美味しいひまわり
容赦なく照りつける日差しが、夏の訪れを知らせていた。
エアコンの効いた車から降りたとたん、汗が噴き出した。
たまらず車内に戻り運転席の拓海《タクミ》に向かって
「これじゃチビは降ろせないよ。肉球焼けちゃうし!」 と言ったら
のんびりした口調で
「抱いてけばいいんじゃない。」 と返された。
ーーはぁ~ 誰が抱くの? この暑いのに チビだって迷惑だよ!--
というココロのコトバを変換して
「でもこの暑さじゃ、体温がこもって熱中症になっちゃうかもしれないし
やめといた方がいいよ、 日陰も全然ないしさ。」と、車外を指さした。
拓海はしばらく黙って外を眺めてから言った。
「ひまわりってさ、シフォンケーキみたいじゃね」
「えっ?」
「まあるくてさ、真ん中に穴があいてるケーキだよ。」
そんなことも知らないのと言いたげな声で拓海が言う
ーーいやいや 知ってるわシフォンケーキくらい そこじゃないだろーー
ぐっとこらえてココロのコトバを変換する。
「そうじゃなくて、 似てるかな? ひまわりとシフォンケーキって」
「悠莉《ユウリ》はそう思わないの?」
拓海の顔が、そう思わない君って変わってるねと言っている。
ああ、まただ こうなるともう全部が拓海のペースに持っていかれる
脳内で必死にひまわりとシフォンケーキの共通点を探りコトバにする
「しいて言うなら、かたち 丸い形と、 いろ 黄色っぽい色。」
「あー あと、 にじゅうまる 二重丸みたいなとこ・・・ 」
「だよね! にじゅうまる!!!」
ワントーン高い拓海の声、機嫌のよい証拠だ。
ーーよかった 正解で てか、クイズじゃないってーー
ココロのコトバはおいといて
「じゃあさ、拓海とチビは車で待っててよ、すぐ写真撮って来ちゃうから。」
そう言って僕は一眼レフを抱えて車を降り
ジリジリと照りつける太陽の下でファインダーをのぞいた
何百個ものシフォンケーキの行列がこちらを見ていた
この記事は⇧こちらの企画に参加しています
yuca.さん、春に続いてまた参加させて頂きました
写真は数年前に行った福島県喜多方市の三ノ倉スキー場のひまわり畑です
山の上で太陽に近いせいかとても暑かったのを覚えています
皆さんのひまわりの風景と物語を楽しく読ませて頂いています
ステキな企画をありがとうございました♡
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