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『コーヒーの真実』

世界中を虜にした嗜好品の歴史と現在(Coffee a Dark History)
アントニー・ワイルド(Antony Wild) 著
三角和代 訳

はじめに より

暗黒の歴史の蓋が開き、墓石がひっくり返る。

はじめにの書き出しから意味深で挑戦的な文章で始まる。

さて、コーヒーという名前はいつ頃から付けられたのだろうか。
文献に書かれているものは多少なりとも想像を働かせれば「ああ、たぶんこれがコーヒー」と判断できる。それ以前のものはその土地で別の名前で呼ばれていたら全く分からないと思う。

この本では、それほど古い歴史からコーヒーの歴史を紐解いて、言い伝えさえも検証して行く。
そして、現在も続くコーヒーを飲む側とコーヒーを栽培する側の考えられないほどの格差を暴いていく。

以前に『ALL ABOUT COFFEE コーヒーのすべて』がコーヒーに関するバイブルであるとされていて、コーヒーの最初の物語も興味深く読んだのだが、今回の『コーヒーのお真実』では、そのヤギ使いのお話はおとぎ話と一蹴されている。
私の感想では、この『コーヒーの真実』の方が本当のコーヒーの歴史に近いのではないかと思う。
ナポレオンの流刑地として有名なセント・ヘレナ島にもコーヒーノキは植えられたが長い間忘れ去られ、近年になってその希少価値から高値で取引されている。
セント・ヘレナの歴史についても多くのページを割いて解説されている。

興味深かったのは、さまざまなコーヒーに関連した団体、そしてコーヒーの分析や健康に関する論文、書籍はバックに多国籍企業やコーヒーから利益を得ている企業、団体がスポンサーについていることがある。
内容は事実であるが、不利益になることがあっても発表されていない。
世界の貿易高で2番目に多い取引をしているコーヒーに群がっている企業は星の数ほどあり、とてつもない利益を上げているということなのだ。

そのほんの数%をコーヒーの価格に上乗せすればコーヒー農民は最低限の生活ができるようになり、今後もコーヒーの栽培を続けていけるが(そうしなければ耕作地を放棄しコーヒーの栽培は中断される)、コーヒーを飲む先進国や巨大な多国籍企業にはその考えはないようだ。

一杯のコーヒーを飲むことが、どれほどの人の手間がかかっていることなのかもう一度理解して、いつまでもおいしいコーヒーを飲める世の中であるように私も努めたい。


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