Vtuberという職業は楽なのか

最近Vtuberが雑談配信で1億円を稼いだというニュースが世間を賑わせた。世界のスーパーチャット(投げ銭)ランキングを日本の一部Vtuberが占めている状態なのである。

該当記事のコメント欄では、たかだか絵を付けた雑談配信で1億円とは楽な商売だというコメントがいくつか見られた。もちろん決して楽ではない、楽だと思うならやってみれば良いというコメントも見受けられた。実際のところVtuberは楽なのだろうか。

Vtuberのメリット、楽であると思われている理由

世間の一部で楽だと思われている理由について考える。ここからは楽だと思われているVtuberのイメージ、メリットについて列挙する

1つ目、顔出しの必要がない。Vtuber一番のメリットと言えばこれだと思う。顔出しは多くの人にとってリスクが高い。本業があるなら会社にバレる危険性もあるし、自身のルックスに自信がなければ出来れば顔出しは避けたい所だろう。しかしVtuberであれば顔を出す事無く、表情を視聴者に伝えることが出来る。またモデルが良ければ可愛い、かっこいいとの理由である程度の視聴者を獲得できる可能性があるのもメリットだろう。

2つ目、Vtuberという流行コンテンツに乗っかることが出来、それを目的とした視聴者へターゲティングできる。生放送や配信において視聴者へのリーチは大きな課題だ。多くの場合ゲームのタイトルであったり、流行りのコンテンツに乗っかる事で視聴者の興味をひく。Vtuberであれば放送名にVtuberと記載することで、検索にひっかかるようにする。Vtuberというだけで興味を持ってもらえる多少のバフ効果があるのは事実だろう。

3つ目、これはオーディションという激戦を制した一部のVtuberに限った話だが事務所(いわゆる箱)に所属することで箱推しの恩恵を受けることが出来る。某有名事務所などでは初回放送で登録者が10万を超えている。個人Vtuberでは絶対に無しえない事だ。事務所の名前がそのままターゲティングのツールにもなるしブランドにもなる。

Vtuberが楽ではないと考える点、デメリット


1つ目、初期費用が高額である事。最近ではコストを抑えるためにLive2Dによるアニメーションモデルがメジャーとなっているもののそれでも高額である。安い物であれば数万円から購入出来るが、値段相応というのが正直なところだ。モデルが粗悪であればそれだけで視聴意欲を失う。有名なVtuberを思い浮かべてみて欲しい。みな共通してモデルのクオリティが高いはずだ。Vtuberとして成功したいのであれば有名絵師に10万円以上のモデルを依頼してようやくスタートといった所だろう。普通の生放送に比べ追加でフェイストラック機能の備わったハードや、モデルを動作させるソフトウェアが必要になるためコスト面での敷居は通常の放送に比べても高いと言える。

2つ目、Vtuber正確にはYoutubeそのものがレッドオーシャンである点。少し視野が広がってしまうが今のYoutubeの競争が激化していることはご存知であろう。有名人が続々とYoutubeに参入し、視聴者をどんどん奪っている状態なのだ。Vtuberを始めたとしてもすでに存在する大手Vtuber達や、こういった有名人から視聴者を奪われないコンテンツ作りをしなければならない。また国内においては視聴者数に対してVtuberの数が溢れてしまっているのが現状である。有名事務所内でも上位と下位の差はますます広がっており、視聴者の取り合いとなっている。数年前の黎明期であれば大いに可能性はあったのかもしれないが、今現在の敷居は非常に高いものとなっている。

3つ目、個人勢と企業勢とで埋めることのできない大きな差がある点。Vtuberのコストが高い点については1つ目に述べた通りだが、将来的にもこのコストという課題は大きくのしかかってくる。有名な事務所ではある程度の人気を獲得することで3Dモデルを提供してもらえる仕組みがある。3Dモデルを得られると活動の幅はより一層広がる。しかしながら個人勢が3Dモデルとそれらを動かす環境を整えるのは非常に難しい。企業勢は数億円から100億円もの資金を用意してマーケティングや設備投資に費やしている。個人が敵うはずがない。資金もマンパワーも比べ物にならない。それならば企業に入ればいいのではと考えるかもしれないが、今現在は非常に狭き門となっている。理由としては国内Vtuberをこれ以上増やしても事務所内での視聴者の取り合いにしかならず事務所の利益にならない点、スキャンダルのリスクを負いたくない点であろう。特にスキャンダルのリスクを回避するためか、有名事務所のオーディションではコネが重要との話もある。すでに所属しているライバーが新人の内面を保証できるのであれば事務所も安心して契約出来る事から正しい選択なのかもしれない。そもそも有名事務所に所属するにはそれなりのキャリアを求められる。数年前のように全くの配信素人が飛び込める環境ではないのだ。

Vtuberの業務は楽なのか

稼げているVtuberの業務は私が知りうる限り、定期的な生放送、放送の準備(企画、サムネ、案件やコラボの打ち合わせ、素材の制作)、事務所での撮影、運営とのミーティング、動画編集、SNSの更新、案件への出演、ボイトレ、ダンス(事務所による)などである。私自身もゲーム実況で生きていけるというのは心の底から羨ましいと思っている。しかし、生放送を見る限り彼女らの業務内容が簡単ではあっても楽であるとは思わない。売れっ子Vtuberであれば割高な収入を得られているのだろうが多くの人達が口をそろえて寝ていない、体力的精神的ににきつかったと漏らしている。多くのVtuberが休止や引退を経験している事から決して楽ではないという推測は間違いではないだろう。特に誹謗中傷やアンチコメントは精神に極度のストレスを与える。生放送という性質上、言葉や態度にも気を配らなくてはならないし、機嫌が悪くても喋り続けなければならない。少しでも何かをしでかせば炎上し、追い込まれてしまうのだ。普通の人間であればナチュラルにメンタルを壊すであろう。

まとめ

Vtuberを名乗ることは簡単である。モデルを用意してVtuberとして動画投稿、配信をすればいいだけだ。しかしそれで稼ぐとなると難易度は桁違いに跳ね上がる。今現在有名なVtuberはほとんどが以前に配信者としての長いキャリアを持っていたり、歌唱力があったり、ゲームの実力がある場合がほとんどだ。中にはまだVtuber市場が今ほど盛り上がっていなかった頃に滑り込み、人気を勝ち取った人達もいるだろうが以前とは状況が大きく異なっている。Vtuberであれば無条件で成功できるなどという考えは無謀であると言わざるを得ない。それなりに有名なVtuberですら兼業であることはざらだ。稼げているVtuberは氷山の一角で、世間に全く認知されていないVtuberは何万といる。

結論

極一部のトップVtuberは業務内容の割には貰っているかもしれない。しかしその1%にも満たないトップになれるだけのスキルを誰しもが持ち合わせているだろうか。成功できなければ収益は一切ない、給与の保証もない。Vtuberの仕事はフルコミッション営業のようなものだ。仕事としてのVtuberは楽ではない。

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