【最終話】始まり

※以下(M)モノローグ
【1】 闇の中、世間
 真っ暗な画面に砂嵐、時々人間。ラジオがぶつぶつ切れるような音。ノイズ。
 次に昭和のブラウン缶テレビが、何もない空間にポツンと置いてある。画面には古臭いCMの映像が流れる。
神(M)「矢吹、加藤、聞こえますか?私は、全てを創ることを、指揮するものです」
一瞬だけ全裸の矢吹が映る。矢吹、音が大きすぎて耳を塞ぐ。
神(M)「(音量調節している音)ここにはまだ、何も無い」
神(M)「さあ、世界の再起動を始めましょう」
 
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雑踏と田舎の風景。
 
矢吹(M)「言葉は、多い方がよければ、絶対に少ない方がいい。」
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工場、流れるベルトコンベア。誰も居ない教室、屋上の縁に立つ杏(顔は見えない)。家の中で過ごす老夫婦(S#43ボロアパート)魚や動物の生きる姿。
矢吹(M)「人の夢の中には、必ず終わりがある。安らかに、眠るように終わりたいだとか。満足して死にたい、幸せな気持ちで死にたいだとか。苦しまない、痛くない死に方をしたい。死ぬまでに、あれがしたいこれがしたい、こうなりたい、こうありたいだとか。どこまでが始まりで、どこまでが終わりで。全部、決めていいんだ。なんだって。」
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【2】 洋一の部屋
 薄暗く、雑多な部屋。ソファで寝る工藤 洋一(32)。スマホから着信音が鳴り響くが、なかなか起きない。そのうち、もぞもぞと動き出し目を開けたままボーッとする。天井を見つめたまま、電話に出る。
【3】 コンビニから洋一の家までの道
 スマホを耳に当て、歩く笹木 めり(25)
めり「ちょっと。起きた?」
洋一(声)「…寝た」
めり「おーい。寝てるのに喋ってるの?」
洋一(声)「…めりちゃんか。どうした?」
 嬉しそうなめり。
めり「起きろ。瑛ちゃんの舞台、見に行くよ」
洋一(声)「…先行ってきていいよ」
めり「はい?先とか無いから。開演時間決まってるから」
洋一(声)「俺まだ寝てるもん」
めり「いいよ別に。そのボサボサ頭で行こうよ」
洋一(声)「…いや、髪型は決まってるっぽい。」
めり「嘘つけ!私は今、どこにいるでしょう」
 洋一の家の前につくめり。
めり「もうついちゃった」
洋一、足跡が聞こえてドアを開ける。笑顔で立っているめり。
洋一「…あーあ。怖い人」
めり「天才だろお?家の近くから電話していました」
洋一「…あーそう。おはよ」
 めり、微笑む。台所に置いてあるマグカップがひとりでに不気味にゆっくりと傾く。
【4】 劇場
 舞台上で芝居をする赤丸 瑛二(32)。生き生きとしている。それを客席で見るめりと洋一。真剣な眼差し。
【5】 楽屋
 公演終わり。楽屋のドアの前で、瑛二を待つめりと洋一。
洋一「ちょっとタバコ吸ってくるわ」
めり「あ、うん。私も…」
  めり、付き添おうとすると楽屋のドアから瑛二、ジロー|(34)が出てくる。
瑛二「おお。ありがと。お疲れ」
めり「あ、瑛ちゃん。」
洋一「お疲れさん。俺ちょいタバコ(めりに、ここに居ていいよのジェスチャー)」
瑛二「洋一も来たんだ。ちゃんと起きて。嬉しい」
めり「起こしに行った!てかジローちゃん出てた?見えなかった」
ジロー「うっさ。めちゃくちゃ出てたわ」
めり「嘘だって。見てた見てた」
ジロー「忙しい合間縫って出演したからなぁ」
瑛二「ガキ黙れ」
ジロー「うわ、ガキ」
めり「瑛ちゃんこの後、飯とか行く?」
ジロー「行く」
めり「瑛ちゃん」
ジロー「俺無視やん」
瑛二「みんなで行こうと思ってた。来る?お前どうせ洋一誘いたいだけでしょ」
めり、変な顔。
ジロー「きつ」
【6】 劇場外 夜
  煙草を吸う洋一。空を見上げる。目の前にある建物の角を見つめる。
  建物の角が少しずつ崩れ落ち、洋一に向かって倒れる。建物の裏から、目が大きくギョロギョロした、巨大怪獣が出てくる。ものすごい勢いで洋一を潰そうとするが、微動だにしない洋一、不気味な怪獣と至近距離で目が合う。
 
タイトル「最終話」

【最終話】01 バグ


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