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卵料理とわたし

卵料理は本当に沢山ある。卵が主役でなくても、フライやハンバーグ、ミートローフにも欠かせないし、洋菓子を焼くなら、ほぼ必需品。

家庭では、もう一品というときに重宝する素材。そして、卵料理の密かな派閥がある。目玉焼きソース派と醤油派が一つの家庭にいる場合、水面下での争いが行われている。(かも?)私は、塩、胡椒がかけてあるから、何もかけない派です。どうも私の派閥は地味らしく、だれも声高に「味付けしてあるから、何もいらないよ」とは言わない。

卵焼きについては、誰もが認める関西風のだし巻き卵派と関東風の甘い卵焼き派という派閥がある。そして第三勢力として、塩味の具材入りというのが台頭しています。チーズ入り、明太子入り、台湾風の切干大根入り、スペイン風のオリーブオイル揚げのじゃがいも入り。

私は、この第三勢力派なのです。高校生のころ、お弁当の卵焼きにチーズ入りをリクエストしていました。毎日お弁当箱をかばんから出しながら、「今日のお弁当も美味しかった。明日チーズ入りの卵焼きがいいな。」なんていうお願いをしていたのです。母も喜んで娘のおねだりに応えてくれました。今思えば、お弁当のネタに困って、私の言うことを聞いていたのかもしれませんが。

実は、姉もお弁当を持って行っていたのです。そして、姉は甘い卵焼き派だったのです。私と違って食べ物に関心の高くない人なので、お弁当についてのコメントなんてほぼ言わないし、姉が好きなのは甘い卵焼きだったのが判明したのは、姉も私も所帯を持ってからでした。

母も私もびっくりしましたが、もう姉のお弁当を作る機会はありません。「塩味のが食べられない訳じゃないし、氣にしていなかったから。」と本人は言うのですが、母は「悪かったわ」と申し訳ながっておりました。

卵料理というと、以前読売新聞の論説委員の方が、奥様の目玉焼きを絶賛されておりました。新婚の頃からフライパンに卵を割り入れて、ふたをして、猫にえさをやって、と神経質にならずに作っているが、絶品だと。毎朝卵焼きを食べると、新婚のころの思い出がよみがえって、幸せな気持ちになると。いい話だな、と覚えておりました。

何十年か経った時、この奥様が亡くなったのを知りました。残されたご主人は、もうあの目玉焼きを食べることもできないし、幸せな記憶が蘇ることもないのだと、切ない気持ちになりました。

そんなに想っていただいた奥様は幸せだったと思います。きっと周りの方も、そういって慰めているのだろうと思います。

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