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「昔と比べて今の音楽は」問題について

KORNのジョナサンデイヴィスが、こんなことを言ってたそうです。

元の記事を探してみたところ、多分これのことだと思うんですが、

ジョナサン個人の発言というより、エヴァネッセンスのエイミーリーの発言も混ざってるように思ったんですが、2人が言わんとすることは何か分かります。

で、僕の最終的な意見としては「音楽はTPOじゃないかな」というものです。

この発言に込められている問題や現象を2つ考察してみました。

  • 昔の音楽と今の音楽を比べる問題

  • 最近の音楽は才能が関係ないところに進んだ問題

昔の音楽と今の音楽を比べる問題

これは正直、いつの時代も、また音楽に限らず「最近の若いもんは」という論調は古代からずっとあり続けている普遍的なもののようです。(ググってみれば、古代エジプトの頃から説とか平安時代にもあった説とか色々あります)

ジョナサンとエイミーのバンドはどちらもNu Metalというジャンルの系譜にいる、90年代後半から台頭したものですが、その前から活動してきた80年代ハードロックバンド(いわば「Old」Metal)のあるギタリストがヤングギターという雑誌のインタビューで

「最近のNu Metalに魂はないよ。自分達のやってる(いわゆる速弾きを含んだテクニカルなギタースタイルを交えたメロディアスなロック)音楽こそ正統派だ」

というような趣旨の発言をしてたのを覚えています。(誰の発言かはうろ覚えなので名前は書かないでおきます。ヨーロッパ出身のバンドで、あまり世界的に売れてた人とかではなかったです)

要するにジョナサンもエイミーも20年前は「最近の若いもんは」と言われる側の層だったわけです。

(彼らもそれを自覚してるから「文句を言う年寄りになりたくないんだ」と付け加えているのだと思いますが)

自分とは通ってきた文化や取り巻く社会情勢が違うので世代間で理解し合えないことはよくあり、おそらく人類が続く限り消えない話だと思います。なので、この観点は「まあどの年代もそう言うよね」で終わりな話題です。

最近の音楽は才能が関係ないところに進んだとはどういうことか

彼らの論旨としては、

  • 今の音楽は、音楽をちゃんとパフォーマンスできることよりも、「綺麗に見せることの出来るエンジニアスキル」の方が重要になってしまった

  • 今のミュージシャンは音楽そのものの素晴らしさよりも、インターネット上でのキャラクターやパーソナリティが大事だ

ということだと理解してます。

これに対して僕の意見は、「あなた達の時代と今では求められることが変わってきている」ということです。どういうことかと言うと、「音楽単体でエンタメが成立しにくい時代になっているから」がその理由です。

(前にもそう言う話を書いた↓)

80〜90年代はマスメディアが強くて、アメリカだとMTVやラジオ、日本だとTVや雑誌で取り上げられることが王道のプロモーションで、かつ、音楽は音楽、それ以外のエンタメはそれ以外で、相互に独立していたような感じでした。

それが2000年代以降、YouTubeやSNSが伸びてきて、世の中のあらゆるエンタメコンテンツジャンルが同じプラットフォームに一度に並ぶようになりました。

そして、一般のユーザーは動画が音楽との接点になることも多くなり、そうすると必然的に音だけではない視覚情報も同時に摂取することになります。

つまり、今の時代の主流なコンテンツは視覚+聴覚+企画の、総合作品的なエンタメなのです。(ここ10年ほどで明らかに市場が拡大したアニメもゲームも総合作品タイプのエンタメ)

そんな状況において「音楽だけ純粋に聴いてください」は中々通りづらいものなんじゃないでしょうか。

だって動画は映像の力の方が強いし、画像系SNSは1枚の画像でしっかり世界観やムードが伝わるものじゃなきゃいけないし、ショートテキスト系SNSだと文章の文脈も影響するしで、音以外の視覚情報のウェイトが高いからです。

「綺麗に見せる」「整ったものを提示する」というのは、そんな環境下で自分達の音楽を伝えようとしてきた人達の努力の結晶のようなものだと思うので、僕はそれを一概に悪いものとして断ずるのはいかがなものかなあと思います。

音楽はTPO

ジョナサンとエイミーの発言は、主にヘヴィなロック、メタル界隈のことについて触れていると思いますが、どのジャンルでも、やっぱり大勢の不特定多数に届けようと思ったら、トレンドって無視できないと思うんですよね。

ましてや先述のとおり、色んなジャンルが混在するソーシャルネットのプラットフォームの中で可処分時間を奪おうと思ったら、ゲーム対メタルバンド、アニメ対ヘヴィロックバンド、漫画対ロックバンド、っていう図式になっちゃうわけです。

「ゲームをするよりアニメを見るより漫画を読むより、そのバンドの音楽か?」っていう問いに答えられるようにするとしたら、やっぱりそういったコンテンツと並んで遜色ない見せ方にしようと考えるのは当然では?と思います。

結局のところ、WebのSNSがプロモーション上重要な拠点で、その中で台頭しようと思ったら、その各拠点に合わせたTPOは必要だよねってことなんです。

あともう1つ、ジョナサンが言う「エンジニアがエディットしてる問題」ですが、これは確かに波形をいじることでグルーヴが損なわれるというのはあるので理解できるんですが、今の時代スピードも速いんで、時短の意味でそういう手法で音を整えるのは別に悪くないんじゃないかなあと個人的には思います。

ましてやプロミュージシャンで締め切りがタイトに決まってます、っていう状況で「いや、納得いくまでコンマ何ミリでも追い込むんじゃ〜!」ってやって、根詰めた結果、納期過ぎましたテヘペロは、それはそれで職業人として違うんじゃないかなあという気持ちもあります。

まとめ

ジョナサンとエイミーの発言に対して僕のささやかな意見としては、

  • 昔と今を比べることはずっと昔からあって、ジョナサンとエイミーもそういうベテラン世代になったんだなあ(デビュー当時から知ってる僕には何か感慨深い)

  • 最近の音楽は才能が関係ない、のではなく、音楽以外の違う才能を同時に求められる時代である。つらすぎ。

  • ちょっとDAW上でエディットするくらい大目に見たれや

ということです。

音楽を売り出していこうとしたら、それ以外のコンテンツの要素も取り入れるクロスオーバー、ミクスチャーな精神が当たり前なのが今の時代なんだと思います。そういう意味で、複数の要素をミックスさせた音楽で台頭したKORNとエヴァネッセンスの二人は、そういう今時の若いやつの事情も汲んであげてよ、と言いたいのです。

最後にこれだけは言わせてくれ

ジョナサンとエイミーをディスってるような書き方に捉えられるかもしれませんが、僕はKORNもエヴァネッセンスも超好きです。

KORNはFollow the leaderあたりからリアルタイムで聴いてるし、Skrillexと組んでダブステップ化した時代もカッコいいなと思ってたし、

特にエヴァネスの方は、周りの知り合いが「エヴァネッセンス、クソ微妙w」みたいに言ってた頃、自分一人で「こんなにダークで耽美で、歌が超絶上手くて文句のつけようがないバンドが微妙とはきさま何事だ」と言ってたくらいには好きです。(特に好きなのは2ndアルバム)

あと、正しい表記としては、KORNのRが逆だってことも知ってるんでお気遣いなく(笑!

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