「レプリカ」について思うこと①

こんばんは。秋の空気に少しセンチメンタルになっているケイです。寒い冬が近づいてくるのはとても憂鬱です。

突然ですが質問です!
「レプリカ replica」
この言葉に、みなさんはどのようなイメージを持たれますか?

“コピー?偽物みたいなもの?”と思われる方もいるかもしれません。
かつての私も、“「オリジナル」と比べて劣る偽物”といったネガティブなイメージを持っていました。
今回と次のコラムでは、レプリカについてネガティブなイメージをお持ちの方にも、レプリカの活躍や活用方法についてお伝えできたらいいなと思います。

そもそもレプリカとは

『日本国語大辞典 第二版』(小学館)によれば、「レプリカ」は以下のように説明されています。

(1)諸競技で、優勝を記念して与えられる複製の優勝杯のこと。
(2)美術で、原作者によって作られる原作の模写・模作のこと。
(3)一般に、模造品・複製品をいう。

ここでは美術品や文化財の「レプリカ」に主眼を置いて書いていこうと思うので、(1)は除外します。

(2)の場合においては、オリジナルの原作者による模写・模作となるので、オリジナルと同等、もしくはそれに近い価値を持つものを意味します。
有名なところだとゴッホの「ひまわり」なんかがこれに相当するのでしょう。

(3)の場合ですが、“原作者ではない人の手によって模倣された偽物”としての模造品・複製品がこれにあたります。この場合においてレプリカはオリジナルより価値が劣るという訳です。確かに、コレクションの収集や資産価値を重要視する場面で、レプリカに価値を見出すケースは稀ですよね。(少し前にダ・ヴィンチの「モナ・リザ」の複製品がオークションにおいて高値で落札されるといったニュースもありましたが……)

しかし、(3)のような偽物のレプリカであっても、美術品や文化財と関わる目的が「学び」である場合には非常に頼もしい存在となります。

博物館におけるレプリカ

そもそも、博物館等においてレプリカの存在はかなり重要だったりします。
特に国宝や重要文化財は希少なうえデリケートなものが多く、その保護のために展示には厳格なルールが定められています。例えば一年間に移動することのできる回数、一年間に展示することのできる日数、温度・湿度・照明の明るさなどの展示環境について様々な決まりがあるのです。

同じテーマの展覧会でも会期の前半と後半で展示替えがあったりするのはこういった事情が関係していたりします。(ただ、国宝や重要文化財の取り扱いについてはあくまで日本のルールなので、海外ではどのように美術品や文化財を取り扱っているのか時間があったら調べたいなと思います。)

それゆえに、
・長期的に展示したい場合
・オリジナルを所有していない場合
・オリジナルをもたないが資料をそろえて体系的展示をしたい場合
・美術品や文化財が制作された当時の姿に復元したい場合  等々
複製品なしでは展示に苦労する博物館も結構たくさんあるようです。
当然、レプリカは偽物ですから、欠点や限界なんかもたくさんあったりするのでしょうが、博物館にとってレプリカとても重要なものであることは間違いありません。

レプリカの新たな活用方法

また、近年では従来とは違った形でレプリカが活用されるようにもなってきました。
和歌山県立博物館では和歌山県立和歌山工業高等学校の学生と連携して、文化財の「さわれるレプリカ」を作成しています。
その目的は、視覚障害のある人でも展示に触れて資料から情報を得ることができるようにという博物館のバリアフリー化と、だれもが自由にさわることで展示を楽しむことができようにするためだそうです。
本物はケースの中に置かれてガラス越しに眺めることしかできませんが、「さわれるレプリカ」なら実際に手に取って、普段は見ることのできない角度から展示を眺めたり、触って造形を確認したりすることができます。(手触りや質感等は本物と異なるかもしれないのでそこには注意が必要です。)

残念なことに、近年和歌山県では仏像など文化財の盗難被害が多発しており、この対策としてもレプリカが活躍するようになりました。盗難被害に遭っているのは、過疎化・高齢化の進んだ集落の、人のいない寺社・お堂・祠だそうで、仏像を盗難から守るための「身代わり」レプリカを作って本物と置き換える活動も進められているそうです。


以上のように、レプリカはいろいろな形で活用されています。
長くなってきたので、続きはまた次回に。

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