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母には二たびあいたい

今日1月10日は令和4年の成人の日です。コロナの影響もありましたが、一部の地域を除いてはなんとか成人式を挙行できたみたいですね。街には晴れ着姿の新成人がちらほら(=゚ω゚)ノメデタヤ

成人の日は、大人の仲間入りを果たす新成人の皆さんをお祝いするとともに、新成人の方々は育ててくれた方々に感謝をする日でもあるかと思います。

「父母の恩は、山よりも高く、海よりも深い。」

上杉鷹山

上杉鷹山公もこのように仰っておりまして、親孝行の大切さを説いております。

さて、このような言葉がありますが、ご存じでしょうか?

母には二たびあひたれども、父には一度もあはず

後奈良院御撰何曾

お父さんには少し悲しげな文章ですが、続くのは「これなーんだ?」です。つまり「お母さんには二回あうけど、お父さんには一度もあわない。これなーんだ?」です。答えは「」です。

これは1516年(永正13年)に編纂された日本初のなぞなぞ集「後奈良院御撰何曾ごならいんぎょせんなぞ」です。なぞなぞは室町時代、「なぞだて」と言っておりまして、連歌の一種として貴族の間で流行していました。ですから、なぞなぞは「謎々」ではなく「これ何ぞ?何ぞや?」の「なぞなぞ」なのですね。

ときの後奈良天皇が皇太子の頃、古今東西のなぞなぞを172題(193題?)集めて一つの本としたのがこの「後奈良院御撰何曾」です。

実はこの本、縦12.7㎝×横8.7㎝と名刺よりちょっと大きいくらい。懐に忍ばせて見るいわゆる「ネタ帳」(手控帳てびかえちょう)として使ってたのでしょうか。室町時代の貴族がこれを見てなぞなぞを出し合っていたかと思うと面白いですよね。

さて、本書の構成は「問題」と「解答」になっているのですが、なぜその解答になるのか解法が不明な問題も多々あります。そのため江戸時代には国学者の間でその解法の研究もなされたぐらい、とにかく謎多き「なぞなぞ本」です。

最初の問題が、なぜ唇かというと、「母」と発音するときは2回唇が合わさりますが、「父」と発音するときは1回も唇が合わさらないからです。

あーなるほど、「ムーミンにあって、ニョロニョロにないもの」とか、「もなかにあって、どら焼きにないもの」みたいなやつ、いわゆる「唇音」ですね。はいはい。今も昔も変わらないですね~。

…っておい!!(; ・`д・´)💦

「はは」だって唇、合わさらないでしょ!と突っ込まれる方もいらっしゃるかと思います。

江戸時代に本居内遠もとおりうちとおという国学者が果敢にこの謎に挑み、ついに「後奈良院御撰何曾之かい」という、今で言う攻略本を出版しました。

それによると「母」は「歯歯」だから上唇と上の歯、下唇と下の歯、くっついてるでしょ?ねぇ!でも「父」は「乳」だから。自分の乳は自分で吸えないでしょ?……お~かなり強引ではないでしょうか。本居内遠先生も悩まれたと思います。

近年の研究によると、実は室町時代ごろまで「はひふへほ」の発音は「ふぁ・ふぃ・ふぅ・ふぇ・ふぉ」のように、「はひふへほの」前に軽く「f」が付いていたとのことです。ですから「唇音」で正解だったのです。

え?(@_@)……?はは?ふぁふぁ?ふぁふぁ?唇……合いますか?
まぁ良しとしましょう。

ここでいくつか「後奈良院御撰何曾」にのっているなぞなぞをご紹介します。ちなみにノーヒントですと難しいので三択にしました。解けますか?

Q1:「梅の木をみづにたてかへよ」
「松」・「海」・「竹」
Q2:「十里のみちをけさ帰る」
「清酒」・「祝い酒」・「にごり酒」
Q3:「嵐は山を去って軒のへんにあり」
「風車」・「笛」・「凧」
Q4:「いなかびとのこえ」
「銅」・「鉛」・「銀」

答え
Q1:「海」 梅の木偏をさんずいに入れ替えるから
Q2:「にごりざけ」 十里=2×5里 「け」と「さ」を入れ替える
Q3:「風車」 「嵐」から「山」をとり、「軒」から偏をのこす
Q4:「鉛」 「訛り」だから

いかがでしたでしょうか?
今の私たちには なかなか分かりづらいですが、当時はドッカンドッカンしていたのでしょうか。


室町時代の貴族はこのような「なぞだて」や、「連歌」といって、最初の人の上の句に続いて、次の人が即興で下の句を詠む、といったことをぐるぐる続けて、ひとつの作品を作っていく遊びや、「闘茶」といって、お茶を飲んで産地を当てるといった遊びが流行っていたそうです。

時は応仁の乱後ですから、皇族貴族もつつましい暮らしぶりだったと思います。こうした言葉遊びみたいなものを楽しんでいたのでしょうね。

そういえば今って、第何次かわからないけど「クイズブーム」、またきてますよね。それから、正月に放送された「格付けチェック」なんかが受け入れられるのも、こういった「闘茶」の「判りづらいものを当てる」的要素が入っているからかもしれませんね。

流行が繰り返されるのは、「人の本質が変わらないから」ですね(*´з`)

ちなみに今は「ママ」と「パパ」ですから、どちらも唇が2回合わさりますよね(*´ω`)💨ヨカッタネ

最後まで読んでいただいてありがとうございました!

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