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滝口寺伝承

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「横笛」:横笛は平安末期のお話(エピソード0) 「火宅の女(ひと」:は現在執筆中の鎌倉~南北朝時代のお話です。 同じ滝口寺であった二つの物語です。
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#桜

【滝口寺伝承(2)火宅の女③】

【滝口寺伝承(2)火宅の女③】

真実(まこと)「帝は、近ごろ新しい女御に心染めているそうです。更衣になられたその某(なにがし)の君はまだ齢十五です。内裏の花の色は移ろいゆきます。私もまた旧き(ふるき)もの。」

「後宮には帝ひとり。帝にかしづく女御は廉子様はじめ二十数人おります。私の知らない間にいなくなられた女御もいらっしゃいます。帝の御寵を競いあう情念の炎と炎のぶつかり合いは、互いを焼き尽くすまで続きます。

『帝の寵幸をうけ

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【滝口寺伝承(2)火宅の女①】

【滝口寺伝承(2)火宅の女①】

後醍醐帝(ごだいごてい)の御時のお話です。

鎌倉幕府が滅び、朝敵足利尊氏を追討した京の都は束の間の平和に酔いしれておりました。

そんな弥生の空の下、都はある武将の噂でもちきりでした。清和源氏の嫡流、源八幡太郎義家の後裔にして、この度左近衛ノ中将に昇進されたー新田義貞(にったよしさだ)のことです。

義貞は、挙兵してわずか半月で鎌倉幕府を打ち滅ぼし、朝廷に反旗を翻した足利尊氏を破って九州へ敗走さ

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