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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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『エクスアストリス』を網羅する。




【注意事項】
本記事は、スマホゲーム『エクスアストリス』を遊び尽くすための、最後の1ピースとなることを目指して書かれた記事です。
基本的なストーリーや攻略情報は割愛していることをご理解ください。

また本記事は『エクスアストリス』のネタバレを大いに含みますので、クリア後に読まれることを強く推奨します。




物語を紐解く

2つのエンディング

ご存知の通り、エクスアストリスには2種類のエンディングが存在する。
筆者の初見時は、頭が真っ白になって数分考え続けたのちに右腕を選んだのだが、貴方はいかがだったであろうか。

選択の結果がそれぞれ何を意味するのか、なんとなくでしか分からないという人が大半だと思うので、一度じっくり考察してみたい。




まず右腕を伸ばすときのことを考えてみる。
完全なアストリスの原質で構成された右腕は、ライラに一切の影響を及ぼさない。

なので、それが偶然なのか必然なのかはともかく、Vi³に再会したような描写が見られるわけだ。


またジングゼンで出会ったウーの灰体を思い出してほしい。灰体は「時の檻から解放されたい」と言っていた。

正直なところ筆者にもよく分からないが、なんとなく雁の右腕にウーが宿っている状態がマズいということなら理解できる。

右腕をライラに接続することでそんな彼女を解放してやれる、というのが私の考察だ。
それが「約束」を果たす方法なのではないだろうか。

アリンド人の証であるリングが消散する描写も見て取れる


ただ一方で、ライラに変化がないということは、シャダラはまた同じような苦難と破滅を繰り返すということでもある。
アステロや十三騎士団の想いは報われない。次の世界でも同じように苦しむことになってしまう。

これに気付いたとき、右腕を伸ばすのにためらいが生じてくる。




では左腕を伸ばしたらどうなるのか。
人間の遺伝子を十分すぎるほど蓄えた雁の左腕。ライラはいわゆる、DNAの仕組みを取り込むだろう。

二重らせんのような構造

貴方が真に道徳的なプレイヤーならば、おそらくライラに接続するべきなのは左腕である。
人間の遺伝子を取り込んだことでライラには変化が起き、もしかするとシャダラは永遠の夜から解放されるかもしれないからだ。それは多くの人を救うことになる。


だが貴方には大事な人、Vi³がいる。
こちらの選択では、ライラに変化が起きることで二度と彼女に会えなくなってしまう。

一応、「ライラに遺伝子を与えることは疑似的な生殖であり、次回調査のときには雁とVi³の子どものような存在に会える」と考えるなら、それはそれでロマンチックかもしれないが。

ライラの守護者であるVi³が変化を望むかはなんとも言えないし、当然ウーとの約束は果たせなくなる……。




というわけで、あの二択はプレイヤーに仲間を取るか、シャダラを救うことを選ぶか、という残酷な二択を迫っているのだと筆者は解釈した。

また本イベントは、プレイヤーの精神は地球人(左腕)なのか、それともアリンド人(右腕)なのか?というストレートな問いかけでもあるだろう。
じっさいに、左腕を選ぶのはDNAをもって惑星アリンドを「地球化」することであるし、右腕を選ぶのはアリンドの規則を黙認することだからだ。


マンガンの正体

マンガンは結局何者だったのだろうか?
ライラの束縛を受けない(=リセットの影響を受けない?)ことが公式から示されている。
作中にマンガンの同類がまったく登場しないのも不自然であるから、なにか特別な存在であることは間違いない。

そんななかで私はこれが気になった。

この巨大な鳥の正体はマンガンなのではないか。
だとしたら一匹だけリセットの影響を受けないことにも説明がつくし、戦闘時とそれ以外とで姿が変わる特徴とも辻褄が合う。

また一方で、口だけの「怪物ハンター」がこう言っている。

マンガンに脅されたおじさん

もちろん彼の実力は皆無だからこれはデタラメなのだが、オタクの勘として。
こうしたおバカキャラの発言は往々にして正しく、偶然合ってたというお決まりの展開がある。これもそのパターンの内なのではと思った。

マンガンはほんとうに古の巨獣であり、リセットや銘刻の補助を使命とする、なにかそういう超越的な存在なのではないだろうか?

これに関しては確実な証拠を出せないので、あくまでイチ考察として聞き留めておいてもらえたらと思う。


ホイットマンの詩

ドーントレス号居住エリアの二階、Λの部屋で発見できるアリンド語の詩があったのを覚えているだろうか。

取得した際ロイが「これはウォルト・ホイットマンですね。」と言うので、実在する19世紀アメリカの詩人ホイットマンのものだと分かる。
つまりこのアリンド語を訳せば、彼の著作のいずれかに一致するはずなのだ。
そう思って解読を試みた。

解読のようす。実際はまったく見当違いだった

結論からいうと、これはホイットマンの詩「おお船長よ! 私の船長よ!」の冒頭部分だ。
純粋なアリンド語ではなく、英語の原作をドイツ語訳したものを、一文字ずつアリンド文字に置き換えたものである。


日本語訳は以下。

おお、船長よ! わたしの船長よ!
わたしたちの難航は終わった、
船はことごとくの破滅を完全に切り抜けた、
わたしたちが求めた褒賞はかち得た、
港は近い、
鐘々の鳴る音をわたしは聞く、
人々はすべて狂喜している

「おお船長よ! 私の船長よ!」富田砕花 訳より

まさにドーントレス号に相応しい詩ではないだろうか。
後述するが、この詩は地球人のロマンがアリンド人に影響を与えた象徴として、第二章のエピグラフとしてある。
きっとΛは、この詩を心の支えとしながら出航の準備を進めてきたのだと思う。

また引用された部分以降は、暗殺されたリンカーン大統領の追憶として歌われた側面があるため、暗い展開になっていく。
まるでΛが航海に出られないことを暗示するかのように。





詩の解読にあたってmoyashi 様の考察記事と、ご本人による直接のアドバイスを参考にさせて頂きました。
私一人では特定に至らなかったと思われることもあり、この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。


エクスアストリス、とある星の観光

「赤の女王仮説」なんて言葉があるように、地球の掟は一言でいえば進化、つまり革新の惑星だ。
それに対してアリンドは、ライラの意志に従うものだけが生き残れる保守の惑星である。

物語を紐解いていくと『エクスアストリス』の主題はそこに見えてくる。
すべては、地球人のロマンがアリンド人の心を揺さぶってしまったためなのだ。ホイットマンの詩はその象徴としてドーントレス号に佇んでいる。

地球人が日風港に航海の物語を持ち込んだんですよ。海に出る船そして空を舞う白鳥の物語を……

ドーントレス号・居住エリアにて、ロイ

確かに地球人とアリンド人は似たもの同士だった。ともに研究を進め、アストラドを対局し、冒険に出たいと願った。
ただ生まれた星の掟だけが、異なっていたという悲劇。

そういうわけでエクスアストリスのシナリオ(、および星の守り手であるVi³)は、人々の希望を打ち砕きながら進んでいく構図をとるのである。

主人公・雁は、そうした情勢をただ見てまわる。起承転結はなく、行動を起こすのは、基本的に仲間のVi³が理由であるときだけだ。
それはこの旅が、あくまで観光だからなのだと思う。

プレイヤーは雁という部外者を通じて、アリンドの光と影を見る。
その上でアリンド人を憐れむのか、そういう星だと割り切るのかはまさに貴方に委ねられていた。

いずれにしてもロイの言うとおり、「人間は幸福な生き物」に違いない。


【追記】地球について

エクスアストリスの物語において大きなブラックボックスとなっているのが24世紀を迎えた地球の状況である。仮にも雁の故郷であるはずなのに、不自然なほど言及がない。
そんななかでも地球の情報がわずかに開示される箇所があるので、順に見ていきたいと思う。

ひとつは満汐湖でみられるNPCとの会話だ。
地球人はアリンド以外の星にも興味を持っていることが分かる。

シャダラのメイン任務「太陽の火を消すー冷却中枢の場所を探す」のテキストにも手がかりがある。

”死した町でわずかな命の可能性を探す“というシチュエーションが、地球でもあったという事実が暗に示されている。

そしてボア・リンドルの日記によると

どうも現在の地球は、ドランのように太陽が照ってないのだという。

これらの情報と、それからエクスアストリスが古典SFの文脈を持つことを加味すれば、

24世紀の地球は「核の冬」に陥っていて、移住先かより強い肉体を手に入れるのに必死となっている

といったところだろうか。


ときに、24世紀の地球人は二つの計画を進めていた。RESD(レッドアースステラディガー)2000計画と、プロジェクト蛍火だ。

RESD2000の成果がまさに惑星アリンドの発見であると読み取れる一方で、プロジェクト蛍火は謎に包まれている。

リンウからはこんなことを告げられた。

雁の体がアストリスと適合したことが”半分“であるとして、残りの半分はなんだろうか?
分かりやすく言い換えるなら「持ち帰った原質を何に使おうとしているのか?」

「アストリスを活用して危機を生き延びようとしている」というのが一番シンプルな答えではあるものの、本作のテーマにマッドサイエンスが含まれる点を踏まえると、疑いたくなる気持ちも出てくる。

プロジェクト蛍火には裏があるのか、ないのか? 地球文明は依然謎に包まれたままだ。


【追記】アップデートv1.1.0で追加された要素

2024年5月10日に突如アップデートが実施され、エクスアストリスのゲーム体験は大きく変化した。
アプデ内容はグラフィック・戦闘・シナリオと項目を問わないが、ここでは新たに追加された資料や会話、特に考察に関わるものを紹介しておく。

・序章で発生するVi³との会話

先行した調査員に似ているのかもしれないし、いわゆる“二周目”を意識しているのかもしれない。


・一章におけるテキストの修正

資料全体に大幅な修正が加えられた。一部にはまったく新しい文言も。


・シュンの話す内容の追加

サブ任務「レイスの願い」のなかでシュンが自分の死に方について話すように。言うまでもなく、これはEp⁶と同じ結末である。


・アイテム「リョウのドロニウムの鉄腕」

アップデートに際して遺品を一つだけ追加するという、なんともグリフラインらしい所業。


隠し要素を巡る

認知度の低そうな隠し要素を列挙しておく。最後には未解明の謎もまとめてみたので活用してほしい。

人のいなくなった〈貿易地域〉

「日風港へ向かう」直前に〈貿易地域〉に立ち寄ると、住民がほとんど消えた町並みを見ることができる。

いじめられっ子の少年が取り残されており、ディタレントとの交流がみられる。


フアンの前日譚

ドーントレス号に乗り込む直前に、目的地より奥に進むと遭遇できる。

三章サブ任務「バラバラになった家族」の前日譚となっており、これを見逃すと話の流れがよく分からなくなる。

なお戦闘と報酬があるにも関わらず、本イベントはサブ任務としてカウントされない。


サブ任務「十三騎士団」

こちらはそこそこ有名であろうが、発生条件があまりに分かりづらいので紹介しておく。
〈シャダラの町〉にポツンと置かれたベッドで休憩すると発生する隠しサブ任務。

リョウの行方についてのイベントである。


【追記】石碑4号とアストリスの起源

ジングセンでVi³を再び仲間に引き入れたあと、ロープウェーを使用する直前に右の分かれ道に進むことが可能だ。

情報提供:@album_ad_medic

分かれ道を進むと星空についてのムービーと、さらなる石碑「石碑4号」を目にすることができる。

明言されないが、これはある事実を示唆するものと思われる。

エクスアストリスのゲーム中には、クキキキの生態やフェルムーン、ライラが「WJL-86A1突撃型有機体」と呼ばれていることなど、他にもヒントが用意されているのだ。

情報提供:@sivol7

(※ライラの正式名称は日本語以外の言語設定でのみ閲覧可能。)

これらが示すのは、アストリス系がもともとアリンドで誕生したのではなく、宇宙から飛来したという事実である。



未解明の要素まとめ

  • 銀河の瓶。4つの予言が得られ、ストーリーを暗示しているように思われるが……?

  • 黒金。「中央に立つ君に、宙は扉を開いた」という文章の意味が謎のまま

  • ドーントレス号ブリッジの窓の開閉。装置に近づくと窓を開けることができるが理由は不明

単に演出だろうか?
  • アリンド語の完全解読。一部の文字の意味や、大文字小文字の使い分けなどが不明

なお、作中ほとんどのアリンド文字がドイツ語の置換であり、純粋なアリンド語はデータが少ない。
筆者が今のところ確認している純粋アリンド語は「Ordorbis」の歌詞と、ゲーム内でVi³が喋る二言のみ。


お読みいただきありがとうございました!惑星アリンドで良い旅を。

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