見出し画像

猟師に聞けなかった事





午前中、買い物に行く途中で猟犬を見かけて車を停めた。
イングリッシュセッターだ。

犬は、捕まえた獲物を大切そうにしながら、
時折 見渡しては「クゥーンクゥーン」と鼻を鳴らし、悲しそうに そして嬉しそうに飼い主さんを待っている...
だが周りには気配がない。
1時間程、その場から離れ再び戻るが、飼い主はまだ来ていない

早く飼い主さんに その獲物を届けて喜んで貰いたいのであろうその姿を見て、見ぬふりは出来なくなってしまっている。
シーズンが終わると猟犬を...等の嫌な情報が頭を過ぎる。

さらに1時間後、保護する準備をして再び犬がいる場所へと向かう。
犬の姿はなかった...
獲物がなくなっていれば飼い主さんが迎えに来たのだ!! と思ったが 獲物は力無くそこに横たわっている。

姿の見えない犬を探し始めて10分位経った頃 1台の車が停まってこちらを見ている。
きっと この畑の地主さんが 敷地に侵入した事を叱りに来たのだ、
いくら犬を保護する為とはいえ、人様の敷地であることには間違いはない、夢中になってたなんて通用しないだろう、「やらかしたわ…」 「終わったわ...」と絶望した。

車から降りてきたのは、慌てふためいた年配の男性の方、猟師らしき格好をしている、
「も!!もしや!!」
「こっ こんにちわー」くそビビりながら挨拶をすると、
「この辺で犬見かけなかったかい?」と半泣き状態で言ってきた

「飼い主きちゃぁぁぁぁぁ!!」との思いは内心に留めて起きながらも、興奮ダダ漏れの状態で、犬の特徴やその時の状況を 抑えきれない感情のせいで早口気味に説明し 情報を共有した。
猟師は再び犬を探すと 急ぎ足で西の方向に向かったので、私は東側を探すことにし車をゆっくり走らせる。

2、3分周りを探索しながら進むと 1件の家に差し掛かった、そこには犬が1匹、庭の外れに繋がれていて やたら吠えてる。
その先を見ると、吠えられ行く手を阻まれ しょげてるあの猟犬の姿が!!!
「居たああああっ!!」
慌てて車を停め 保護しようと持ち込んだリードを片手に猟犬に近づいて行く。
飼い犬に そこを通してくださるようお願いすると スっと身を引いてくれたので感謝を述べつつ縄張りであろう敷地を通らせて頂く。

猟犬にリードを繋げて車の方へ戻ろうとすると、飼い主の嗅覚なのか 西の方面に探しに行ったはずの猟師が突如現れ その猟犬の名前がラッキーだと言う事を知った。
涙の再会である。

猟師は猟犬の身体に付いた 枯れ草やイノコツジを取ってあげながら 安堵のこもった声で状況を語り始めたが 地名が分からない事と猟師の専門用語で ほぼ何言ってるか解らなかった が
どうやら 弾が急所を外してしまい 逃げまくった獲物(雄の雉)を山向こうまで追いかけて行方知れずになったらしく あの手この手で探していたらしい。

猟犬が通り過ぎようとして阻まれていた家のご主人も交えて 一通り話の終わりに ラッキーを叱らないで欲しいと伝え、日を改めてお礼がしたいという事を丁重にお断りし 荷台に乗せられドナドナしてるラッキーを見送った。

捨てられたんじゃなくて良かったと 飼い主に無事再開出来た事に とてつもなく感動して足を1歩踏み出すと 靴がやたらと重い。
靴の裏を見ると 犬の糞を踏んでいた...。

リードを繋げようと通らせて頂いたその場所は、どうやら 吠えまくっていたあの飼い犬のトイレだったらしい。

あの犬も大活躍だったなぁ...お陰様だわ…と、ちょっとやそっとでは取れない程の量を踏みつけた靴をビニール袋に入れ、これでもかって程キツく結んだ。
土禁なんて何年ぶりだろう… 雪のチラつく寒空の中 窓全開で運転しながら家路に着いた とても短く とても長い休日だった。

最後に 猟師さんにどうしても聞けなかった事が一つだけ...

ラッキーの首に着いていたGPSトラッカーの事……

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?