文章を巡って旅に出た話し
昔から文章に触れることが好きだった。
勿論いまも好きだけれど、
当時のようにガムシャラに文章を探すような旅をすることは、もう出来ないのかもしれない。
あの頃ちょうど10数年前、
女子大生になった私は、
正直少し浮いていたと思う。
なぜなら文章を読むのが好きな子が、
あまり周りにはいなかったから。
学校の中には
「何となくまだ社会には出たくない」と
大学に入ってきた子たちも沢山いたし、
漫画は読んでも本を読む子は少なかった。
勿論それがいけないわけではない。
ただ当時の私は、少し浮いていたと思う。
友達と合コンや恋の話しをするのも、
そこそこに私は足しげくそこへ通った。
大学には少し離れた場所に図書館があり、
静かなその空間がお気に入りだった。
図書館でレポート課題の参考書を探すときも、勿論あったけれど、どちらかというとエッセイだったり、小説を読むために図書館に行くことが多かった。
本を読むと自由に色々な場所へと、
旅することができた。
当時私はグイン・サーガシリーズという栗本薫さんの本が好きだった。
内容は一言では言えないけれど、
豹頭の戦士であるグインを中心に、
架空の世界で仲間とともに戦う、
スペクタルファンタジーの内容だった。
それを読むたびに、異次元に放り込まれたような気持ちになりワクワクした。
そして第一幕が終わると、
今度は三浦綾子さんの本にはまった。
氷点はあまりにも有名だけれど、
こんな辛辣な家はあるのやろうかと半ばハラハラしながら読んだ。
自分の子じゃないと疑われるだけで、
こんな邪険な扱いをされるなんて惨いとも思った。
そのあとこの方の本は沢山読み、
出身地である北海道・旭川市にある
三浦綾子記念館にも学生時代足を運んだ。
当時付き合っていた彼の出身地が
北海道だったのでお願いをして、
記念館に連れて行ってもらった。
真冬に行った北海道の旭川は、
マイナス20度近くに達する極寒の地だった。
京都も盆地でそれなりに寒いけれど、
それとはまた違う寒さが襲ってきた。
見渡す限り辺りは雪で覆われる白銀の世界、
それこそ三浦綾子さんの小説では読んだことがあったけれど、実際見るのと触れるのでは
全然違う白銀の世界がそこにあった。
白樺の木々が雪の重さで揺れていた。
足を踏み込むたび、サクッサクッと音がする。
こんな世界見た事ない。
当時の私は、こんなところで三浦綾子さんは
育ったのだと思った。
敬虔なクリスチャンだった三浦綾子さんは、
結核やカリエスなど沢山の病に侵されながらも、その書く意欲は衰えることなく最期まで
書き続けたということが凄いと思った。
寧ろ、三浦綾子さんは病に伏す時間が長かったからクリスチャンとして信仰を深めていかれたのかもしれないと思った。
文章を巡って旅に出るのは、とても面白かった。文章を通じて、その人の世界観に触れられるまるで交信をしている気分だった。
例え今はこの世にいなくとも、
その人の意志はちゃんと文章で受け継がれてゆくのだ。
昔から文章に触れることがとても好きだった。
普段は言い表せない言葉も文章でなら
伝えられる。
だけど、図書館に足しげく通う当時の私は、
やっぱりどこか浮いていたのかもしれない。
それでもいつか、この頭に浮かぶ
沢山の人たちがいつか文章を通して
動き出してくれたら良いなと願っている。
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