈川が最初にひどい目にあったが群馬も長野も栃木も酷い目にあっている 千葉や茨城はいまだに公園に汚染が残っている 水の汚染も酷かった 関東汚染地域に何が起きていたかリンク先を読んで頂くとわかります
https://www.kwansei.ac.jp/cms/kwansei_fukkou/file/research/bulletin/saigaifukkou_07/kiyou7_06.pdf

<本文再開>

放射性降下物の人体への影響

米軍は横須賀港の放射線数値が上がるとすぐに停泊している主要艦艇を太平洋に逃がした と同時に県内の軍人・軍属・その家族を出国させた<注3> これは非常に素早い対応であった 隣のインドの人も12日に即時帰国したし他国の人も順次帰国勧告が出て帰国していった 官邸はこの帰国勧告を引っ込めてもらうため相当交渉したらしいが友邦と言えど極東のアジア人の国のこと無視されて時間のロスに終わった

多くの関東圏の住民が「自分は安全なのか」「避難した方が良いのか」「飲み水食べ物は大丈夫なのか」という生きる上での基本情報を得られず不安の真っただ中で暮らしながら輪番停電にしたがって不便な思いを我慢していた 信号が消えて交差点で事故で亡くなった方もいらした 蝋燭による火事や呼吸器の停止で死亡した例もあった

さて自分の体験も交えて感想というより追想に近い記述となってしまった 筆者はこの件は真相が知りたくてかなり入れ込んで資料集めをした 吉田調書以外に原発従業員に取材した本も読んだ ある従業員の話によると原発は津波ではなく地震で損傷したという<注4> それ以外に消防隊員・警察官・地元の方々の体験談数多く読んだ

菅直人首相はよく様々なことを決断したと思う ベントの決断<注5> これは場合によっては福島県を犠牲にして首都圏を救うということなので自民党にはとてもできない そして海水注入の件(官邸はGoなのに東電が勝手に忖度した この辺りは資料がいくつもある)これは描かれてなかったが東電は原発に海水を入れるのを相当嫌がったようだ<注6> 

筆者は当時軍都相模原市民だったので米軍の家族・軍属が専用バス(皮肉なことに桜の絵柄だ)で逃げ出すのを目の前で見てmixiに報告を上げたのを覚えている この時菅直人首相・民主党政府でなかったら日本全国の原発は今も稼働していて地震の度におびえていたことだろう 菅直人首相が浜岡原発をはじめとして全国の原発を止めたおかげで現在の日本がある<注7>

描き切れていないことは多い 東電の社員の家族が真っ先に逃げ出したこと 協力企業の社員は地元の人なので逃げられないこと 東電の現地採用の社員も逃げられないこと たくさんの警察官・消防官が動員されて爆死覚悟で協力したこと ちなみにトモダチ作戦の米軍は原発が水蒸気爆発したときに真っ先に厚木からも横須賀からも引き上げたこと トモダチ作戦に参加した複数の米兵が放射能障害で国を訴えていること等々

本作は関東以外の方には素晴らしい映画なので必見です 関東圏ではPTSDに負けない自信がある方にだけおすすめしたい ちなみに嘘八百のFukushima50(不思議なことに底本は同じなのだ)に比べればはるかに良い 太陽の蓋は良作だが少し取材に欠ける(官邸記者クラブの一記者の視点なので)部分が多かった 今回は原発内部と官邸周辺のみが描かれたがかなり突っこんで描写されているので良い

最後に吉田所長を演じた役所広司さんをはじめ出演者の方々の熱演に拍手を送りたい 久々に熱気を感じる映画を見た また美術スタッフをはじめスタッフの皆さん方の邦画の常識をはるかに超えるであろう努力にも敬意を表したい 当に迫真の画面であった 中田秀夫監督ご苦労様でした 良いものを見せて頂きました 皆さまありがとうございました

-----此方の方がメインかもという注釈-----

<注1>

東京電力の社員は準公務員(みなし公務員)である

みなし公務員一覧

 会社の根拠地は法律上は本店と呼ばれ本社というのは俗称で「会社」に合わせてあるからだ 東京電力は「東京電力ホールディングス株式会社」が正式名称であるが法律名である「本店」を用いている 電力料金は公的機関のサービス料金に準じて公共料金であり国会審議の対象である
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/price_measures/utility_charges_001/

<注2>

原子力緊急事態宣言

対策本部の組織図


第十五条 原子力規制委員会は、次のいずれかに該当する場合において、原子力緊急事態が発生したと認めるときは、直ちに、内閣総理大臣に対し、その状況に関する必要な情報の報告を行うとともに、次項の規定による公示及び第三項の規定による指示の案を提出しなければならない。
https://ja.wikipedia.org/wiki/原子力緊急事態宣言

<注3>

プルームは直線ではない

プルームは2回来た


プルームは当然だが風に揺られて左右にぶれていく したがって図に書かれているより広範囲で放射性降下物は検出された
https://www.ourplanet-tv.org/37927/

<注4>

1号機 津波前に重要設備損傷か 原子炉建屋で高線量蒸気


発電プラント略図


1号機では、津波による電源喪失によって冷却ができなくなり、原子炉圧力容器から高濃度の放射性物質を含む蒸気が漏れたとされていたが、原子炉内の圧力が高まって配管などが破損したと仮定するには、あまりに短時間で建屋内に充満したことになる。東電関係者は「地震の揺れで圧力容器や配管に損傷があったかもしれない」と、津波より前に重要設備が被害を受けていた可能性を認めた。

第1原発の事故で東電と経済産業省原子力安全・保安院はこれまで、原子炉は揺れに耐えたが、想定外の大きさの津波に襲われたことで電源が失われ、爆発事故に至ったとの見方を示していた。地震による重要設備への被害がなかったことを前提に、第1原発の事故後、各地の原発では予備電源確保や防波堤設置など津波対策を強化する動きが広がってい るので、原発の耐震指針についても再検討を迫られそうだ。

関係者によると、3月11日夜、1号機の状態を確認するため作業員が原子炉建屋に入ったところ、線量計のアラームが数秒で鳴った。建屋内には高線量の蒸気が充満していたとみられ 、作業員は退避。線量計の数値から放射線量は毎時300ミリシーベルト程度だったと推定される。

この時点ではまだ、格納容器の弁を開けて内部圧力を下げる「ベント」措置は取られていなかった。1号機の炉内では11日夜から水位が低下、東電は大量注水を続けたが水位は回復せず、燃料が露出してメルトダウン(全炉心溶融)につながったとみられる。

さらに炉心溶融により、燃料を覆う被覆管のジルコニウムという金属が水蒸気と化学反応して水素が発生、3月12日午後3時36分の原子炉建屋爆発の原因となった 。

共同通信 2011/05/15 02:02
http://www.47news.jp/CN/201105/CN2011051401000953.html

<注5>

ウェットベントの原理

注水ライン


この図のようにベントされる気体は一度水を潜るのだがそれで放射性物質がどれくらい除去されるのかは実験したことが無いので不明だ 気体の圧力が強ければ気泡の方が水を押しのけてほとんどの放射性物質が大気中に放出される可能性が大きい

<注6>

海水注入「もったいない」東電本店が難色

テレビ電話の映像

東京電力が6日に公開した福島第1原子力発電所事故後の社内テレビ会議の映像で、危機的状況にあった2号機への海水注入に、本店が「もったいない」と難色を示していたことが明らかになった。東電の発表を国が止めようとしたため情報公表が遅れたことも判明。事故翌日に1号機で水素爆発が起きた後も事故対応の混乱が続き、事態悪化を止められなかった実態が浮き彫りになった。

「いきなり海水というのは材料が腐ったりしてもったいない」(東電本店の社員)

3号機が爆発し騒然とする東京電力本店(2011年3月14日)=同社提供

公開映像によると、第1原発の吉田昌郎所長(当時)は昨年3月13日午後8時半ごろ、2号機原子炉を冷却するため海水の注入を準備。これに東電本店の「復旧班」社員が異議を唱えた。

吉田所長は「圧倒的に大量の水が必要なときに真水にこだわっていると大変なんですよ。海水で行かざるを得ない」と反論したが、本店社員は「いかにももったいないなという感じがする」と重ねて指摘。圧力容器などが海水の塩分で腐食し、廃炉になるのを恐れたとみられる。社員の氏名などは公表されていない。

その後、海水注入は始まったが原子炉水位が低下、15日午前の格納容器損傷につながった。
https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0904P_Q2A810C1CR8001/

<注7>

安倍政権と比べてみると…


政策実現力と危機対応力を検証
これはリンクを張るのでリンク先をご覧頂きたい


最後に日本学術会議による検討をリンクしておくので興味がある方はお読みいただきたい
https://www.scj.go.jp/ja/event/pdf2/140917b.pdf

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?