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もう一人の自分を見ているよう『ケーキの切れない非行少年たち』

こんにちは、オマンです。
今回は最近読んだ本の中で特に興味深かった本を紹介したいと思います。

医療少年院の精神科医の経験を元に書かれているので、常識から逸脱している事柄が見受けられ、新奇さを感じました。

1. 紹介する本

『ケーキの切れない非行少年たち』[著]宮口 幸治

2. 感想

私は非行少年(医療少年院)に対してどうしようもない攻撃性を持っている、周りになじむことができない協調性がないなどの偏見を抱いていました。
しかし、この本で紹介されている非行少年は大きく違いました。表情豊かに接してくれる少年、物静かに過ごしている少年など多く見受けられました。
このようなおとなしい少年たちが非行行為に発展してしまう理由に「軽度」障害者(境界知能)などがありました。
少年たちは簡単な図形の集まりを写すことができなかったり、ケーキを不均等な5等分にしてしまう、簡単な足し算や引き算ができないことが挙げられています。このような歪んでしまった思考で判断を鈍らされ、犯罪を起こしてしまいます。
医療少年院では今までの反省を行い、行動を更生をさせられますが、歪んでしまった思考のせいで反省・更生の意味をなさなくなります。

非行少年たちの成長して大人になった後の異常な行為(異常性癖、サイコパス的な行動)などを理解するのがもっとも苦しいと感じました。
大人になり社会的支援を受ける機会が子供の頃より減ったことで、認知機能の弱さ、対人スキルの乏しさなど気づかれずに思ったように物事を進めることができなくなることが新たな被害、障害を生んでしまいます。
しかし、このようなことはあまり注目されることがなく、ないがしろになっているのが現状です。たまに見る異常な行動をとる人たちの内面を理解することができるのではないかと感じました。この現状を解決しない限り非行少年たちの行動は続くのではないでしょうか。

この本を読み終えて、もう一人の自分を紹介されているような感覚を受けました。
客観的に見る自分とまったく違う行動を起こしている属性の人々を見たことで、今まで感じたことのない感性、論理に触れたことでもう一人の(新しい)人格(自分)が形成されたようでした。この感覚が良いことなのか悪いことなのかはわかりませんが、不思議な感覚に陥りました。

もしかしたら軽度知的障害(学習面の怠慢、意思の伝達不足など)や境界知能(IQが低く支援が必要な人)を持っているかもしれない自分を見失っている人に薦めたい一冊と思っています。このように感じる人はぜひ読んでみてください。

3. 余談

本書の内容には関係ないのですが、Amazonなどのレビューで編集が不出来なことが多く挙げられています。
構成がバラバラで同じような文、フレーズが書かれていることが多く見受けられました。それに加えて、引用した部分があまり説明されていないものがありました。

しかし、本書の編集を考慮してもとても有意義である本は間違いないことであります。

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