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背景が見える食べ物

土曜日の朝が楽しみ。無農薬野菜を育て、かつ家庭菜園を始めたい人の為に、サポート付きレンタル農園のような活動をしている方々の、産直市場があるから。出勤前に顔を出して、目についた野菜を一通り買い、「どうやって食べると美味しい?」というような話をするのも愉しい。

鎌倉には若宮大路ぞいにレンバイと言う、農家の方の持ち寄り市場もある。季節の普通の野菜の他、イタリアンやフレンチのシェフに依頼されて作った野菜の、余剰分を売ったりしているそうで、バラエティー豊か。ただ、職場からは遠いのと、出店の方が交代制なので、偶に行く私には顔なじみがいないのです。

イタリアでは生で食べる人もいるというフェーベ(ソラマメの一種)や、真っ白いナス、新鮮で筋っぽくないフェネル、ズッキーニの花、結球しないタイプのイタリアキャベツ(カーボネッロ)など、作ってみたい・食べてみたいと思っていた野菜を、生産者情報を含めて手に入れられるのは、本当にありがたい。

今、アジアで野菜などをネットで紹介して販売する、というのが大ヒットしてのは、こういう事なのかな、と思っています。昔ながらのマンパワーの市場はどんどん姿を消し、大型スーパーに取って代わられています。人件費削減のため、品出しやレジ位しか従業員がいない状況で、売られている食材の背景や食べ方については、POPを見るしかないのです。味気ないですよね。

「蜂蜜を食べる熊の、蜂蜜を食べる方の手」とか、「ドングリを食べて育った豚」とか、成育歴のわかる食材は、昔から人気です。野菜も、育て方や品種についての説明つきの方が、特別感があります。生産者の顔が見えるものは、安心感があるものです。

黙って提供された料理よりも、食材や調理法についての説明があった料理の方が、特別感があります。外食の時ばかりでなく、ご家庭での食事の時も、「これは、イタリアでは煮物につかうキャベツなんだって。前は炒めて、固いな、と思ったけど、スープにしたら美味しくなったよ。」という一言が添えられると、ご家族の興味を引くことになりますね。

食育と言う言葉が言われるようになって久しいけれど、そのスタートはこういう声掛けではないかと思います。それから生産者へ目を向け、生産者と料理をしてくれた人への感謝に繋がってゆくように思います。

仕事で家族の時間が一緒にならないなら、メモを添えるとか、気持ちだけでも寄り添うようにしたいものですね。自分の為に、誰かが心を込めて作ったものだ、と感じることは、自分に向けた心を感じることと同じです。

一人暮らしの人ならば、「食事をする」ということを忘れてはいけませんね。「食べればいいよ」という考え方だと「餌を食べる」ということになってしまいます。これは自分を粗末にすることになってしまいます。毎回は無理なら、出来る時でいいから、食材を選んで料理して、きちんとテーブルセッテングして、食事をしてください。自分を自分が大事にするために。自分を大切にできない人は、他人を大切にすることもできないのですから。


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