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会話のネタになる脳科学のうんちく大全集

(別冊Newton「脳とは何か」を参考に執筆。)

大脳皮質は知覚・思考・運動の制御を行っている。
大脳基底核は、おもに快の感情に影響している
視床には嗅覚以外の感覚情報が一旦集積される
・視床の下ー橋、延髄は呼吸・心拍のリズムなどの生命維持活動を行う
小脳は眼球運動、手足の動き、姿勢などの調整を行う。

記憶編

・記憶の多くは大脳皮質に保存されている。記憶を形成する際に重要となるのが海馬という部位で、五感と体性感覚を集約し大脳皮質に書き込むという記憶の増幅器の役割を果たしている。

・記憶が形成されてから読み出すには数か月間の間は海馬による増幅が必要だが、一定期間が過ぎると海馬の助けがなくても記憶が引き出せるようになる。繰り返しの学習によってある種の”慣れ”が生じるのはこのためである。

・言葉の意味や数式といった”意味記憶”は、大脳皮質の神経細胞のネットワークとして保存されている。同じことを繰り返し学習・記憶するとこのネットワークが強化され、簡単には忘れなくなる。

・意味記憶に対して、スポーツや自転車の乗り方などに関する記憶は”手続き記憶”と呼ばれている。手続き記憶のネットワークは大脳皮質ではなく主に小脳にあるとされている。小脳に蓄積されるタイプの記憶は海馬による増幅を必要としない。

・道具を使う、概念を用いる、言語を操るという機能は縁上回、角回と呼ばれる大脳皮質の側面部にある部位が大きく関わっている。サルに道具の使い方を学習させると10~20日間で使い方を覚えるが、その間に第二体性感覚野と呼ばれる部位が成長することが知られている。道具、概念、言語といった人間らしさの起源はもとは体性感覚野の急激な発達と機能分化にあったと考えられる。

脳の活動編

・脳の活動パターンから視覚野の情報を取り出す研究が進んでいる。神谷教授はfMRIの画像から視覚野の活動を「パターン認識アルゴリズム」という手法で分析し、被験者が見ている絵を脳活動との間にある程度の法則性を見出すことに成功した。また、その情報から被験者が見ている絵を再構成することにも成功した。神谷教授は現在「夢」の映像を活動パターンから取り出すことを目指している。

・意思決定には、潜在的な脳活動の多くが影響を及ぼしている。例えばCMを見たのちに実際にその商品を買うと、被殻と呼ばれる欲求・快楽を制御するのにかかわる部位が活性化する。また、物の価値判断が関わる際には右前頭背外側部が活性化する。缶コーヒーのロゴマークを見た際にも被殻が活性化することが分かっている。

睡眠編

・アウグスト=ケクレは原子がヘビの様に連なって尾に噛み付いた夢を見たことをきっかけにベンゼン環の化学式を発想した。夢を見ている際にひらめいた、という天才的な人物の証言は多い。レム睡眠時には脳の活動が活発となり、覚醒している際には不可能な神経伝達が可能となる事から覚醒している際にはなかなか結び付かない記憶同士が結合することによって新たな発想・アイデアにつながるのではないかと考えられている。

眠る前に集中して考えていたことは睡眠中に強い記憶となって保存されることが知られている。寝る前に絵の描き方・プログラミングのセオリー等を集中して考えると記憶に良い影響があるかもしれない。

直感編

・プロ棋士の多くは次の一手を理屈ではなく直感で決めている。盤面をプロ棋士に見せると、一次視覚野の他にも楔前部(空間の認識・個人的な体験)、大脳基底核という、進化的には比較的古い部位の脳が活性化することが分かっている。大脳基底核の中でも、直感に大きく関わっているのは尾状核という部位である。

・田中博士は訓練を重ねるにつれ大脳皮質で行われている作業は大脳基底核に移され、それによって無意識で素早い思考が可能になると考えている。大脳基底核を巡回している神経回路が再び大脳皮質に再接続されると、これが直感として認識されるのである。

・伊藤正男博士の「小脳仮説」ー直感が生じる部位は大脳基底核の他にも小脳にあるとする仮説。脳内の記憶は海馬によって増幅されたのちに前頭前野以外の大脳皮質に分散されて記憶されていく。前頭前野はこれらの記憶を引き出しながら、対象物を分析したり判断を下したりする。このような思考を繰り返していると、大脳皮質の記憶は内部モデルとして小脳内にも保存される。こうして、大脳皮質の代わりに小脳を用いた無意識で素早い反応ができるようになるという仮説である。

天才編

天才的な能力と精神の病気には関連が見られる。例えば作家が精神病全般に罹患している割合は一般人の4倍以上もあり、気分障害を患ったことがあるという人は80%にも上る。精神的な病を発症することによって、かえって普段は働いていない神経回路の結合が起こりやすくなっているのではないかと考えられている。


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