SCビジネスフェア2023有料セミナーのレポート(前編)
少し遅くなりましたが、2023年1月25日~27日に開催されていたSCビジネスフェアに行って、有料セミナーを受講してきましたので、簡単にレポをしてみようと思います。書いていたら大変長くなってしまいそうなので、前編後編で分けてアップします。(後編のアップまでは時差があろうかと思います。少々お待ちくださいませ…)
1.「三井不動産の持続可能なまちづくりと商業施設の役割」
まず最初のセミナーは、先日社長の交代と自身の会長への昇格を発表した、三井不動産㈱社長の菰田 正信氏。前半は三井不動産の取り組みの共有、後半は関西大学の白石教授との対談形式でした。
三井不動産は、言わずと知れた日本の総合デベロッパーであり、代表的な案件として日本橋やミッドタウンシリーズ、商業施設では「ららぽーと」「三井アウトレットパーク」を主に展開しています。
まず最初にあったのは三井不動産のロゴの「&」マークの紹介。
この&マークの考え方は1991年から言っているそうですが、現代の考え方を先取りしているようにも思えます。
よく三井不動産の使う用語として「経年優化」という言葉も紹介されました。これは経年劣化の逆で、年を経るごとに価値が向上する、ということを表した単語です。この思想をもとに、完成で終わることのない街づくりをしている、とのことです。
商業施設に関連する話として、ミクストユース、つまり多機能を混合して備えた街づくりについても触れられました。三井不動産は総合デベロッパーとして、商業、住宅、物流、ホテルやエンターテインメントなど様々な業種の不動産に携わっていますが、それらを場所に応じ組み合わせることで、先の「経年優化」を実現する街づくりにもつなげているようです。
物件の紹介としては、日本橋の街づくりの紹介が印象的でした。後半の対談の中で出た話ですが、日本橋で進んでいる首都高の地下化について、決して少なくない多額の投資をしてでも日本橋の空を取り戻すという取り組みを行うことの理由を「東京が世界で一番輝いていた時代(江戸時代)を取り戻すという、こだわり」と表現していました。勿論事業性あってのことだとは思いますが、このように「思い」を中心に説明できる経営トップは不動産業界には多いものの、これだけのスケールのものでもそう言い切れるのは、やはり業界の雄である三井不動産だなぁと思わされます。
また、柏の葉キャンパス周辺の開発においては、課題先進国としての日本の解決策を作り上げ、課題解決先進国へとしていくのだ、という考え方も印象的でした。ネガティブ要素と捉えられがちな日本の少子高齢化を、このような形でポジティブに捉え直すことができているのは、同業として参考にしたい点です。
後半の対談は、高齢社会と都市環境をテーマに研究をする白石教授との対談でした。
先程の柏の葉キャンパスの事例ではないですが、商業施設は老化を防ぐのでは、という議論が興味深かったです。
その中では、70歳を超えても週に3回は行きたくなる場所、という考え方でSCを運営している、という話が出ました。よくSCの来店頻度は月に1回だとか、2週に1回だとか言われますが、たしかにリタイア済みの高齢者にとって見れば、週に数回外出するきっかけになるような施設は、身体のみならず精神の健康からも必要とされているように思います。SCの現場運営をイメージすると、そこまでの高頻度来客に耐えうる施設運営はなかなか苦労しそうではありますが…。
OMOの議論では、やはりリアルかECかという二元論ではなく、客は好きなときに好きな方法で買い物をするものだ、という認識が示されていました。その中で、SCを始めとしたリアルの場の優位性は、客に偶然性を提供できるか、という点であるというのも示唆に富みます。先程の高齢者の来店頻度の話ではないですが、ECとくらべて偶然に商品との出会いが演出できるリアル店舗ですが、頻繁に来館する客に対しても同様に偶然を提供できるか、というテナントMDの視点、また偶然にたどり着いてもらうだけの快適性の提供、という視点で、SCに磨きをかける必要性がある、ということを改めて見直すべきなのだろうと考えます。
2.①「ZOZOのOMO戦略」
2番目の講演は(株)ZOZO ブランドソリューション本部 本部長 兼 想像戦略室 室長の風間 昭男氏。
ZOZOはZOZOTOWNの運営を中心にECサイト・アプリの運営が事業の中心ですが、今回話に上がったのはOMO、つまりオンラインとオフラインとを融合・混在させていく戦略についてです。
ZOZOは、コロナ禍においてリアル店舗が営業できない・営業しても売上が取れない状況にあることを見るに、ファッション業界そのものの崩壊を恐れ、実店舗への送客を中心としたファッション業界の支援策を実施したそうです。今回の公演で取り上げられていたのはその取組です。
その取り組みのターゲットは「ZOZOTOWNをカタログとして使う客」と、「ZOZOTOWNに出している在庫は切れているが実店舗にも在庫を持っているアパレル企業」、この2つだったようです。
それらに対し具体的に何をしたかというと、ZOZOTOWN上で実店舗在庫の確認、実店舗在庫の取り置き機能を提供した、ということだったそうです。今でこそユニクロに代表されるようにアプリ上で店舗在庫を確認、あるいは(オンライン在庫の店頭取り寄せを含めた)商品取り置きができるというのは各社行っていますが、コロナ禍が始まった2020年の前半にこの機能をプラットフォームとして提供したのは、かなりの良い影響をもたらしたのではないかと想像します。(当時、このような取り組みがあると意識していなかった自分が憎いです。。)
この取組のポイントは、ZOZOTOWNの売上拡大に直結しないというところだと考えます。店頭在庫の確認機能だけを使った客は、当然に店頭で決済=売上が店頭に付きますし、在庫確保の場合も店頭決済の仕組みにすることで、いずれも売上はZOZOTOWNにはつかないスキームだそうです。
(サーバー利用料のようなものは取ったそうですが…)
しかしこの取組をZOZOがボランティアでやったかというとそうではなく、ではどこにやる意味があったのかというと、「ファッションのことを考えるならまずZOZOTOWNのアプリを開くか」という消費者の思考のポジションを取った、ということです。
これは大変重要で、今まではECサイトとしてしか認識していなかった人が、リアル店舗への買い物でもZOZOTOWNを開くとなれば、当然にECサイトの利用も増えてこようというものです。
更に、よりリアルな取り組みとして、”niaulab”という取り組みも紹介されていました。このサービスの面白さは、公式サイトの紹介に譲ろうと思います。
この”niaulab”を通じて、日本のファッション提案力を更に向上させ、アメリカ追従がお決まりになっていた日本の小売業を世界の最先端に持っていきたい、という話もあり、ここも「思い」を持って事業に取り組んでいる企業姿勢が見て取れました。
2.②「Makuake流『顧客体験価値』の作り方 ~リアル×オンライン~」
→後編に記載します!
3.「有力テナントからNEXT SCへの提言」
→後編に記載します!
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