【最終話】03 戦士

【30】壊れた住宅街
 マシンガンを拾う矢吹。よく見ると壊れてしまっており、その辺に投げ捨てる。腰を抜かしたまま動かないめり。息が整わない。
矢吹「あー気まずい気まずい。こんな小娘とこんなクソ広くなった世界で二人きりだわ!!!」
矢吹、マシンガンを拾い、めりの目の前の瓦礫に腰掛ける。鞄からあんまんを出し、下品に食べ始め、めりを見つめる。途中であんまんを落とす。
矢吹「あっ!…畜生めェ」
めり「…」
矢吹「…(にやけて)こんにちは〜矢吹ですぅ。(めりに近づきいきなりビンタする)」
めり「…!(睨む)」
矢吹「(片手でめりの頬を掴む)」
めり「…誰?何者なの?!(矢吹を両手でぽかぽか殴り、突き放す)」
矢吹「はっはっはぁ。矢吹だっつってんだろ(あんまんを拾って食う、そしてめりに向かってドッジボール投げ)」
めり「……(武器を見て)助けに、来てくれたの?」
矢吹「…んなわけねえだろお嬢ちゃ〜〜〜ん!!!」
めり「…洋一が」
矢吹「あい?」
めり「…私の大好きな、人なの。洋一が…死んじゃったの」
矢吹「そんで?」
めり「…(壊れた銃を見て)助けて」
矢吹「おめー今『死んじゃったのぉ』って言ったはずだよなあ!?バカかぁ?!お前は?!ふっ」
矢吹、めりに近づきめりの顔を両手で大事そうに触る。
矢吹「ふあはははは」
急に地面で暴発するマシンガン。銃口の先にあった瓦礫が真っ二つに割れる。
矢吹「壊れちゃった。悲しい。エーン。おーーーーーい加藤〜〜〜!!カットウちゃあ〜〜〜ん!!」
めり「…どうなるの?」
矢吹「(あくび)ねっむ」
めり「(矢吹の服を掴む)この世界はどうなるの」
矢吹、振り返りめりを突き飛ばす。
矢吹「消すよ。…これはエンディングだッ」
めり、先ほど真っ二つに割れた瓦礫が視界に入る。
《S#28 八つ裂きになった洋一》
その場で嘔吐するめり。
矢吹「…かわいそうなやつだな」
めり「洋一を生き返らせて(怒鳴る)」
矢吹「洋一?」
めり「(息が荒い/車の方を指差す)お願いです。お願い」
矢吹「てめえは私のことなんだと思ってんの?…そいつさっき消したばっかだし」
めり「あんたが消したって…?じゃあ私も殺してよ!!…殺せよ!!!」
めり、矢吹を殴る。馬乗りなる。ボコボコに殴られる矢吹。
矢吹「クソだなお前は。ここは人生なんかじゃないんだよ。地獄と地獄の間のお昼休みみたいなもん」
めり「…何言ってるの?」
矢吹「クソだーなってェ言ってんだよお!!!私はこの世を終わらせにきたの。…『ハッピーバースデイめりちゃん(洋一の声)』」
地面が粉々になり、暗闇に落ちていくめりと矢吹。水の中のように、薄暗い。
矢吹「てめえの事は私が創ったんだ」
矢吹、めりの顔を片手で大事そうに触る。めりが瞬きをすると、矢吹は消えてしまい、めりは独りで真っ暗闇に落ちていく。
《本を書きながら号泣する洋一のインサート 》
 
 
【31】広い道路 昼間
目を覚ますめり。起き上がり必死に息を整える。あたりを見渡すと、瓦礫だらけの広い道路に寝そべっていた。
しばらく辺りを見回すと諦め、再び寝転ぶめり。静寂で、青い空に小さな鳥が飛ぶ昼間。
めり(M)「生命を発見。…」
そこに現れる、ボロボロに汚れた瑛二を背負った毛見。めりを見つけてニヤッと笑う。寝転んだまま、細い声で喋るめり。
めり「……瑛ちゃん?…(毛見を見て)なんで……」
毛見「俺は羨ましいよ」
めり「…はい?」
毛見「生にしがみつくのは青春だ」
めり「……ははは。もう。……黙れ!!(泣き叫ぶ)どいつもこいつも!!!」
毛見「…」
めり「…洋一のいない世界で生きてる。なんて意味のない存在なんだろって」
毛見「本当にそう思ってるのか、自分に聞いてみな。主人公」
めり「お父もお母も、樹だって誰もいない。……誰もいないなら死にたい…死ぬ元気もない…もう、どうでもいい。」
毛見「よかったな。黙ってそこに寝てるだけで死ねるぜ」
めり「…え…てか……なんであんたが…」
めり、毛見の目をじっと見る。奇妙な表情を不気味なまでに変えない毛見と不気味に目が合う。
めり「……あなた誰?」
《黒画面にノイズ》
 
【32】廃墟スーパー
薄暗くて、蛍光灯のチカチカする店内。少女二人、福山 杏(14)藍原めい(14)が、お菓子を食べながら店内を物色している。
めい「これ物音とか立てたらやばいの?(小声)」
杏、首を振る。静かに、のジェスチャー。
めい「飽きた(小声)」
杏、めいを睨む。
めい「飽きました(小声)」
アイスの入った冷凍庫を開けると、中身がドロドロになり、黒い滝となり流れる。
めい「もう、まただよ。」
背後で物音が鳴り、振り返る二人。店員らしき人間が、少し離れたところに黒目がちの奇妙な笑顔で立っている。
めい「あの、すごい怖いですけど(小声)」
杏、驚いてめいを見る。
店員、じわじわ近付いてくる。気がつくとめいの顔をすぐ近くで覗いている。杏、近くの冷凍庫のガラスを蹴り割って、壊れた部品と破片を掴んで、店員の首を後ろから一刺しする。店員から泥が沸き出る。店員の後ろには瓜二つの別の店員がおり、すぐさま長めのガラスの破片を武器にし、拾い振りかざす杏。店員が大量に増え、不気味に首を振り動いている。めい、近くに落ちていたコードで一人の店員の首をグルグル巻きにし、締め、顔を蹴り飛ばす。
めい「今食べてたのに!!うぜえんですけど!!(叫び)」
店員の大群がめいの方に向かう。杏、反応して振り返ると、店員に目の前に回られてしまい、物凄い力で殴られて吹っ飛ぶ。
めい「杏!」
めい、杏に気を取られ、別の店員に足をコードで絡められてしまい転ぶ。
めい「最悪ですけど(鼻血)ピンチ。」
すると、一瞬白く光を放ち、全ての店員が吹っ飛ぶ。奇妙な鳴き声と共に、焦げた店員の死体が大量に地面にボトボト落ちる。めいと杏、光のほうに振り向くと加藤がバズーカを持って立っている。
加藤「……間違えた」
頭から血を流しながら真顔で加藤を見つめる杏。寝そべった状態のままアングリと口を開けて加藤をみる鼻血を出しためい。
めい「…かっけー。」
黒焦げになった店員の山を見て、ため息をつく加藤。
加藤「…何やってんだか」


【最終話】04 空気

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