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フラットボックスの自作レシピ

はじめに

 口径20センチ、焦点距離760mmのASA 8Nにピッタリなフラットボックスを自作してみました。このフラットボックスについてはε-130Dにて実績があったものです。

フラット補正とは

 カメラレンズでも絞り開放で撮影すると周辺減光が発生します。さらに口径が巨大でF値も低い望遠鏡だと、余計に周辺減光が発生します。一般的な被写体であれば周辺減光を生かした仕上げをすることもできますし、インスタグラムのようにあえてノスタルジックさを加味するための周辺減光フィルターもあります。

 ただ、現代のデジタル天体写真は微弱な光をとらえ、その小さな光のシグナルを強調することで見えなかったものを見えるようように画像処理をおこなっています。したがって、周辺減光が少しでもあると、必要でない部分も強調されてしまうので、画像処理が進められません。それで周辺減光をなくすために、均一の光によるフラットフレームを撮影して、除算をしているのです。

フラットフレーム撮影のいくつかの方法

 アマチュア天体写真家では、いくつかの方法が考案されております。いくつかを紹介すると。

①薄明時にコンビニ袋をかけて撮影する
 コンビニじゃなくてもスーパーでもよく、あの白いビニール袋ですね。よく、遠征される方は、薄明が始まってくると「今日もよい天気だったなあ~撮影日和だったなあ~」「今回は入選まちがいなし」と感傷に浸りながら、ひと時の時間をフラット撮影に使われています。
 手っ取り早いと思いますが、薄明時、刻々と明るくなっていく中で、シワシワのビニールを被せるとすると、撮影時間や再現性が課題だと自分は思っていて使ったことはないです。

②LED板を撮影する
 トレース用のLED板でもいいのですが、その平たい板をフードに被せてフラットフレームを撮影する方法です。LEDの光にムラがあるので、数フレームの撮影ごとに板を回転させて、加算平均コンポジットで均一にします。また、天体専用のフラットフレーム撮影用のムラのないLED盤も海外では販売されています。
 回転させないといけないことによる再現性や手間に疑問があるので使っていません。

③液晶ディスプレイやタブレットを撮影する
 ②とほぼ同じで、光源違いです。昔、私はこの方法でやっていました。薄明を待たずに遠征から帰ることも多く、自宅でフラットフレーム撮影していましたが、いま思うと乱暴でしたね。。
 ただし、デジタル一眼も含むカラーカメラを利用する場合には、RGB値を合わせた色光源を用意することができるのがメリットだと思います。
 一眼レフカメラではミラーボックスの影響を大きく受け、周辺部分のフラットが合わずに画像処理で苦労した思い出ばかりです。※光源が明るくて短時間で撮影していたことも原因かと思います。

④白やグレーとかのカラー板を撮影する
 海外のリモート観測所(田中光学なども事業化している倉庫みたいなスライドルーフの観測所で大量の機材を並べているやつ)では、これを利用されるのをよくみます。赤道儀をPark位置にしたときにカラー板と直角並行にして撮影します。ただし、影がないようにするために、曇天で撮影する必要があると思います。
 これは私の観測所でも検討しています。

⑤曇天スカイフラット
 三本松さんが雑誌星ナビ2018年5月号で紹介されていた、分子雲を超絶に浮かび上がらせるときに採用されている方法です。曇天の夜に、乳白色のアクリル板をフードに被せて空を撮影します。
 光害の影響も考えて高度や方角で幾つも用意するのが良いみたいですね。これだと光害の影響も補正することができます。ただし、フラット撮影するのに1夜は必要だし、機材を分解できないという不便さはあります。観測所での撮影には適していますね。

⑥同撮スカイフラット
 深夜道楽、AstroGPVでおなじみの荒井さんが発案した、フラット用画像処理ソフト「FlatAid」を使った方法で、撮影対象の近隣付近の輝星のない領域を、ライトフレームと同時間、複数枚撮影して、FlatAidで星をとってガウスぼかししたフレームを加算平均してフラットフレームに利用する方法です。これだと⑤と同じように光害を加味したフラットフレームを用意することができます。
 遠征時には、その撮影時間を確保することは難しいので、観測所での撮影に適してそうです。

⑦フラットボックス
 今回、自作するものです。フラットフレームの取得には均一な光源が必要なので、その再現性を高めるためにも、光源から距離をとって乳白色のアクリル盤を通します。さらに2つ目のアクリル板を通すことで、さらに均一性が担保できます。光源にはトレース用のLED板を利用します。

 どの方法にも言えるのですが、なるべく撮影環境と同じにすることが大切です。例えばデジタルカメラならF値、ISO値は合わした状態で、さらに撮影時間もライトフレームに近づけたほうがよいです。さらにフラットダークも必ず取得しましょう。それがないとフラットが合いません。そうすると、フラット撮影だけでも凄く時間がかかりますよね!でも手間をかけたらかけただけ作品に戻ってきます。フラットフレームの撮影には本番撮影と同じだけの慎重さと時間をかけるべきだと思います。

設計図

スクリーンショット 2020-08-12 9.10.50

 自作したフードの直径が290mmだったこともあり、それに丁度はまるように300mmで設計しています。フードの上に載せて、さらにその上にトレース台を載せるイメージです。トレース台とアクリル板、アクリル板の間を約10cmぐらいで考えています。

材料

トレース台
 A3サイズで無段階調光できるものを選びました。USB給電です。

プラスチック段ポール
 プラダンボとも呼ばれているやつで、軽くて丈夫で加工しやすいので枠組みに利用しています。ホームセンターで購入しました。デカイサイズで500円ぐらいです。

アクリル板
 オパールや乳白色、乳半と呼ばれているやつです。2mm厚を選んでいます。けちっちゃって2mmにしたのですが、3mmのほうがしっかりしてます。ホームセンターで30cm x 30cmのものを500円/枚で購入しました。

制作過程

 まず、プラスチック段ボールを図面通りに切断して、アクリル板を挟み込むのと補強のためにプラスチック段ボールを利用しました。ボンドで接着します。

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 上の写真のものを2つ作って張り合わせるだけです。次はもう完成品です。

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上の開いている部分にトレース台を乗っけます。鏡筒側からみるとこんな感じです。

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 最後にフラット撮影時のイメージです。当然ですが、フードを被せた状態でフラットボックス、その上にLEDトレース台をのっけます。LEDトレース台の電源はモバイルUSBバッテリーを使います。

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実際に使ってみての改善

 製作後の顛末ですが、フラットフレームを撮影するには照度が高くて、数秒〜10秒程度の露出時間を確保できませんでした。今回採用したLEDトレース台の照度を下げる必要があります。

 照度を下げるには、遮光フィルターを使ったりするのですが、それだと照度の調整が難しいため、簡単な電子工作で要件をみたしました。

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 500ΩBの可変抵抗をUSBケーブルの赤線(+極)にカマしました。テストしたところ、十分な効果を得られています。右が今までε-130D用に利用していたフラットボックス。左が今回の調光機能を追加したものです。色は違うのですが、光量は同じぐらいまで落ちましたね。

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さいごに

 フラットフレームの撮影方法は撮影機材や遠征するのかによってもひとそれぞれですので、どれが一番よいというのはないと思います。
 フラットボックスについては、海外でも国内でもWebサイトなどで紹介はないのですが、良好なフラットフレームを安定して得られる方法ですので、是非参考にしてください。

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天体写真を初めて8年ぐらい。過去には年間10回も天文雑誌のフォトコンで入選していたこともあるが、再起動してから止めました。 過去のブログ (2014年〜2017年) http://ohmishonin.blog.jp/
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