MMTと階級闘争 パート1「階級対立を無視するプロパガンダ」

おかみ あら、今回のこのタイトル。いよいよマルクスっぽい話になるのかしら。

大将 俺もいろいろ話したくてな。

にゅん うん、大将にはぜひ。ふだん大将と話しているとつくづく思うのだけど、どうもこの国の論壇では「資本主義の矛盾」みたいな論点ってものすごく軽く見られてるよねえ。

大将 そうだな。マルクスが発見した労働と資本の対立関係っていう基本的な構造そのものが忘れられすぎと思う。

にゅん うん。

資本と労働の対立構造は「不変」でしょ

大将 当然だけど、労働と言うのは賃労働だけではなくて人間の活動そのもののことだよな。企業や市場は、効率的な分業の場であり労働の成果が生まれるしくみだけれども、資本家が利潤を求めるからこのしくみは成立する。で、そのメカニズムで資本が集中して格差が生まれるわけだろ。だから、資本っていうのは疎外労働が蓄積したものってことになる。

おかみ 大将は「体が資本」とあたしが言うと怒るよね。「労働が資本を作るんだ」つって...

大将 ソ連や北朝鮮が共産主義国家の確立に失敗したからと言って、資本主義という世界のこの基本構造が変わるわけではないのだがな。

にゅん 米国でさえ若者を中心に社会主義への抵抗が薄れているんだけど、日本は絶滅寸前だからねえ。

大将 まず言いたいことは、資本主義である限りこの対立構造は全然変わっていないだろうということなんだよね。日本は社会主義が絶滅寸前と言うけれど、むしろそのことによって資本主義の矛盾は苛烈に出てしまう。それが今の酷い労働環境であり、生活者の苦しみであり、将来不安なわけじゃん。

資本によるプロパガンダ

大将 で、その蓄積された資本は生産手段に再投資されるだけじゃなくて、金融技術の発達もあって今は「カネがカネを作る世界」に移行してきた。今はこちらの方が多いくらいだ。常識。

おかみ そう言うよねえ。

大将 で、その巨大化した資本はさらに利潤を追求する過程で当然各国の政府をコントロールしようとする。カネが悪意を持っているからではなくて、富が増殖させるのは資本主義の本質だから。

おかみ 明石も書いている経団連と政治の癒着だってこのメカニズムだよね。

にゅん MMTとか非主流経済学の文章を読んでいると、こういうのは「あたりまえ」に書かれているのに日本語の文ってなんか薄いんだよね。

大将 ここまでやりたい放題やられているのに、社会主義が退潮なのは資本側のプロパガンダも大きいわけだよ。

「資本家 vs 労働者」というより「資本 vs 人間」

大将 そうなってくると、資本側は労働者以外にも矛先を広げていく。住宅を持ちたい、とか、子どもをいい大学に入れたいという気持ちを煽り立てて人々から資産を奪い取る。ローンを負わせるという形で。

にゅん 年金や介護保険もそうだよね。保険産業だけでなく、実際に薬や医療機器や介護機器の市場を狙って。

大将 もちろん人類はそこから恩恵を受けている。けど、ほおっておくと今の日本のように生活者が資本に追い込まれてしまう。くどいけど、今言っている労働者は「生きる意思を持った人間全員」と言う意味だ。

資本との闘争とMMT

にゅん マルクス好きの大将がMMTに注目したのはそのへんと関係があったよね。

大将 そう。だって貨幣は政府が創造し破壊していたってわけだろ。つまり、政府支出(創造)されてから徴税(破壊)があるんだとね。しかも、ボウリングのスコアと同じで数字を変えるだけでこれを行っていると。

にゅん そうだね。

大将 こういうイメージがある。政府は任意の場所に貨幣を出現させたり消すことができるわけだ。たとえば消費税は、消費者が買い物をした瞬間に、消費者の金融資産が減っているよな。消費者の財布から政府が消している

おかみ そうだったね。

大将 対して、相続税や資産税だと、資産を持っている人の数字を消している。反対に、財政支出は数字を出現させることであり、公共事業の事業者への支払いや、公務員への給与の支払いも、社会保障も、その受け取り手のところに残高、つまり貨幣を出現させている。マネークリエイションだな。

にゅん 国債の金利は、国債の持ち主のところに「出現」。

大将 なんてことない、「カネは中央銀行が発行してそれが貸し出しを通じて世の中に回る」というのは嘘で、「政府が任意に出したり消したりしてる」やんかってね。

にゅん そうなんだよね。

大将 だからさ。簡単な話で、貨幣をめぐる「資本 vs 人間」の闘争の最終決着は政府が決めているんだよね。

にゅん 主流経済学はそれを隠す。アメリカの反共政策に乗っかったのがニューケインジアンだから当たり前だよね。インフレは悪いというプロパガンダで労働運動を潰したという話は何度もしたよね。

おかみ だんだん聞き飽きてきたよ。ニューケインジアン「が」プロパガンダって話。

大将 いま言いたいのは、こういうことな。貨幣の所在はさ、結局政府がキーボードで最終的に決めてるじゃん。たとえば法人税減税は、資本家の収奪を増やす。消費税は消費者から取る。この動きに比べたら、中央銀行がちょっと金利替えて景気がどうとか、ほんとバカバカしいプロパガンダでしかないよね。貨幣量は金利の分しか「変わらない」のだからさ。

にゅん その話はまた今度やろう。

大将 あとひとつ、これも大事だね。貨幣の総量を増やしたり減らしたりできるのは政府だけということ。生活者の純金融資産を増やすことができるのは政府しかないということだよな。

で、明石順平さんの見落とし

にゅん 今話したいこととしてはね。こないだからやっている明石さんの「人間使い捨て国家」の話。何度も言うけど、すごくいい本。最後の提言はぜんぶれいわ新選組も採用すればいいじゃんと思うものばかりだ。でも、決定的に足りないものがあるね。それは財政を心配しすぎるところと、消費税の増税を容認するところ。

それでさ、明石さんツイッターでこうおっしゃっていて、いやそこは違うだろうと。

にゅん だって「ドミノ倒しの最初の原因」は、資本主義そのものだよ。そして、法人税減税は100パーセント資本家の利益獲得手段の拡大だし、消費税の増税は100パーセント純粋に消費者からの貨幣の消去だ。

大将 明石さんは、経団連と自民党の癒着、つまり、資本による政府支配を批判しているのにねえ。

にゅん 「資本 vs 人間」という構図が見えてさえいれば「消費税で社会保障を賄う」という言説は、「資本からは絶対回収できないから庶民でよろしくやって」と言っているのと100パーセント等しいんだよね。政府の介入が無ければ庶民の総金融資産は絶対に増えないのだから。社会保険があるにしても、だよ。
それでにゅんはツイッターでこう言ったんだ。明石さん、どうして資本主義の基本構造を無視するの?っていう意味で。

にゅん そうしたら田中信一郎先生に「論理が飛躍しています」と言われてしまい。

にゅん にゅんとしては飛躍しているつもりは全然ないわけ。明石さんが、階級闘争の側面を完全に見落としているということね。まあ明石さんに限らず日本の論壇はこればっかとはいえ。

というわけで田中さん、にゅんの論理としてはそういうことですーv(^o^)v

おしまい。

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