にょそ / 上海で働くマーケター
中国進出の際はしっかりと消費者調査をしませんか?という提案
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中国進出の際はしっかりと消費者調査をしませんか?という提案

にょそ / 上海で働くマーケター

こんにちは、にょそです。
前回のnoteでは、中国におけるマーケティングの制約を様々な観点で紹介しました。

その中で、「中国では消費者調査を定期的に実施する方がいい」的なことを書いておきながら、詳細に関しては後回しにしていました。

このnoteでは消費者調査実施の重要性に触れつつ、さらに実施しなかった場合に陥る、マーケティング現場で困難について紹介していきます。

ちなみに、私は調査会社で働くものではありません。マーケティングプランを立てて、すべての日本ブランドの中国での勝率が上がって欲しいと願う立場から書かせていただいております。

中国に進出しようとするブランドの実態

2020年2月頃から始まったコロナウイルスによって日中間の渡航が不便になり、日本企業から越境での中国進出を相談いただくことが多くなりました。中国に法人を持つ日系企業とはリテラシーや悩みが違うため、勉強になったことが非常に多かったです。

ご依頼いただくことが多い内容としては中国での3ヵ年計画です。その中で、より成功率の高いマーケティング戦略を構築するために「定性&定量調査」を提案に入れさせていただくことが多いのですが、結果として「進出のご支援、是非お願いします。ただ、消費者調査は不要です。」と消費者調査だけお断りされる企業様が肌感として多いと思います(私の説明が下手で、重要性や意義がうまく伝わっていない可能性も大いにありますが)。

お断りの主な理由は以下の2つです。
・投資案件ではない
・ローカライゼーションへの意識が低い

まず、企業にとって中国進出が投資案件なのか、利益確保(ROIが指標)なのかで大きくニーズが異なります。投資案件であれば比較的チャレンジングな選択ができるのに対して、利益確保であればどれだけ売れるか分からないから序盤の大きな出費を嫌う傾向があります。担当者も「やった方がいいのは分かるけど、ウン百万円も予算を投資できない。」という回答になりがちです。

次に、日本では消費者調査をやっているのに、中国ではやらないという企業もよく見受けられます。「そもそも知っているユーザーがいない、既存顧客はもちろんいない。」とタイミングを見計らう場合もありますし、「自ブランドに対する中国人消費者の考えなんて、どうせ日本と同じだ」とローカライゼーションを意識しない場合もあります。

前者の場合は社内の事前決定事項であることが多く、初年度の調査実施にお金を回すことは難しいと思います。一方、後者の場合は調査を実施することを強くオススメいたします。

ここで注意ですが、中国人消費者にブランドや商品がうまく受け入れられ、消費者調査なしに一定の成功をしているブランドはもちろんあります。某スキンケアブランドでそれを経験したのですが、破竹の勢いで伸びていきました笑
ただし、ブランド側の経営層は皆、中国やWebマーケティングのリテラシーが高く、非常にうまく物事を進めていたレアケースのような気がします。

成功確率を上げるには消費者調査が必要、という私の意見は変わりません。

なぜ消費者調査が必要なのか

消費者調査の目的は企業によって様々あると思います。マーケティングにおける目的は以下の3点が一般的でしょう。
・消費者を理解する
・販売予測をする
・世の中の価値観の変化を研究する

2つ目の販売予測や3つ目の価値観の調査・研究は正直、初期の中国進出段階では予算面で厳しく、有効なのは中国に法人を持って本格的にシェア拡大に乗り出す段階だと思います。私が必要だと述べてきた消費者調査は、1つ目の「消費者を理解する」に該当します。消費者理解のための調査は、皆さんもなんとなく想像つく(もしくは、バリバリやっている)のではないでしょうか。

消費者を理解する

 マーケティングで有名なP&Gのスローガンは「consumer is boss」で、消費者目線に立つことの重要性を教えています。また、日本を代表するマーケターの森岡毅氏(元P&G/USJ 、現株式会社刀)も著書・確率思考の戦略論で、売上を構成する要素は、認知度・配荷率・プレファレンスの3つだと述べ、さらにはプレファレンスを上げることこそマーケターの仕事としています。

消費者のJob(ブランドの付加価値になりうるタネ)発見とそれを解決する一連のプロセス(=マーケティング)は消費者の理解から始まるのです。

ここで皆さんに質問です。皆さんは中国人ってどんな人か知っていますか?



「はい、中国人は・・・のような人です。」このように一言で答えられたら、おそらく不正解です(偉そうにすみません)。というのも、中国は東西南北にとても広くて人口も14億人と、文化/生活スタイルも天候も平均収入も言語も違う様々な人がいるのです。

加えて競合となるブランドも日本とは異なり、消費者の自社ブランドに対する考え方はほとんど違うものになる可能性が高いです。
・安い価格の競合ブランド(および、偽物)が溢れている
・「コト」時代に「モノ」へ固執する人がいる(高級ブランド大好き)
・代理購入(ソーシャルバイヤー)/並行輸入で満足
・気候による売れ筋の変化

中国に法人を持つ会社は、中国専用商品を開発するMDを持ったり、ブランドレギュレーションを改修したりと、あらゆる方法でローカライゼーションに取り組んでいます。「日本で売れているから中国でも売れるでしょ?日本産って強みでしょ?」は5年前にそのバブルは崩壊していますので、2021年現在では通用しません。

消費者調査は調査会社にまるっと外注しても成果にはつながりにくいです。実際に製品を使ってくれて、消費者の見えないニーズを読み取るための調査を設計する。さらに、その結果を人間の本能との結びつけ、施策に落とし込んでいくようなマーケターがいれば素敵ですね。

中国での消費者調査はマーケティング制約も取っ払う

中国ではもう一つ、消費者調査における非常に重要な役割があります。それは「施策の効果検証」です。中国では認知&興味、購入&リピートでユーザーの行動トラッキングが分断されていることは以前のnoteで紹介しました。

 皆さんはSNS施策(広告やキャンペーン、運用)やインフルエンサー(=KOL)施策など、PR施策の目的、および、KPIは何に設定していますでしょうか?インプレッション数、インタラクティブ数になることが多いと思いますが、売上とどのように相関はありますでしょうか?私にとっては最大の疑問です(TV CMは分かりやすいですね)。 

そこで定量的な消費者調査から「認知度」という指標をとることが重要だと考えています。認知度は売上に大きく相関しています。知らなければ買えないからです。 

認知度を定期的に検証して一つの基準にすることで、PR施策がうまくいった/うまくいかなかったと判断がしやすくなります。認知&興味、購入&リピートでユーザーの行動トラッキングが分断されてしまう問題にも(間接的ですが)終止符を打つことができます。

ブランド側と店舗運用会社が実際に陥る罠

某化粧品ブランドは、中国進出直後の売上に伸び悩んでおり、その原因を探っていました。

とある日、私は重慶旅行中で街中を散策していました。そこで私はそのブランドのターゲットと雰囲気が合いそうな人を大勢見かけました。興味本位で何人かの女性に「このブランド知っていますか?」とEC店舗ページを見せながら質問したら、口を揃えて「知らない」とありがたい返事をいただきました(ご協力ありがとうございました)。帰って調べてみると(重慶を含む)内陸部での売上が他の都市と比べてかなり低かったことが分かりました。

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内陸部の売上が低いのは認知度が低いからかも!と発見できてちょっと嬉しかった反面、消費者調査を行っていないので認知度が分からず、ただのN1分析における仮説程度になってしまいました。また、広大な中国のあらゆる都市で分析すべきなのにそれが出来ないと思うと非常に残念でした。

中国進出時における、もはやお手本みたいになっている施策は以下の通りです。
 1. 天猫や京东などのEC店舗をオープンし、ECサイト内広告する
2. Weibo(≒Twitter)、小红书(≒Instagram)、抖音(=Tiktok)を運用
3. 上記SNSチャネルで広告やKOL(=インフルエンサー)施策を行う
4. 芸能人やIPとコラボをする

しばらく実施したのち、リテラシーが上がってきたブランド側の担当者は一つの疑問に辿り着きます。「2〜4の施策、本当に売上に貢献しているの・・・?」と。ごもっともだと思います。

KOL施策やったのに売上上がらないなぁ
もはや、すべてのブランドで聞く悩みです。売上をKPIにできる(買わせる能力が強い)KOLもいますが、大半は直接的な売上UPが望めないでしょう。最悪のケースは「KOL(インフルエンサー)施策ですぐに売上をあげる方法を考えてください」と依頼されることです。正直無理だと思っています。

目先の指標(インプレッション数やインタラクティブ数)では、目的変数(売上や利益)が変化した理由を説明するのに十分ではありません、この問題を解決するヒントは中間変数の設計だと思います。

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「売上(目的変数)と相関のある、ほにゃらら(中間変数)を上げるためにお金を払っています。」

この「ほにゃらら(中間変数)」に最適なのが消費者調査で取得できる認知度だと考えています(もちろん中間変数には指名検索数などもありますが、今後のnoteで説明します)。

売上が上がらない原因を認知度、配荷率、プレファレンスに分解することができれば、投資すべき施策とそうでない施策、施策でやるべき内容もすべて明確になってくるのではないでしょうか。私の重慶旅行での発見も、もう少し有用になったかもしれません。

おわりに

「中国市場は右肩上がりです。今がチャンス!」とお思いの人が多いかもしれません。全くもってその通りだと思いますが、無策でも商品が良ければ売上が上がったのは一昔前の話です。

今では、中国人消費者の理解を中心として、しっかりとマーケティング戦略を組み、メンバーが一丸となって実行しなければ成功率が上がりません。

消費者調査をしないという選択肢はオススメできない、逆に言うと消費者調査をするといいこといっぱいあるよ、そういう内容のnoteでした。

・中国人ってだいたい日本人と同じでしょ?
・消費者調査にお金をかけるなら広告するわ
とお考えの方は一度立ち止まって、「本当に今の状態で中国で勝てそうか」と考えてみてはいかがでしょうか。

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にょそ / 上海で働くマーケター
中国におけるマーケティングの現場や私自身の実践内容をもとにしたノウハウを共有します。 現在中国で売上が伸び悩んでいるブランド関係者はもちろん、今後中国市場で事業を検討している方、就職活動・転職活動中の方のためになる情報を提供していきます。株式会社unbot在籍中。