見出し画像

〈詩〉むくどり

電車の窓 雨が
斜めの点線をいくつも描いて
向こうの空 一面の灰色

灰色の空 ときおり躁いで
そのたび 軽くはずんで
畑の黒土に 雨が降る

雨の滲んだ黒土
鳥たち 何かを啄んで歩く
畑の果てには辛夷の木

辛夷の木 蕾 ふくらみ 
空へと 突き上げる息吹き
高く上がり 見えなくなるまで

一羽の鳥の胸騒ぎ
畑の黒土を 蹴り
大きな不安の群れとなる

空をうねる群れ ときおり躁いで
そのたび 少し恥じ入って
見たことのない角度に曲がる

影が光り 色が変わり
大きな塊が流れ ふたたび
見たことのない角度に曲がり

胸に浮かぼうとして 声が
飲み込まれる 深いところへ
沈んで 見えなくなる

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?