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しかめっ面 de レコード収集 第1回「京都を歩けばレコード屋」

ぼくは休日になれば、町へ出かけ、いくつものレコード屋をめぐるなどして午後からの1日を潰すことがある。と言うと、なぜ午後からなのか、せっかくの休みならば朝からいけばいいではないかと思う人もいるだろうし、ぼくも実際そう思う。朝から夕方までレコード屋巡りができれば、それはそれは幸せなことなのだろうけれど、あいにく京都の中古レコード屋というのは、揃いも揃って開店が正午以降なのである。それゆえに、朝9時のバスに意気揚々と乗り込んだとしても、9時半になるころには目的地に到着してしまい、京都の繁華街で特にすることもなく途方に暮れてしまう。それで、仕方なく喫茶店に入り、1杯のコーヒーで時間を粘るか、丸善という巨大な本屋に入ってウロウロしているか、鴨川へ向かって本を読むか、のいずれかである。それはそれで悪くはないのだけれど。


ちなみに、京都はレコード屋が多い町だ。それは、ぼくが広島という辺鄙な場所からやってきた田舎者であるからであって、東京の都会人が京都へやってきたら、「なんだなんだこんなものか」と大きなあくびを4回ほど続けるかもしれないけれど、そうだとしても京都には十分な数のレコード屋があると思うのは確かだ。


例えば、京都のレコード屋を思いつく限り挙げてみるとする。

昨年末、西陣へ移転した「Second Royal Shop」。
毎日更新されるInstagramの投稿がおもしろい北山の「レコードショップ ジジ」。
上賀茂の新店、コーヒーが350円で飲めると噂、ソウルやネオアコなどの充実ぶりに満足するのは「plastic soul record」。
バイト帰りについ寄ってしまう、5000円買うと次回500円割引きの「クレモナ」。
京極通りを地下へ潜ってゆけばいつもラジオがかかっている「poco a pocp」。
店主の“京都のおすすめ”は琵琶湖、「100,000tアローントコ」。
ビルの7階、圧倒的なレコードの数に文句なし、「アートロック・No.1」。
きちんとジャンル分けされた店内、圧倒的な数に圧倒され、必ずグッとくる1枚
が見つかる「ワークショップレコード」。
テーマカラーは黄色!「トラドラレコード」。
変な形のビルの最上階、ちょっとやる気なさそうな店主とたまらない品揃え、驚くような値段設定は「ほんとレコード」。
新譜を買うなら「Jet Set」。
新譜を買うなら「タワーレコード」。
新譜を買うなら「JUIGA」。
昭和の日本に特化した「太陽」。
左京区でレコードとCDと雑貨を売るのは「マイナーコードとシュクル」。
Tofubeatsが通っているという「Vinyl 7 Records」。
いつも不思議な宗教音楽がかかっている、値段がわからないマイナーなものばかりで入店をすこしばかり躊躇ってしまう『メディテイション』。
新京極通りの中、荒井由実の『ミスリム』を980円で手に入れた「スーパーミルク」。
あまりいいレコードが見つからなかったのでフェリーニのLDを200円で購入した「ブーツィーズ・レコード」。
いつ行っても暖房の設定温度が高い「ハッピージャック」。
ビルの3階「Hot Line」。
今年秋に高島屋にやってくると噂の「フェイスレコード」。
カフェとレコード屋が併設された「DAVADA RECORD」。
入り口がすこしわかりにくい、バナナマークの「ジョーズ・ガレージ」。
1階はバー、2階がレコードショップ、ジャズが強い「Hachi record shop」。

と、こんなにある。ぼくが知らぬだけで他にもいくつものレコード屋がある。


こんなにあるから、全てのレコード屋をひと通り回るのには、そこそこの時間と労力と膨大なお金を要する。それだから、それぞれのレコード屋に顔を見せるのはせいぜい月に1回あるかないか程度にはなってしまうが(家から近いからよく足を運んだり、ラインナップが微妙だったからもう行かなくなったりした店ももちろんある)、1周して戻ってくる頃にはそのお店に並ぶレコードたちの顔ぶれも変わっている。だから、久々に小学校の頃に所属していた地域のソフトボールチームの練習へ顔を出しにに行った時のような懐かしさを感じるし、狙っていたレコードが誰かに買われていると、もっと頻繁に来なくてはと反省する。そうして、月のレコードへの出費は徐々に増えてゆくから、魅力的な円盤が溢れているレコード屋のなかで、どれを手に入れようかと悩み、迷い、結局どちらも買うことになり、しかめっ面でレコード屋から出てくる日々を送っているのである。

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