歯の妖精 A tooth fairy
私には中学1年生の娘がいる。娘は2歳から9歳まではアメリカ東部で暮らしたので、幼少期に学ぶ童謡や習慣はほとんどがアメリカで吸収してきたものだ。したがって、クリスマスにはエルフも来るし、サンタクロースのために牛乳とクッキーを用意しておきプレゼントは枕元ではなくクリスマスツリーの下に置かれる。春といえば桜ではなくイースターの卵とひよこやうさぎのイメージ、といった感じだ。
本帰国して3年程が経過したが、サンタを今も信じている娘は歯の妖精、tooth fairy の存在も信じている様子。私の日本で過ごした幼少期は、抜けた乳歯は天井裏に置くと丈夫な歯が生えてくる、と親から聞かされていたのだが、アメリカでは抜けた乳歯を枕元に置いておくと歯の妖精がそれを持ち去り代わりにお金を置いていくそう。
乳歯が抜ける度、
「どうしよう、取っておくべきか持っていってもらうべきか?」
「ほんとに来るかなぁ?」
「ほんとはママだったりして?」
そんな会話をした直後なのに
「お手紙書く!サイン下さいってお願いしてみる!」
などと大騒ぎ。疑いつつも信じているのだ。
先日、最後の乳歯が抜けた。それは最後だから歯の妖精には渡さず記念に取っておくそう。こうしてもう妖精に会う機会はなくなった。妖精の話をすることももうない。
娘がいつまで信じるのか、それとも時が経つにつれて忘れて思い出すことさえも無くなるのか。娘の成長を感じつつ、少し切なくもある。
いつか娘の子どもがその歳になったら。まだ遠い先の話だがその時はこの話を思い出して、娘が忘れていたら語って、頭の中だけでも娘の子ども時代に戻りたいな。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?