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休息と仕事の間

ここ数年、自分の中で古書店ブームが来ているのだが、古書店はスタイルのふり幅が大きくて面白い。際どいところを攻めてるラインナップの店とか、長年コツコツ続けてきて膨大な量を誇る店、洒落た感じだけど中に入ったらガッツリ芸術系の本が並んでいる店などなど。

一方で、古民家をリノベーションして商いを始める人達も結構いて、両者が結びついたのが恵那市にある「庭文庫」。古書店兼カフェ兼くつろぎの場所(時々イベントスペース)。少し前に「大ナゴヤノート」の記事で見かけて気になっていた。

山と川、両方の景色を堪能しつつ落ち着いた古民家で本に囲まれながらお茶をする。最高じゃないですか。心がくたびれたときに訪れて、半日くらいのんびり過ごせたらいいな、ぐらいの気持ちで休みと営業日のタイミングが合うのを見計らっており、つい先日チャンスが訪れた。

恵那ICからナビに従い、車を15分ほど走らせると、赤い橋の手前、たいやき屋の前が「目的地」だという。おやおや? と思いつつあたりを見回すとたいやき屋の上に古民家が建っていて、そこが「庭文庫」。

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写真には写っていないが、玄関先でネコが迎えてくれた。

まるで知り合いの家でも訪ねるかのようにガラガラと引き戸を開けて「こんにちは」と中に入ると「いらっしゃいませ」と中の人が出てきて「ゆっくりしていってくださいね」と応える。本当に知り合いの家に来たみたい。

しかし、部屋の中のそこかしこに積まれたり並べられたりしている本を見ると、落ち着けるはずもなくさっそく本の探索。古い本も新刊本も同じ用に並んでいるのが新鮮(そして、これは!と思う本はほぼほぼ新刊)。ところどころに「○○な人におすすめの本」というコーナーがあって、本好き初心者に優しい。自分的には「カイエ・ソバージュ」のシリーズが揃っていたのが嬉しかった。

店内にはほど良いボリュームで(これはとても大事)BGMもかかっていて、それがなんと一周回って流行り出したLPレコードですよ。片面が終わるたびに手動でひっくり返さなくてはならない手間はあるけれど、その響きは古い作りの家によく馴染む。

環境は申し分なく、本来は気になる本を手に取り、手近なソファに座ってのんびり試し読みのつもりで来たのに、なぜか気がはやってひたすら本棚をチェックし続け、珈琲を注文することに思い至ったのが、一通り棚を見終わったあとだった。

珈琲は素晴らしく美味しく、出てくるタイミングもこちらが落ち着く頃をちゃんと見計らっていて(客が自分たちしかいなかったせいもあるかもしれないが)、細やかな気遣いが行き届いている。

落ち着いて外を見るとやはり絶景。でも、ただ癒やされるのではなく、この景色の底には強大な自然の力が潜んでいることもビシビシ伝わってくる。

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今度来るときは、本好きの友人といっしょに、半日くらいダラダラと本談義するつもりで来たら楽しそうだ。今回同行したダンナ氏は本はよく読むけど、いわゆる「本好き」とはちょっと違うのでね。

帰り道は「酷道」経由で山の景色を楽しみつつ八百津町へ抜け、可児御嵩から高速に乗った。いいドライブだった。

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