彼女は僕の知らない、うるさい音楽に夢中さ

こんばんは、フジミです

今日は僕の尊敬しているバンドについて書こうかなーと思ったり

それは18歳の時だった。
クラスの端っこでキザな、鼻につくヤローを気取ってイヤホンをして、振られた元カノのその後の人生を考えながら窓の外を眺めていた僕は少々退屈していた。

その時、ナンバーガール 、スーパーカーSyrup16gやART-SHCOOL、The Novembersなどを好んで聴いていた。

バンド漁りは今も日課だ。
ちょうどYouTubeなんかはみんなが知ってるツールになっていた。
世界のどこでも誰でも、端末さえあれば色んな音楽が聴ける。
加えて僕はライブハウスで情報交換も併用していた。

その時、みんなが勧めてくれたのが「ハヌマーン」というバンドだった。

最初は名前が覚えられず、ハマヌーン?ハーマン・カーン?ぐらいの認識だった。

「とりあえずお前これだけは聴いといた方がいいから」

友人の熱量は凄まじかった。

そう言われて近所のTSUTAYAへと足を運ぶ。

うちの地元のTSUTAYAはロック・ミュージックに力を入れているようで多様なポップと共にインディーズバンドのCDがたくさん置いてある。なんならストレイテナーが駆け出しの頃のコンピとかが置いてある。そんな拗らせ方をしたTSUTAYAで大変ありがたかった。

初めて借りたのはWorld's System kitchenというアルバムだった。

後から知ったのだが、ハヌマーンは関西のバンド。アルバム名の意味は大阪=天下の台所から来ているのかな?と感動したのを覚えている。

まあまあ、そんな感じで友人の熱量にも巻き込まれ、なんとなくなぁなぁで借りてきたCDを無造作にプレイヤーに突っ込み、再生ボタンを推す。

合わなかったらさっさと返しに行って帰りにセブンティーンアイスでも食おう。
A4紙一枚程度の軽い気持ちで数秒ないぐらいの再生されるまでの時間を過ごす。

今思うとこの瞬間が全ての始まりだったのである。

ド頭で「妖怪先輩」という曲が流れた。

乾いたテレキャスターの音。
わずか8小節。
僕のハートが掴まれるには十分すぎる時間だった。

まさに電撃が体に走ったような衝撃。

激しい変拍子とカッティングを繰り返しながらボーカルの山田亮一が歌っている。
滑舌が悪くて何を言ってるかわからないが、とにかくカッコいいの一言に尽きる。

気がつけば、僕は口を開けたままの状態で2分48秒が過ぎていた。

これはすごい。とんでもないものを聴いてしまった。

次のトラックを聴く前に、僕は「妖怪先輩」を10回ほど聴き直した。

そしてアルバムを聴き進めるとあることに気づく。
歌詞がどこか小説を読んでいるようなのである。

いや、これ自体は既視感がある。(既聴感?)
なぜならナンバーガールを聴いてきたから。
いわゆる文学ロックというもの。
"それ"自体は慣れているはずだ。

だがこの未知を聴いているような感覚はなんだろう。

「トラベルプランナー」まで聴き進めたあたりで気がついた。

文学的な詩はさることながら、心理描写がべらぼうに上手い。痒いところに手が届かない繊細さを代弁してくれる。
Syrupなんかは思いの丈をわかりやすい言葉で代弁してくれるとしたら、ハヌマーンは良い意味で飾り気がある。ワードセンスが凄まじい。
この一言に尽きた。

難解な言葉や聴きなれない言葉を交えつつもわざわざ辞書なんか引かなくても伝わってくる圧倒的なワードセンスが武器になって斬りつけて来ているのだ。

えらく感動した僕は走って片道30分のTSUTAYAを往復し、棚に並べてあるハヌマーンのCDを片っ端から借りた。

友人よ、いい仕事をしてくれたぜ。
そう思いながら気でも触れたかのようにプレイヤーを回した。
親にうるさいからもうやめろ!と怒られるまでそれは続いた。
あの時の高揚感はきっと一生忘れない。

あれから10年が経った。
僕は楽器の練習なんか大嫌いだし、ギターはあんなに上手く弾けない。
影響受けましたー!なんてでかい声で言うのはなんだか失礼な気がしている。
だけど、歌詞を書くのだけは大好きでほぼ毎日書いている。
僕にセンスなんてないだろう。面白みもないだろうが。
幸か不幸かまだ、僕は音楽を続けている。
それを生業にしてる人に比べたら、足元にも及ばない。月とスッポンどころの話ではない。

ただ、あの時の初期衝動のおかげで得られたものは数え切れないほどある。
自分の趣味趣向を決定づけたバンドでもあるし、続けて来たおかげで居場所だってできた。友達もできた。先輩も後輩もできた。
もちろん嫌なことだってたくさんあったけど。

人生に思い悩んだ時は「バクのコックさん」が寄り添ってくれた。

彼女をいわゆる陽キャに寝取られた時は「猿の学生」を聴いて怒りを放出した。

絶望のどん底に落とされた時は「幸福のしっぽ」を聴きながら寝た。

彼女の家に遊びに行った帰りには「アパルトの中の恋人たち」を。
春の陽気の中で桜を横目に河原を散歩してる時には「ハイカラさんが通る」を。

決して僕の人生は順風満帆とは言えない。そして頑張れよ!みたいな曲を流されてもうるさいわ!頑張ってるわ!としかならないが、ハヌマーンは程よい距離感で聴いていられた。

生でライブには行けなかったのは心残りだし、僕はファンを名乗って良いのか戸惑うが。
彼らのおかげでいろんな景色が見れた。

ありがとう、ハヌマーン。

そんな感じで締めくくろうと思う。
皆も機会があればぜひ聴いてほしいと思う。

これが僕なりのハヌマーン愛です。

それではおやすみ。

またねー。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?