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Vol.2:Mio 「じっくりと思考を深めていくこと、誰かの内面に潜りこみ理解しあうことが真の多様性なのではないだろうか 」

O株式会社のメンバーにインタビュー。第2弾では、共同創業者でクリエイティブディレクターのMioを紹介します。

デジタルネイティブ世代の生きづらさを解消したい

ーーはじめに、Mioさんが現在Oで担当されている業務について教えていただけますか?

Mio:「MEs」のUI・UXやブランドデザイン、ウェブなど、デザイン全般を担当しています。Oの創業者であるa春とはアメリカの美大・ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン(RISD)からの友人で、MEsの原型となるアイデアを2人で構想したことがきっかけとなり、Oの設立に至りました。

ーー「MEs」の構想の変遷について教えてください。

Mio:私自身がデジタルネイティブ世代として、デジタル空間に生きづらさを感じることが度々あり、そうした負の側面を解消したいという思いからMEsを構想したのがきっかけです。

私が「MEs」 を通じて解消したい点は大きく2つあります。1つ目が、私もいちクリエイターとして感じていることなのですが、クリエイターのぐちゃぐちゃな脳内を表現できる思考整理ツールが存在しないという点です。2つ目が、SNS(Twitter、Instagram、Facebook)上でフェイクニュースが瞬間的に拡散されていくことによって、人々の分断が進んでいるという点です。テキストや写真を通じて、深く考えることなしにコンテンツが拡散されていくことも、もう古いのではないかと考えるようになりました。

そこで、時間をかけてじっくりと思考を深めていくことや、誰かの内面に潜りこんでいくことで理解しあっていくことが真の多様性といえるのではないか?と考えたのをきっかけに、「MEs」の構想はスタートしました。

当初はスマートフォンアプリを作るというアイデアからスタートしましたが、その後、デスクトップ版やメタバースでも出した方がいいのではないかと、どんどんアイデアが発展していきました。昨年の夏くらいからは、NFTのリサーチも始めました。このように、アプリやウェブなどアプローチしていきたい媒体の変化はあったものの、一方で「MEs」の根本的なアイデアは構想当初から全く変わることはありませんでした。

「言葉ではない伝え方」に興味を持ち、デザインを学ぶ

——それでは一転して、Mioさんのご経歴について教えていただけますか?

Mio:中国人の母と日本人の父のもとに生まれ、幼少期から中国と日本を行き来していました。小中学時代は転校を繰り返し、これまでの人生で一つの場所に五年以上住んだことがなく、家という概念が私の中ではとても曖昧です。

二つある母国語のどちらも覚えなくてはいけないことに苦労したのですが、その経験を通じて、「言葉ではない伝え方」にとても興味を持つようになりました。むしろ、一時期、言葉以外の手段でしか、自分を表現できない時期がありました。
絵を描く、図で表現する、ジェスチャーで気持ちを伝えるといった非言語コミュニケーションを多用する中で、伝達すること、それ自体に興味をもち、当時は翻訳家や通訳者になりたいと考えていました。

しかし、次第に美術やデザインに興味を持ち始め、専門的に学ぶことができる高校に進みたいと思うようになりました。高校ではまだデザイナーになると決めていた訳ではなかったので、幅広く興味を持っていたのですが、進路を決めるタイミングになり、アートプログラムの担当教員に勧められて美大を中心に受験をすることにしました。

絵を描くことが好きだったのでイラストレーションを専門的に学ぼうと思っていたのですが、ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン(RISD)に入学し、一年生の頃に総合的に様々な分野を学ぶ中で、誰かのために何かを伝えることどのような意味があるのだろうかということに興味を持ち、グラフィックデザイン科に進みました。


ーー表現すること自体というよりも、メッセージを伝える手段としての表現に興味を持ち始めたということですか?

Mio:そうですね。専門的に習った訳ではないのですが、イラストレーションとはストーリーを絵で伝えるものだと思っています。それ以外にも、体験をデザインすることや、本やパブリックアートなど、様々な表現手段による伝え方を深めていくことは面白そうだなと思うようになりました。

ーーこれまでの3年間を振り返って頂きたいのですが、いかがでしたか?

Mio:突然コロナ禍が訪れ、大変だったということは間違いないのですが、このような事態になり、人と人の関わり合い方が大きく変化する中でも、やはりMEsは必要とされるプロダクトなんだという自信がつきました。

その一方で、私もa春も社会人経験ゼロの学生だったので、様々なことをゼロから学びながら進めていくことはとても苦労しました。試行錯誤をしながら、少しずつこうやったらいいのかということを学んでいきました。


デザインの力で、気持ちが動く体験を作りたい

ーーOはどのようなメンバーが集まった会社か教えて頂けますか?

Mio:メンバーそれぞれ本当にすごく才能があって、飛び抜けたスキルを持っているのですが、共通点は、思考がどんどん奥深くに広がっていくタイプだということです。

その思考を表現する方法が言葉以外の人だったり、ゆっくりと時間をかける必要があるマイペースな人だったりで、「MEs」というプロダクトを心から必要だと思っている点が共通しています。

ーー「MEs」を作っている自分たちが一番の顧客ということですね。

Mio:そうですね。以前投資家の方から言われた「誰が使わなくても、自分が使いたいって思うんだったらそれは大丈夫だよ。」という言葉を身に刻んでいます。

これから一緒に学びながら作っていくという感じが共通しています。その点は強みであり弱みであるので様々な知見を持ったプロフェッショナルの方々とも協働していきたいと思っています。

ーーMioさんは現在、どのようなことに興味を持たれていますか?

Mio:言語学や文化人類学など、ある一つのカルチャーを現場に行って臨場感を持って体験しながら、全体像を理解するというようなアプローチが好きです。もともと旅行が大好きで、その延長でこれらの分野に興味を持ち始めました。

他にも、今学校で学んでいる空間デザインに興味を持っています。私は美術館が好きで、よく行くのですが、入館してから退館するまでの体験がすごく丁寧にデザインされているなあと感心します。「人が何を感じるか」を深く考えて落とし込んだデザインに興味があります。例えば、映画館で映画を観た後に、帰り道がちょっとだけ普段と違うように見えたりするということがあると思うのですが、デザインの力でそうした体験を作り出したいと思って勉強をしています。

ーー最後に、今後取り組みたいことを教えてください。

Mio:私が今一番楽しみにしていることは、MEsの中でコミュニティが形成されていくことです。MEsはひらめきを生むツールなので、そこからどのような予想外な事象が起きるか、どんな出会いが起きていくのかを楽しみにしています。

ーー今後の展開を楽しみにしています。本日はありがとうございました!


interview&text: Yasutaka Konishi