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22年12月広島旅行2日目(尾道)

 地方の平日昼間は電車の本数が少ないので、よっぽど過疎な時間帯を除けばたいていはいっぱいになる。多くの学生が乗り込んできたことで、そういえばテスト期間だったということを思い出した。

 ここを発って向かうのは尾道である。
 尾道といえば坂の街猫の街。行くなら千光寺に展望台、尾道水道を俯瞰して眺める絶景──だが今回は特に行かない。ちなみに千光寺ロープウエーは毎年12月は点検期間でほぼ1ヶ月運休である。尾道を訪れる人は覚えておこう。
 では何をしに行くのか?
 私は普段趣味で土地を擬人化する業を背負っているのだが、それについての調べものがあって中央図書館に立ち寄りたかった。それと、ひとつ展示を見に行くためである。
 今回の旅において、広島以外すべて展示(と博物館)を訪ねている。そして今回の尾道の目的はこの2点のみ。ちなみに中央図書館の近くには浄土寺があるので、東から大きく回ってついでに立ち寄ることにした。
 もうすこし時間があれば市役所屋上に立ち寄り千光寺にもあがりをしたい気持ちだけは十分にあったのだが、それは福山のうしとら神社を出たあたりで諦めていた。
 そもそも福山でも諦めたことがめちゃめちゃある。入船町で見つかった福山城の遺構公開も断腸の思いで諦めたし、福山シティFCのポップアップストアも諦めた。後悔しかないが仕方がない。マジで時間がない。いやまさかこんなに福山城博物館で時間を吸われるとは思わなかったんだ、本当なんだ。
 なおこの判断は的確で、調べものを終えて図書館を出る頃には夕暮れ、寄り道をしていれば呉に向かう最適な乗り換え時間を逃すところだったというギリギリ具合である。特に時間単位で計画を詰めない割にタイトなスケジュールを組みがち。欲張り。

 1日目の記事で、在来線で広島に帰ることがあるみたいなことを書いたと思う。
 大阪あたりから片道6時間かかる道のりが好きなのだ。案外と乗り換えるので尻は特につらくならない。心配なのは電子機器の充電くらいだ。そんな中でも、東尾道〜尾道間は最もというほどに好きな区間である。
 東尾道の街並みを抜けて尾道造船が見えると、眼前に海が広がる。そうして尾道大橋の足元から見える尾道水道が、たまらなく好きなのだ。「ああ帰ってきたなぁ」と思う。須磨でも明石でも海は見られるが、この尾道の海が見える感覚だけは本当に格別だ。よく知る海に帰ってきた、と思う。

 その後またすこし山手側に入り込み、尾道駅に到着した。
 今回の旅はコインロッカーと共にあった。コインロッカーなしでは旅を完遂することはできなかっただろう。バッグひとつというのも身軽なようでいて、観光しようと思うと大変なのである。
 到着した時間は昼過ぎで、福山の暖かさはどこへやら、海風が冷たくてすごく寒い。そう、海風ってこういうヤツだよな。
 近くにリトルマーメイドもあるし、同じく尾道駅の近くにある「カンキツスタンドオレンジ」にてあたたかい飲み物を入手して軽食を取ることにした。

 カンキツスタンドオレンジさんで頼んだのはつぶつぶみかんのジュース。
 すりおろしたジンジャーライムが入っており、みかんの甘さに加えてジンジャーの辛味に更にライムの酸味があり爽やかだ。お店の人に薦めてもらって頼んだのだが、確かにイチオシなのも解る。ジンジャーライムうまい。
 柑橘ジュースはどうしても夏のイメージが大きいが、こちらではあたたかい柑橘ジュースもたくさんあるのでぜひ、むしろ冬だからこそ訪れてみてほしい。お店の方も柑橘の種類をよく教えてくださるのでお話も楽しいです。

リトルマーメイドにはご当地アンパンがある。
福山と尾道を揃えてご満悦の小山。
食べるのは外である。寒いのに。海がいいから

 お腹も満たし体も温め身軽になった私は、まず1つ目の目的地へと向かった。

 1つ目の目的地はここ、尾道商業会議所記念館だ。歴史ある建物であり、さまざまな企画展が年間いろいろと行われている。鑑賞は無料。今回、身内の用事と合わせてこの期間に帰ってくることにした理由の一つがこの展示だ。

 第43回企画展示「鉄道のある風景」。
 我々からするとすっかりお馴染みの尾道の鉄道風景。しかし150年前はそうではなかった。賛成派と反対派で不穏で険悪に揉めた時代が尾道にもあったのだ。
 当時は経済的な観点から迎え入れられた鉄道だが、それにより山手側の寺社との境目がなくなり現在の観光映えもする尾道の風景が完成され一つの価値となったというのは歴史の妙というか、面白い。
 施設内は撮影もできたのでメモもそこそこに、道中いろいろと商店街の店に立ち寄りつつ浄土寺と中央図書館へ向かうことにした。

 浄土寺にくるのはおそらく6年ぶりである。
 そもそも5月を除けば尾道に最後に訪れたのはカープが優勝した年だから、その年かその前の年が最後である。そんな浄土寺。風景や寺の佇まいは変わらないが、伝書鳩風のかわいらしい絵馬が増えていたりとささやかなアップデートがされていた。
 さて、浄土寺といえば鳩の寺である。私はここで鳩を撮るのが好きで、たまにエサもやる(門のところで販売してある)。

2009年の鳩


2014年の鳩

 本堂へお参りを済ませたあと、今回久しぶりだしな! ということでエサをやることにした。

 これが今回撮った最後の鳩の写真である。

めちゃめちゃがっつかれた。

 他に参拝客がいなかったせいもあるが、両肩両腕に鳩をのせエサをばらまく給餌者に成り果てていた。
 しかし鳩の重みは素晴らしく、ふかふかであったかくてかわいくて重くてめちゃめちゃかわいい。うんちされてなくてよかった。
 エサをやり終わり腕の鳩を見て振り返ればいつの間にかギャラリーがおり、急に恥ずかしくなって愛想笑いをして去った。誰もいないと思って鳩に話しかけながらエサをやっていたのだが、鳩に囲まれて周囲が見えていなかったようである。
 旅の恥は書捨てとはいうが恥ずかしいものは恥ずかしい。そんなこんなで鳩の写真を撮ることはできなかった。しかし、両腕に乗った鳩の重みは幸福そのもので、浄土寺というものを堪能できた気がする。幸福。

 ここから中央図書館はまっすぐ行けば着く。2時間ほど滞在して、たくさんの複写を抱えて図書館を出る。外はすでに日が傾き、夕焼けが鉄道の架線を黒く抜いていた。

 商店街に戻り、駅前までゆっくりと歩いていく。すでに足が結構くたくただった。駅前にたどり着く頃にはすっかり日も落ちていたのだが、ふと港の方を見ると明るいものがあった。

夜に咲く桜

 どうやらちょうどこの日から、尾道の海沿いにある桜にイルミネーションが施されたらしい。時間が押していたので不安になっていたが、これを見られたのは嬉しく、幸運としか言いようがなかった。今回の尾道滞在は何かと幸運だったように思う。
 こちらのイルミネーション、2月まで行われているそうなのでお近くの方はぜひ。

 時刻は18時を回る頃。ここから呉線を使って呉へと向かう。Googleもお出かけネットも海田市まで行ってから呉行きなよ! と薦めてくるが私はそうしない。絶対に糸崎で乗り換えて広で乗り換えて呉にたどり着くという断固たる意思で今日を迎えたのだ。
 夜の海沿いって見えなくない? と思うだろう。確かに風光明媚な、求められた海の姿は見えないかもしれない。
 しかし夜の海というのは灯台の灯り、ふねの灯り、遠く見える島々の生活の灯りがよく見える。これは昼間にはない格別の光景なのである。
 ……といっても、呉線は山と海の狭いところをぶち通している区間がそこそこあるため、トンネルも多い。耳抜きには気をつけよう。
 写真は反射があるため撮れてはいないが、やはり忠海港の灯りは良かった。ちょうどフェリーが忠海側におり、くっきりとふねの巨体が車窓から見えた。
 夜の海はヒトの体では心許なくとにかくおそろしいが、間接的に眺めるにはこんなに蠱惑的なものもないだろう。距離とガラスを隔てても吸い込まれそうになってしまう。
 しかしやはり、昼間は日差しが暖かかったが日が暮れると寒い。広駅での乗り換えはすでに広島行電車が停まっており、そそくさと乗り込み出発時間を待つ。そうして約2時間ほどの旅を経て呉に到着した。

 地元のテレビ番組を見ながら荷物の整理などをして、ぐったりとした疲れを休めた。

 なお、明日のほうが疲れます。


▷写真のまとめ

▷2日目福山の記事

▷1日目広島の記事

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