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エンジニアの評価制度について

数年エンジニのマネージャーをやっていく中で、長らく考えてきたテーマで、 何かしら形に残しておきたいなと思い、現時点での考えの整理を込めてまとめようと思います。

評価制度は何のためにあるのか

究極的には事業最大化の為です。

まず組織と個人の関係として、組織の中の個人は、組織として掲げているビジョンや事業に対して必要な人員や共感した個人で構成されているはずです。 その人員が持続的に高いパフォーマンスを発揮するためにあるのが評価制度だと考えています。

つまり大上段にあるのは組織の成功です。
組織の成功の為に必要な個人に対して、 長く高いパフォーマンスを発揮してもらいたいので 評価制度を整えたり、福利厚生を手厚くしたりしているという順番です。
※まれに社員の幸福を最優先としている企業もあるとは思いますが、例外的な事業形態だと思うのでそういった例は除外して考えます。

個人がより力を持つ時代

情報化社会が浸透して久しい現代では自動化やツール化により低い付加価値の業務がどんどん減っています。 さらにある時点での生産的な業務もツールの進化により付加価値が低くなっていきます。それにより個人はより付加価値の高い仕事をこなす事が求めらるようになってきています。

特にエンジニアの世界はそれがより顕著に現れており、極端に言えば「能力の高いAさん」は「能力の低いBさん」の100倍以上の生産性なんてことがざらにありますし、そもそもAさんには出来るがBさんには出来ないということもざらにあります。日常的に起こるレベルで。そういう状況も踏まえて評価制度は変化してきています。

従来は、社歴による能力の差と個人による能力の差を比較したときに社歴による能力の差の方が大きかったのだと思います。そういう状況下では年功序列の仕組みは理にかなっています。

ただし、社歴による差よりも個人の能力の差の方が圧倒的に大きくなった今では適切な能力評価というものが必要となります。

個人の能力は何で評価されるのか

端的に言うと市場が全て決めます。

絶対値によって決まるものは無いと言っていいでしょう。仮に絶対値に見えるものがあるとすると、相場が安定していて需要と供給の変動が少ないだけと考えています。

例えばゲーム業界でよくある例で見ると、Unityでの実装経験がある人が必要という状況だったとします。

市場は需要と供給で成り立つので、需要が高まりUnityが出来る人が必要という状況であれば評価は上がりやすくなります。逆に需要が下がった時、例えばUnityよりも便利なツールが出現しそのスキルが必要なくなったとなれば逆のことが起こります。

供給の面で考えると、例えばあらゆる専門学校でUnityが出来る人材を大量に市場に解き放ったりすると、供給量が増えるので評価は下がりやすい環境になります。

ただし注意が必要なのはここまで単純化された単一のスキルのみで市場が可視化されていることは殆どないという点です。
特に日本ではジョブ型雇用というよりメンバーシップ型雇用の方が強い印象ではありますし、より総合的スキルという色が強いと思います。

市場価値と事業価値

評価を市場が決めると言う話でしたが、そうすると組織の中での評価は不要で転職活動をしてみてその時に出されたオファー金額をもってして、評価を決めれば全て解決なんじゃないかという疑問が出ます。(サイボウズさんは割とそれを地で行くような評価制度だったはず)

ただ自分としてはその評価の方向性には反対の立場を取っています。組織の論理として人を雇うという時の金額で考慮するポイントとして大きくは以下の2つだと思っています。

1. その人を雇うのにいくらかかるのか(市場価値)
2. その人を雇っていくら利益が出るのか(事業価値)
「どういう会社」の「どういう事業」にとってその市場価値の人を雇う価値があるのかは冷静に見極めて考えないと組織のガバナンスが保たれなくなります。

すごく極論ではありますがWebサービスを運営している企業がエンジニアというポジションで年俸1億円のプロ野球選手を雇うこともしないでしょうし、雇ったとして1億円出さないはずです。プロ野球選手が1億円出しても雇用されるのは野球のスキルによって1億円以上のお金を生み出すからなのです。

これを踏まえての自分の中での個人の能力をどう決めるのかという問いへの答えは、「事業価値を持つ人材に対して市場価値を払う」となります。

理想と現実のズレ

上記で述べたことはあくまで理想論です。リアルな世の中ではここにオペレーション上の問題がついて回ります。

- 事業価値をどう評価するのか
- 市場価値をどう評価するのか
- 評価者によるズレをどのように防ぐのか

この課題の解決こそが、評価制度という理想という抽象的なものを具体的なものに落とす実現していく行為と同義なのです。

理想と現実を埋めるオペレーション

ここまで理想論について話してきましたが、じゃあどうやって実現するのかについて自分の考えを述べていきます。

事業価値ギャップの埋め方については、事業計画及び人員計画でコントロールします。こういうスキルを持った人がいればこれだけの金額を生み出せるはずだという仮説のもとそういう人が何人必要かは計画できます。(採用できるかはわかりませんが。)例えば、オンプレサーバーからクラウドサーバーへの移行を経験したインフラエンジニアがシニアが1名欲しい。新規サービスを検討していてインフラレイヤーからフロントまで一通り理解できてより確からしい計画を立てられる人が1名必要。など詳細な要件がわかってなくても要件が作れる人というような計画自体は建てられます。あとは、その人物像の市場価格を探り、そこに投資する意思決定が出来れば問題ありません。

市場価値ギャップの埋め方については、事業価値が明確になっていればそう難しくありません。事業価値が明確になった時点でどういうスキルが必要なのかが明らかになってるので、市場価格もざっくり推測できます。出来なかったとしても人材エージェントやツテをたどればだいたい把握できることが多いです。

評価者によるズレについては、上記2つと違い一定企業が大きくなった時に発生する問題です。この問題を回避する方法としては、基準を作ることに尽きます。XXXができる人のジョブグレードはA, YYYができる人のジョブグレードはA'のような形です。この基準づくりこそが非常に難しく厄介なのですがここも事業価値から落とし込んでいくべきだとは思っています。

そう考えていくと、エンジニアとマネージャー、ピープルマネージメントと組織デザインなどは全て別の事業価値なので評価テーブルを分けるのが概念としては自然だと思っています。

最後は少し駆け足でごまかした感はあるので、じゃあどういう基準を作って社内のガバナンスを保っていくのが正しいのかは今後も科学していくに足りるテーマかなと思ってるのが今時点での考えです。おわり。

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