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【脚本】カクシゴト

テーマは【隠し事】
誰に何を隠していたのか
【家族】と言うテーマにもなる話です

サークルに提出した時、主催者の監督に
「内容は良かったけど、最後は主人公が質問しないで自身が思った事を書いた方がよかったね」
と言われた作品です(汗)
400字詰め原稿用紙10枚分です





カクシゴト(仮)
               たらお

【登場人物】
沙織(28)兄がいると知らされる
明子(64)トオルは未婚で産んでいた子
トオル(45)明子の息子で沙織の兄


◯ダイニング(休日の午後)
   日の光が室内に差し込む休日の午後。
   明子(64)ソファーに座って本を読んでいる。
   沙織(28)足早に室内に入ってくる。
沙織「お母さん、ちょっといい?」
明子「何よ?」
   沙織、スマホの画面を明子に見せる。
沙織「お母さん、これ何なの。友達から送られてきたんだけど」
   明子、画面を覗き込む
明子「あら、上手に撮れてるわね」
沙織「上手に撮れてるわね。じゃないわよ。誰この横にいる男の人」
明子「あらトオルよ。ホントよく撮れてるわね」
沙織「トオルって誰」
明子「ホスト」
沙織「えっ愛人?」
明子「ウソよ」
沙織「じゃあ誰」
明子「隠し子」
沙織「えっ何?またウソって言うんでしょ」
明子「ホントよ」
沙織「ホントって、またまた冗談でしょ」
明子「ホントよ」
沙織「ホントに?不倫してたの?」
明子「不倫じゃないわ。あなたが生まれる前の事だもの」
沙織「何それ」
明子「あなたには言ってなかったものね。いいタイミングだから話すわ」
沙織「は?私いま28だよ。28年こうやってバレなきゃ一生隠してたの?」
明子「隠すなんてそんなつもりはなかったわ。たまたまタイミングが合わなくて」
沙織「何その、たまたまタイミングが合わなくってって、普通の親なら子供が物心ついたら話すんじゃないの?」
明子「それがこのタイミングになっちゃったって事で」
沙織「なんか、もう意味わかんない。で、話してよ。包み隠さず」
明子「そうね。私が19の時に出来た子がトオル。相手とは結婚しなくて、親権がアッチに行った。ただそれだけ」
沙織「それだけって、なんかサラっと言わないでよ」
明子「サラッとも何も、それが事実だから」
沙織「だって、その人って私のお兄さんて事じゃん」
明子「ま、そうなるわね」
沙織「で、何で結婚できなかったの」
明子「学生の分際で妊娠させたなんて噂が広がったらマズいって、そう言ってたけどアッチの家は病院経営してて、うちは平凡な家庭だから釣り合わなかったってのが本音じゃない?」
沙織「あぁよくあるパターン」
明子「でも私どうしても産みたかったから産んだの。生まれたのが男の子だって分かった途端、アッチの家は跡継ぎは確保できたって言って、ウチで育てるからって」
沙織「何それ?それって横取りじゃん」
明子「仕方ないわよ。アッチの家は、経済的に困らないじゃない。それに本当の子供なんだし、すぐ婚約者みつけて結婚したわ。その人の子供だってことにして」
沙織「何それ、意味わかんない」
明子「でも、こうやっていつでも会えるようにしてもらってるから、それでいいのよ」
沙織「この事、お父さん知ってるの?」
明子「普通に知ってる」
沙織「知ってるの?」
明子「うん。だって3人とも同じ学校の友達だから」
沙織「は?何それ、そしたら私達、父親違いって事になるじゃん」
明子「それは無いのよ」
沙織「何?また意味わかんない事言ってる」
明子「お父さん、無精子症で私達だけじゃ子供が出来なかったの」
沙織「え!」
   驚きを隠せない沙織
明子「だから、あの人から精子をもらって、人工授精して産まれたのが沙織あなたって訳。向こうの御両親には内緒だけど」
沙織「えっ内緒って?」
明子「沙織、私もお父さんも沙織の親だし家族である事には間違いないから」
沙織「なんかもう、あたまンなかパニクッてる。少し時間欲しいよ」
明子「そうだよね。ゆっくり理解してもらえればって思うけど」
   室内をウロウロしたり立ったり座ったりする沙織
沙織「お母さん、私、兄さんに会ってみたい」
明子「そうね、トオルもきっと会ってくれると思う」
沙織の声「そうして私は、トオル兄さんと会う事になった」

◯喫茶店(休日の午後)
   沙織、スマホを見ている。
   店内に入ってくるトオル(45)。
   キョロキョロとあたりを見回し沙織を探しあてる。
トオル「すみません、沙織さんですか?」
沙織「はい、どうぞ」
トオル「失礼します」
トオル向かいの席に座る。
トオル「初めまして、って言っても俺、沙織さんの事は母さんから聞いてるし写真も貰ってるから初めてな感じしないんですよね」
沙織「トオルさん、私達が兄妹だって事、いつ聞いたんですか?」
トオル「母さんが沙織さんを妊娠した時に教えてもらったんです。17の時です」
沙織「私達17違うんですね」
トオル「俺達歩いてると親子みたいに見えるかもしれないですよ。一緒に歩いてみます?」
沙織「歩いてみましょうか(微笑)」
   2人店を出る。

◯街(夕刻)
   2人歩いている。
   話しながら時折笑顔を見せている沙織。
   クレープを焼いている車の移動販売を見つけ立ち寄る。
   テーブルにつき食べ始める。
沙織「トオルさんて結婚してるんですか?
トオル「してるよ。子供も2人。1人は男で今年ハタチ大学2年、1人は女で今年18高校3年生だよ」
沙織「えっ!トオルさんの子供と私の方がキョウダイみたいじゃないですか」
トオル「(笑)今度並んで歩いてみる?オバサンとしてだけど(笑)」
沙織「私のコト、知ってるんですか」
トオル「俺の家族は、沙織の事みんな知ってるよ」
沙織「そうなんですね。私なんてトオルさんの事この前教えてもらったばかりで、お母さんの第一声なんて隠し子だったんですから」
トオル「母さんらしいね隠し子なんて言う所。(笑)じゃあ今は隠し子と会ってるって訳だ」
沙織「隠し子と隠し事の話してる」
トオル「(笑)うまい」
沙織「カクシゴト、この単語を話すだけなら同じに聞こえるけど書くと意味が違うって分かりますよね」
トオル「そうだね。言葉って難しいよね」
沙織「会話も難しい。急にお兄さんだって言われて会って、どんな話すればいいか分からなくて、けど、なんか今、普通に話せてるのナニ?って感じで」
トオル「やっぱ、兄妹だからかな」
   トオルのスマホが鳴り話し出す。
トオル「ごめん、そろそろ帰んないと」
沙織「うん、今日は会ってくれてありがとうございました」
トオル「今度は、俺の家族紹介するよ」
沙織「ありがとうございます」
   席を立つトオル。
沙織「あ!トオルさん、最後にひとつ聞いていいですか?」
トオル「何?」
沙織「家族って何だと思いますか?」
トオル「俺はその人と家族だと思ったら家族かな。それで良いんじゃないの」
沙織「血のつながりとか気にしないの?」
トオル「気にしないよ。親だって元々赤の他人じゃん。たまたま好きになって結婚して家族になっただけだし」
沙織「言われて見ればそうですね。何か胸につかえてたものが落ちた感じする」
トオル「こんなアッケラカンとした考え持ってるのは、母さんの血かもね(笑)」
沙織「それは言えてるかも(笑)」
トオル「(笑)それじゃ、帰るね」
沙織「うん、それじゃ、また」
   トオルの背中を見つめる沙織
   黒フェードアウト
   黒画面に白文字で
   隠し子と
   隠し事
   カクシゴト
(終わり)

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