蓼科とおにぎりと梅干しと

昨年の12月から読み始めて、今日、ようやく読み終えた。
にょろにょろな私であるがゆえ、読み進めるスピードもかなり遅いのだ。

本書はひきこもりの主人公、麻生人生(あそうじんせい)の10か月間の成長を描いている。

母の失踪をきっかけにひきこもりから抜け出そうとする弱よわしくも、小さな勇気が切なく、この先、この主人公は生きていけるのだろうかと不安にさえ感じた。

祖母が住む蓼科を目指し、そこで出会う人々とのふれあいが彼を少しづつ成長させていく。正直、ひきこもりが長いと人と会うことすら怖く感じるものだ。

しかし、祖母がつくる温かい食事や田んぼ、蓼科という土地が彼を見守ってくれているのがひしひしと伝わってくる。人生(じんせい)だけでなく、異母兄弟のつぼみ。就職活動に悩み、ひきこもり寸前の純平もまたお米作りを通じて成長していく。

「お米の力を信じること。すなわち、自然の力を信じること。」

自然のたくましい力に触れることで3人の若者も生きる力を信じたのかもしれない。正直、たった10か月で人間ってこんなにもたくましく成長するものなのかと思った。
最後のページに到達すると、母との再会、人生(人生)と母との会話、その後の暮らしぶりはどうなったのだろうと期待に膨らむ自分がいた。

この本を通じて、コンビニで買うおにぎりの具はツナマヨからに変わった。梅には、免疫力UPや疲労回復の効果があるようだし、ほかの具材よりも食べ終えたあとに力が湧いてくる感じがする。

昔、田舎に住んでいた頃、海岸沿いのなんてこともない1本道に立っている石碑があった。父に東山魁夷という画家がこの場所で絵を描いたと教えてもらったことがあった。それ以来、TVや美術展で東山魁夷の作品を知る度に、独特の世界に魅了されてしまった。東山魁夷が見た蓼科の地、日本各地を描いたその場所をめぐる旅をしてみたい。


明日から読む本です!

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