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今後のAI社会では、幸福感の低下が、社会問題として表出してくるのではないか?

前置き

昨日、この記事を読んでいて考えさせられました。

この記事の主張を簡潔にいうと以下です。

人の幸福感は殆ど100%が「自分が承認されている感覚」(「自己承認感」としておこう)で出来ている。

出典:幸福の決定要素は、実は一つだけだった

この主張を裏付けるエピソードなどについて色々と書かれているのですが、個人的な経験に基づくと割と納得度は高いです。自分が幸福感を感じられているのは、確かに承認されている環境に身を置いているときでした。

ただしここに1点自分の考えを付け加えるとしたら「自分が承認されている感覚」から「自分で自分を承認できる状態」に移った状態が、初めて本当の意味での安定的な幸福を得られているなという感覚があります。

他者から承認/賞賛されることで、自分の価値に気づけ、それを自分自身でも認めることで本当の意味で心が安定した豊かさを持てるようになる気がするので、幸福実感を得るには、他者からの承認→自己による承認という流れがあるのかなと思っています。


さて、今回の主題はこの幸福実感を得る上でかなり重要となる「他者からの承認」ですが、今後のAI社会においてこのままだと激減する可能性を感じました。つまり社会全体の幸福感の低下です。

ここについての課題感と自分の中で考えている解決の方向性について言語化を試みていきたいと思います。


課題感とは

AIによって多くの仕事が代替される世界となったとき、それは"他者からの承認を得る大きな機会"である仕事が無くなることを意味し、自己を承認するためのきっかけを得られにくくなるのではないか?

※個人の考えとして、AIによって社会が回るために必要な大部分の仕事が代替される時代はほぼ必ずくると思っています。ただしこの時間軸は10年後かもしれないし、50年後かもしれません。

技術的には実現可能なレベルが来るのはそう遠くなく、ただAIが人間社会に完全な信頼を持って受け入れられてくるタイミングがいつ来るかわからないという考えを持っています。

私のスタンス

これまで仕事とはかなり他者からの承認を得る機会となっていたと感じます。実社会に対してのアウトプットを出す中で、やはり自分の能力として足りない部分や得意な部分が色々と見えてきますし、年数を重ねていくと後輩を見つめながら自分の成長したところなどに気づく機会もあります。

また「働く」という行動は意味を見出しやすいと思います。理由は様々ですが「働いて給与をもらうことで生活を送れる/家族を養える」であったり「仕事の同僚の困りごとを助ける」「自分の仕事が社会に対して良い影響を及ぼしている」というものもあります。

いずれにせよ仕事は、誰かにとって、社会にとって、自分の行動は何らかの意味があると実感できるものが多いと思っています。

一方で、仕事以外のプライベートでの活動の場合「これって何の意味があるんだっけ?」「求められていないんじゃないか?」となってしまうことが多い気がしており、活動を通して自己を承認する機会を生み出すことが難しいなと感じています。

休職をしたりフリーランスをしたりと、目的のない休みの期間を体験している人は分かるかもしれませんが、これは「休みが多くてやったー!」と思いきや、結構辛いです。。簡単にいうと「自分の存在意義って何だっけ?」という問いに直面して、キツくなります。

1年間の休学期間と数ヶ月のフリーランス経験に基づく

結果的にこれは自分を承認することが難しい状況を作り出してしまい、幸福実感を得ることが難しくなると思っています。

「仕事をする必要がなくなり、好きなことをしていく社会」というのは他者からの承認を受ける機会が少なく、こういった「自分の存在意義って何だっけ?」と言った自己承認するのが難しい社会になっていくのではないかという危機感を持っています。


解決の方向性について探る

前提として、現実世界にある社会課題の大半はAIによる解決が主になっているという世界観の上での想定をしていきます。この世界では質・スピードいずれをとっても、人間がAIに勝てる見込みはなく、人間が行うことはハンデとなる世界です。

そういった世界の中で、どう他者からの承認を得る機会がデザインされていくのかについて考えていきます。

1. ゲームなどの課題解決ができるデジタル空間の設計

ゲームの面白いところは、その世界の中で課題が存在することです。単純なクエストを始め、特定のレアドロップアイテムがないと敵を倒せない/ストーリーが進められないであったり、ギルドに人数が集まらないと挑戦権が得られないなど。

はたから見るとそれは一見意味のないことですが、ゲームで遊ぶ人たちにとっては重要な課題です。これを解決していくことで、達成感はもちろん他のプレイヤーとの承認/賞賛の機会につながります。

自分の体験談としては、メイプルストーリーを小さい頃プレイしていたのですが、あの時の充実感は人生を振り返ってもTOP3に入ります。今も仕事が充実して楽しいですが、それと似たような体感があります。四六時中ゲームに熱中し、誰かと協力しながらいろいろな物事に挑戦していく体験がそこにはありました。

小・中学生の頃の話です

個人的にはMMO(Massively Multiplayer Online: 大規模多人数同時参加型オンラインゲーム)に可能性を感じており、誰かと協力をしながら課題に立ち向かっていくプロセスがデザインできると思っています。これが虚無感を脱して、新たな充実感を生み出す世界となっていくと感じています。


2. AIによってできることが拡張され、それが認められやすい世界

上記はゲーム世界の話でしたが、現実世界についても考えてみます。確かにAIが色々な課題を解決してくれ、人間がそれを行うとハンデになってしまうという構図がありますが、一方でAIにより人間ができることが拡張されるという面もあります。

現時点で既に、ChatGPTを活用して、非エンジニアでも簡単なアプリだったら勉強しながら開発しやすくなっています。

これまでだったらコードや概念を理解して、自分で書けるようにならないと開発できなかったものが、現在はChatGPTにコードを出力してもらって、そのコードをコピペ&エラー解消していけばアプリケーションを作ることができます。合わせてそのコードの意味を分かりやすく説明してもらって理解をし、そのアウトプットを実現した手法についても理解することができるようになります。

手法が理解できていると、あれとあれを組み合わせればこれが実現できそうだなという「アイデアの閃き」が起きやすくなります。これが更なる学習・アウトプットを加速させていきます。

AIによって人間ができることが拡張される例

上記はわかりやすい例でしたが、このようなことはこれから様々な領域に、当てはまってくると思います。

ただ今後くるAI社会において、これらの学びによる専門性というのは社会に求められるものではなく、趣味の延長線上の位置づけになる可能性が高いです。

現代においては、希少性のある専門性を得ることで市場価値が上がる実感が得られたり、また仕事で実際に自分の専門性を活かせる場があったりします。これらが将来的に機能しなくなる可能性が高いということが、自分が気にかけているポイントです。どれだけ専門性を突き詰めても「それGPT-Xにお願いすれば、精度高く一発で実行してくれるくね?」と言われてしまえばそれまでです。

この学んだ専門性が、承認/賞賛される仕組みが重要になってくるのかもなと思っています。簡潔に言い換えると「頑張れば報われるような仕組み」をどう設計するかですね。

鍵は小さなローカルコミュニティの形成と、自分の頑張りが権威性によって可視化されるような仕組み作り、あたりかなと思っています。ここら辺は今後も考えていきます。


3. AIが承認/賞賛し、自分の価値に気づく

コンテンツが溢れてくる世界の中で、誰かが自分を見つけて承認/賞賛してくれる機会はこれからグッと減ってくると思われます。そうなってきた時に、承認してくれる相手は人間ではなく「AI」でも良いのでは?という発想です。

AIが自分の頑張りを評価してくれたり、こだわったところに気づいてくれるなど。「AIが褒めてくれても嬉しくない」と一見思いますが、人間の脳はそんな賢くないので、人間のような振る舞いをすると中身がAIでも人間から褒めてもらったように感じます。(気になった方は、アナログハックで調べてみてください。)

ただこれも毎回褒められても「はいはい、お決まり文句ね。」となるのでユーザー体験という観点での設計が必要です。これが実現できてくると、コンテンツが大量に増えても、承認/賞賛される機会を得られるようになります。

またAIからのフィードバックを通して、自分が得意と思えることが見つかったり、それによって自信につながったりと、良いポジティブループが生まれる気がします。

AIが評価する社会というのは、一見世紀末のように感じますが、実態はかなり平和な世の中になるのではないかと考えています。(もちろん他の要因で、AI社会が危険になる可能性はありますが)


終わりに

おそらく現状のまま行くと、仕事を通して承認/賞賛を得ていた人たちの心にぽっかり穴が開いてしまうという現象が起きてくるだろうと思います。

かくいう私も、現在半年間の育休に入り、会社に属さない状況の中で少しそういった類の感情が出てきています。なので、自分もぽっかり穴が開いてしまう予備軍だと思います。

モノは豊かだが、心が貧しいという世界にならないためにも、AI技術によって変化が加速してくる未来に対して、一体何ができるのかについて考え続けていこうと思います。

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