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み空行く雲も使と人は言へど家づと遣らむたづき知らずも

昨日見た空が、とても綺麗だった。思わずカメラを構えてしまうほどには。

春が近づいて、青空の濃さが増した気がする。
朝はまだ色素の薄い、どこか眠そうな空の色が昼になるにつれて青さを重ね、正午には鮮やかで発色のいい水色へと変化する。


日差しを遮るように窓にはブラインドが掛かっている。席が埋まったオフィスは出勤した瞬間から暑さを感じるには十分なほどに空気がこもっていた。
たまたま席が隣り合わせた友達と2人、気分転換も兼ねオフィスから逃げるように外に出た。

「オフィスめっちゃ暑くないですか」
「やばいですあそこ。いつも暑い」

コンビニまでの道をゆるゆると歩き始めた時に、空が目に入った。
夕暮れ時で紫がかった空と、夕日の色を反映して幻想さを感じさせる雲。
まるで、新海誠作品のワンシーンを見ているかのようだった。

「空綺麗ですね。写真撮っておこう」
「ね〜オフィスからも見えるのかな」

そんな会話をしながら、各々小腹を満たすものを片手に自席に戻る…前に、ブラインドと窓を開けた。
都心の涼しい風がオフィスに流れ込む。

「やっぱり空綺麗ですね」
「わ、この写真エモくないですか」

"エモい"という言葉で片付けてしまうことがもったいないのは重々承知だが、暑いオフィスの熱気にやられていたその時のわたしは生憎その程度の言葉しか持ち合わせていなかった。

あれから作業が一区切りついて窓を見やる頃には、空は深い紺色へと変化していた。
昼と変わらないオフィスの明るさが少しだけ憎かった。


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きっと空の見え方は心の状態によって変わるんだと思う。
よく眠った昨日はそれこそ純粋に見れた気がする。

今日もどうか、空を綺麗だと思えますように。
綺麗な空に気付ける自分でいられますように。
願わくは、美しさを共有できる人が側にあらんことを。

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