人が闇に堕ちる時
かつて、ウォールストリートからローフードシェフへと、華やかな転身を遂げたサルマ・メルンガリス。
マンハッタンのグラマシーパークエリアにある、ローフードレストラン『Pure Food and Wine』のオーナーとなった彼女は、その美貌と、ウォールトン卒という経歴で注目を浴びた。
ちょうど、私がニューヨークに渡った2006年頃から注目を浴びたローフードをメジャーにしたのは、彼女と『Pure Food and Wine』の存在が大きかった。
ガーデンが気持ち良いこのレストランには、気候がよくなるちょうどこれくらいの時期に、ブランチに行って、サラダとスムージーを楽しんだものだった。
そんな『Pure Food and Wine』が、経営難で、従業員の賃料未払いを起こして、一時閉店.....というニュースが流れてきたのは、昨年のこと。
オーガニックにこだわる食材の仕入れ、高騰する家賃、人件費がかさみ、ニューヨークでヘルスフードビジネスを営むのは容易ではない
という彼女のメッセージを読んで、そりゃあもっともだ.....と思ってから、約一年。
先日、耳を疑うニュースが飛び込んできた。
サルマが、夫と一緒にテネシーのモーテルに潜伏しているところを逮捕されたという。
なんでも、投資家から集めた80万ドル(約9000万円)を含む、2ミリオンにも及び会社の資金を、個人の口座に移し、ギャンブル、ヨーロッパ旅行、時計、ウーバー代などに使用した疑い。
ギャンブルにつぎ込んだ額は1ミリオン以上だそうで、彼女がもともとギャンブル好きだったのか?それとも8歳年下の旦那の影響なのか?
詳細は分からないけれど、彼女ほど美人で賢い女性が、こんな闇に堕ちるなんて、ティンズリー・モーティマーが、パームビーチに移り住んでで、10歳年下の男に散々な目に合わされたゴシップよりよほど信じがたい。
逮捕されたきっかけは、モーテルからドミノピザをオーダーしたことだそうで
ヴィーガンシェフ、チーズピザをオーダーして逮捕
なんて散々揶揄されていたけれど、逮捕時の写真は、肌も目の輝きも、かつてのそれとは同一人物とは思えない。
会社の資金を横領してギャンブルと逃避行、なんて、今時NHKのドラマにもならなそうなほどオールドファッションだけど、そんな生活を一年も続けるには、とことん病んだ精神を、お酒かドラッグでごまかさないと、とてもできないと思う。
『再起』という言葉が好きなこの国ならば、『横領・逃亡・そしてギャンブル中毒からの復活』なんて感じの本でも出して、スピーカーとして活躍するくらいの再チャンスの可能性はあるだろうけど、専門家によると、サルマは最大15年の懲役の可能性があるという。
良く言われることだけど、始まりは、きっと些細なことだったんだろう。
タチの悪い男に出会って心を許したことだったのかもしれないし、グリーンジュースをアルコールに変えたことだったのかもしれないし、会社のお金でウーバーに乗るようになったことだったのかもしれない。
そんな小さな”魔”をうっかり居座らせたことで、雪だるまのように大きな過ちを生んでしまうことってきっとあるんだと思う。
自分は絶対そんなことない、って言い切るだけの自信がないから、小さな魔に負けないようにしよう、と心底思った。
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