労働賃金が上がるNZで働けば経済的にゆとりのある生活を送れるようになるのか
賃金が上がり続けるニュージーランド
今月、NZの最低労働賃金が$18.90→$20/時間に引き上げられました。
継続的な引き上げによって現在の最低時給は2006年($10.25)の約2倍に達しています。
ベースラインの賃金上昇は平均賃金を押し上げ、現在の平均賃金は時間当たり$34.20。
平均賃金の推移を確認してみると、やはり右肩上がりのグラフになっています。
働く人々にとって給料が上がることは喜ばしいことです。
では、こうした傾向(賃金上昇)が続くニュージーランドで働いていけば、いずれゆとりのある生活がおくれるようになるのでしょうか。
物価の上昇も続いている
必ずしもそうなるとは限らない...と考えるのは収入だけではなく支出(生活費)も増えるからです。
ニュージーランドではモノやサービスの価格が毎年のように上がり、長期(20年前との比較)でみると物価は1.5倍以上になっています。
(ニュージーランド準備銀行)
2001年に初めてNZにきた時、ランチで$10あればお釣りがきました。
しかし今では$10以下で食べられるお店を探すのはとても大変です。
物価上昇によってお店の仕入れコストは上がり、さらに従業員への支払いも増えていくわけですから当然の成り行きといえるでしょう。
特に今回はコロナ禍が収束していない(企業の体力が回復していない)中での最低賃金の引上げだったこともあり、小売業者団体の2/3の加盟業者は近い将来の値上げを、1/3は従業員の労働時間や雇用数の削減を検討している状況です。
(Newshub 2021年4月5日)
賃金を上回る住宅費の上昇率
住居費が家計支出で大きな割合を占めるのは以前の記事でも書きました。
ここで注目したいのは賃金と住居費の伸び率の比較です。
過去20年で賃金は1.86倍に上昇しました。
それに対し家賃と住宅価格の上昇率は一貫して賃金を上回り続け、現在はそれぞれ2.25倍、4.35倍となっています。
これでは賃金が上がっても住居費が家計を圧迫してしまい、ゆとりを持つことができません。
支出と収入、どちらを改善できるか
では、この状況を改善するにはどうすれば良いのでしょうか。
支出面から考えると、まず思いつくのは節約かと思います。
しかし、節約にも限界がありますし、突発的な支出によって節約分が吹っ飛んでしまうなんてよくあることです。
では、収入面はどうでしょうか。
働く時間を増やせば収入は増えるかもしれません。
ただ、これも肉体的・精神的な限界があると思います。
しかし、一般的な労働から視点を少しずらしてみると、収入を増やす方法は他にもありそうです。
キングコング西野さんのアドバイス
先日、あるお母さんから寄せられた質問に対し、キングコング西野さんが自身の音声メディアで以下のように回答されていました。
<相談者>
三人の子供の教育費(留学・大学進学など)をどうやって工面していけば良いでしょうか?
<西野さん>
僕らが持っている労働力って2つあるんですね。1つは自分の体、もう1つはお金です。で、残念ながら多くの日本人は自分の体しか働かせてない。学校ではそれしか教わらないから。
お金を働かせるっていうと、とたんリスクのある投資みたいなイメージを持っちゃいますが、とはいえすっごい長い目で見た時にメガバンクに入れてるお金を少し金利が高いネットバンクに移しかえたりだとか、あるいは国債を買ったりしてお金に働いてもらう練習というのはしておいた方が良いと思います。
今言った2つというのはノーリスクなんですね。で、お子さんを守りに行くためにこういった知識とか選択肢とかは1つでも多く持っておいた方がいいと思います...(一部抜粋)
収入を増やそうとした時、自分の分身として「お金」に働いてもらえば良いという発想です。
ここではネットバンク預金や国債の購入などを例に挙げていましたが、その他にもお金の就職先はたくさんあります。
そして、そのための知識や選択肢についての情報は、かつてとは比べ物にならないくらい増えました。
最近ではお金に働いてもらうことで収入を増やすだけではなく、体を使った労働からも引退する人が欧米を中心に増えているほどです。
(Market Watch 2021年4月3日)
キングコング西野さんの回答で、もう1つ印象に残ったのは留学を希望している相談者のお子さんへのメッセージでした。
まさか今の時代に学校で学ぶ知識だけで生きていけると思うなよ
西野さんのおっしゃる通り、学校はお金の働かせ方を教えてくれません。
自分で情報を集めて知識を吸収し、リスク許容度の範囲の中で経験を重ねながらお金に働いてもらう。
今後、誰にとっても必要になることだと考えています。
お金は働くことで成長する
「お金に働かせる」という考え方を初めて知ったのは、金持ち父さん、貧乏父さん(日本語版の初版2000年)を読んだ時でした。
つまり、この考え方は少なくとも20年前から誰でも学ぶことができましたし、それ以降も様々な本や情報が出回っています。
そして今ではYoutubeなどでよりわかりやすく学べるようにもなりました。
しかし、キングコング西野さんが「残念ながら多くの日本人は自分の体しか働かせてない」と指摘するように日本では投資に消極的な人がいまだに多数派です。
上のグラフを確認すると、日本人が欧米人と比べてお金を働かせていないことがよくわかります。
<資産運用割合 >
日本 16.2%
欧州 31.3%
米国 53.9%
米国はニュージーランドと同じ、物価が上がり(インフレし)続けている国です。
インフレしているということは「お金の価値が目減りしている」と言い換えることができます。
また、超低金利の世界では銀行預金はほとんど成長しません。
にもかかわらず日本人は預金が大好きです。
<現金預金割合>
日本 52.5%
欧州 33.0%
米国 13.1%
一方、アメリカ人の預金割合は日本人とは真逆で、より多くの資金を運用に回しているのがわかります。
その結果、過去20年で日本とアメリカの家計金融資産には大きな差が生まれました。
<家計金融資産>
日本 1.5倍
米国 3.3倍
お金は働くことで大きく成長できるのです。
まとめ
ニュージーランドの賃金上昇で、働く人々の所得額は増えています。
にもかかわらず、経済的なゆとりを感じにくいのは物価上昇による支出増が一因です。
今年も物価は上がることが予想され、またNZで社会問題化している高い住居費はすぐには解決しそうにありません。
支出の削減(節約)には限界があるため、生活レベルを維持していくには収入面の改善が必要です。
キングコング西野さんが指摘する通り、収入を得るには労働から得る方法とお金を働かせて得る方法の2つがあります。
お金の就職先(購入資産)はリスク許容度別に様々あり、個人が持つ知識や経験、情報量などが選ぶ基準になると思います。
ベストセラーとなった「21世紀の資本」で証明されたのは、資産運用で得られる富は、労働によって得られる富よりも成長が早いということでした。
これにより資産持ちはより裕福になる一方、労働収入だけの人はいつまでも経済的なゆとりを持ちにくくなります。
そして、賃金が上がり続けているニュージーランドでもその状況に変わりありません。
労働収入のみに頼らず、お金にも働いてもらう重要性はこれからもっと増していくと考えています。
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