ケフェウス座のマイナーエリアへのチャレンジ (SH2-140,SH2-150)
はじめに
天体写真を再開して、サドル付近、IC1396、北アメリカ星雲と比較的明るく、メジャーな対象ばかりを撮影してきて、そろそろ撮影から画像処理までのリハビリも終わったかなあと自己評価したところで、ケフェウスの非常に淡い対象に狙いを定めてみました。8月は子午線またぎが0時過ぎということもあり、非常に取りごろですね。
SH2-150とSH2-140は非常に暗く、難易度が最強というレベルにカテゴライズされています。広域で撮影された写真から判断すると、隣の難関「洞窟星雲 SH-155」よりも数倍は暗いです。
いままで撮影したことのない対象で、これがリハビリの最終課題とします。
構図
縦構図を生かして、北西にSH2-150、南東にSH2-140を入れる算段をしました。そうすると、おのずと真ん中にSH2-145が配置され、私のこのシステムだと丁度おさまります。
こちらがこの対象の画像処理後の写真となります。まったくメジャー対象でないので、「これはなんという星雲ですか?」って聞かれると困るような、玄人好みなエリアです。
撮影データ
8月15日と8月17日は新月期の前で月齢的にも26と28で20時半から3時半まで約7時間も撮影時間が確保できました。8月15日は北アメリカ星雲の撮影を半分やって、そのあとから撮影しはじめました。8月17日は約7時間のフルマラソンを完走しました。仕事が終わって少し晩酌をしてから、平日でも撮影できるのはリモート観測所のおかげです。撮影が終わったら3時半で、そこから8時ごろまで4時間半ぐらい睡眠して、9時から自宅でリモートワークという感じです。
非常に淡い領域ということは事前に知っていたので、コントラストを出したときのノイズの状況を踏まえても撮影時間を稼ぐしか方法はありませんでした。
結果的に、2夜で合計550分(約9.2時間)の光を集めることになりました!
[Technical Data]
Object Name: SH2-140, SH2-150
Date: 2020/08/15, 2020/08/17
Location: Fujigane Remote Observatory, Yamanashi, Japan
Scope: ε-130Db βSGR
Mount: iOptron CEM60-EC
Autoguider:
Camera: QHY5L-II
Scope: KOWA LM100JC
Software: PHD2
Camera: Moravian G3-16200, -15C
Filter: Astrodon LRGB Gen2 E-Series Tru-Balance Filters
Exposure:
L: 1x1 600sec x 29
R: 2x2 300sec x 15
G: 2x2 300sec x 17
B: 2x2 300sec x 20
Software: Sequence Generator Pro
Processing:
PixInsight 1.8
StellaImage 7
Photoshop CC 2020
画像処理
結果を先に書くと、この対象においての画像処理のポイントはデジタル現像です。
Pixinsightでコンポジットが終わったFitsファイルを、トライアルのつもりで、いつもの感じでカラーバランスをあわせて、サクサクとデジタル現像をしようとすると、まったくレンジ幅がありません。このときに、この対象の困難さを実感しました。
ポイント1 デジタル現像前のカラーバランス
デジタル現像の前にいかにカラーバランスを整えておくのか?あの、UIが最悪で、色再現性が低いステライメージ上での作業は困難を極めます。
ポイント2 デジタル現像時のGainパラメータ
今回はデジタル現像の際にGainを1.15ぐらいかけました。そして、パラメータを何度も変更してLとRGBで最適な値を見つけるために何度もデジタル現像をやり直しました。なるべくPhotoShopでの作業を少なくするためです。
処理の困難さは、後ほど記事にしてみます。
気をつけたことを以下にまとめました。
①星は輝きが感じられるようにすること ※そのためにL画像のデジタル現像のパラメータには注意をしました
②微弱な光を捉えているために光害の影響を受けやすいので、適切なカブリ補正を実行すること
さいごに
淡い領域をコントラスト高く、カラフルに仕上げるためには、撮影時間をより多く稼ぐことしかなく、そのためにも観測室で撮影できることの幸せをしみじみと感じました。
また、撮影時間を稼いでも輝度差が少ない対象ということもあるので、その分、カラーデータを稼ぐためにRGBフィルターそれぞれの2xビニングのライトフレームを大量に撮影しました。それによって輝度でなく色強度を強化して彩度強調に耐えれる前工程のライトフレームを手にしてから画像処理に臨んだのです。
クローズアップはどこにしようとおもいましたが、SH2-140付近にします。
おしまい
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