にゃるらが読んで面白いと思ったマンガ15選 2022
今年も、このマンガがすごいで5作品選んでいます。よろしくね。それはそれとして、個人でも2022年好きだった作品を並べるよ♪
↑去年好きだった本と音楽もよろしくね。
・ヒソカニアサレ
『チ。』の編集であったちよださんが新たに立ち上げた作品。『チ。』に強く感銘を受けたこと、ちよださんとは個人的にも何度か遊んだ仲である贔屓目を抜きにしても面白い。
「密漁」という、岸辺露伴でしか馴染みのないようなジャンルに切り込み、そして主人公が「密漁を行う側」としてのハードな罪と運命を背負っている。
もちろん、このような違法行為には裏社会の影がつきまといます。数年前には、ヤクザの世界を追い続けるライター・鈴木智彦さんによる、食品業界のタブーを暴いたルポ『サカナとヤクザ』が話題となりました。
もちろん『ヒソカニアサレ』も、がっつり密漁を取り巻く闇や田舎の実情をこれでもかと描写する。人はなぜ犯罪に走るのか、どうして漁業に闇が生まれていくのか、暴力団と市場の関係は。どこを切り取っても緊張感と刺激のある作品。自信を持ってオススメします。
・プラスチック姉さん
「なぜ今になってプラスチック姉さん!?」とビックリした方も居るかもいるかもしれませんが、『プラスチック姉さん』は本当にすごい。「なつかし~昔笑ったなぁ」と思っている方は今すぐ最新刊まで追いついた方がいい。姉さんの面白さは巻を重ねるごとに加速しているっ!
特筆すべきは画力の成長でしょう。
1巻1話の絵柄。この頃からかわいい。かわいいけれど、「ギャグ漫画の美少女」ではあると思う。この絵柄なら、こういうぶっ飛んだギャグをやってくれるし、そのうえかわいい瞬間もあって嬉しいみたいな。それはそれで良いものですが、作者は長期連載において着実に画力を向上させていき……
現在では、完全に「美少女」となった。もはや「かわいい」を目当てに読んでも大満足してしまうくらいに先生の描くキャラクターたちはかわいい。あの姉さんですら美少女顔をしてしまう。
しかし、それだけでは「かわいい」漫画でしかないのでオススメはし難い。なんと、先述した通り姉さんはこの画力を持ってなおネジの外れたギャグを展開し続ける。
ギャグ漫画は、登場人物たちの個性が際立って熟れてきたあたりから、その面白さの真価を発揮すると考えています。が、途中で熟れすぎて手癖で描けるようになるとギャグのキレも落ち着いてしまう印象もある。
けれども、姉さんはつねに気が狂い続けている。THE市に登場する異常者たちはぐんぐん狂気を増していき、そのうえで上がった画力による美少女たちとのギャップでまたとない唯一無二のギャグ漫画として確立しているのです。長く連載が続くうちに、「どんどん作者のパワーが画力もストーリーも上がっていく嬉しさ」が姉さんにはある。
・るなしい
「神の子」として育てられた、ぱっとしない見た目の少女が主人公の宗教信者ビジネス漫画。テーマからすでに重々しいですが、内容の重力もすごい。
「神の子」であるがゆえに、恋もできないまま、学校でも怪しい宗教の女としてイジメられたり、それでも一部男子からは人気がでて「オタサーの姫」と呼ばれたりしつつも、今日もありがたいお灸で周囲の人物たちを幸せにする。あらゆる手を尽くして生徒たちに神を信じさせ、「信者ビジネス」としてお金を稼いで成り上がる様は、悲しみと達成感が同時に襲ってくるようで独特の読み味。お金を稼ぐことも悪ではない。信じた客にいっときの幸福や希望を与えることも善と言えるかもしれない。けれども、少しずつ神の子は取り返しのつかない方向へ進んでいく……。
けっして「信者ビジネス」を軽くも重くも扱わない、つねに緊張感漂うお話です。日本の何処かには、このような風習も残っているのかもしれません。
・あの頃の増田こうすけ劇場 ギャグマンガ家めざし日和
ご存知『ギャグ漫画日和』作者による自伝的エッセイ。
……ですが、このエッセイの異質な点は、作者の「ギャグ」への才能が桁違いすぎて、トントン拍子に話が進んでいくことです。若さゆえの周辺環境には悩まされたりもしますが、いざ漫画を応募するとすぐに才能を認められ、みるみるうちに漫画家としての階段を登っていく。いわゆるありがちな「苦労話」でない衝撃がもう面白い。
まさかの作者名がタイトルになっている初連載が今でも続き、その面白さをつねに放ち続けている。その連載までの経緯も、「漫画の描き方」への悩みは一切ない。天が与えたシュールギャグの申し子。
圧倒的な才能を持つ作家もとうぜん世界にはいるんだ……と、とにかく驚きの連続で、そのうえでやっぱり漫画が上手いので楽しく気軽に読める。増田先生らしい一冊でした。
・劇光仮面
この作品に置いて、もはやどんな感想や紹介を持ってしても無粋極まりなく感じてしまう。それだけ、山口先生による、もはや怨念にも近いほどの特撮作品への愛と執着が込められている。
上のページを開いた瞬間、「先生、本気なのですね……!」と、まだ感動のシーンでもないのに、その一途さに涙が流れましたもの。
全コマから伝わる迫力。先生が怪人の悲哀とスーツに魅せられてしまった男の魂を遺憾なく描写するため、魂を削っていることがわかる。あの若先生が筆に魂を込めて絵を描いているのだから、僕らはその行く末を見届ける義務がある。
ちなみに1巻で二回も女性が主人公の背中を拭く・流すシーンがあり、「これこそ先生の考える男の世界なんだろう」と、よくオタク話をするシグルイ大好きな編集さんも唸っていました。現代でこんな展開をねじ込むフェチズム。有無を言わせぬ説得力。先生の世界の男女たちは、男の背中を流してあげるのだ。
主人公の名字が『実相寺』である時点で、もう先生がこの漫画へ全てを捧げていることが伝わる。僕も昭和特撮を後追いでそれなりに観てきたものの端くれ、先生が描く怪人・怪獣、そしてヒーローたちの劇しい光を、あますことなく拝観させて頂く所存。
・ブラックチャンネル
コロコロ版の『笑ゥせぇるすまん』。動画を投稿する不思議な悪魔のブラックが、現代の子どもたちの闇を煽って企画を創り出す。もちろん、闇に溺れた子どもたちの末路も配信され……といった内容。
現代的な点として、配信者が題材であることもそうですが、「きさらぎ駅」や「SCP」などインターネット的な要素がテーマの回もあり、早くからネットに触れることができる現代っ子からすればワクワクだろうなと、こちらまでドキドキしてしまう。きさらぎ駅やSCPに対抗できるダークヒーロー……そりゃ全国の小学生を虜にして当然。
そして、コロコロなので迫力のバトルもある。これはもう人気が出るに決まっている。単純な友情努力勝利に乗れなかったちょっと捻くれた小学生読者も好きになってしまううえに、ブラックなオチによる教訓も得られる。ゴクオーくんのような読後感。
・ジャンケットバンク
ヤンジャン連載のギャンブル漫画。
もちろん手に汗握る命の駆け引きがすごい。やはり、人生ではつねに2.3作ギャンブル漫画を追っておくべきだよねと実感する。が、僕がもっとも好きな要素は……
登場キャラクターの顔がいい。
これは、ふざけているようで重要です。顔がいい男たちが、その美貌に負けぬ頭脳を駆使して命を削り合う。エンターテイメントとして、これより盛り上がってしまうことは少ない。
ギャンブル中、つねに戦っている二人の顔を眺めるのだから、そのキャラクターたちに好感が持てれば持てるほど良いに決まっている。さらには、好きになったキャラクターたちが、どんどん成長して巧みな心理戦を仕掛けるのだ。直近のタッグ戦は、展開もキャラクター性、関係性のドラマ含めて最高でした。いま、かなり筆が乗っているなと読んでいて嬉しくなる漫画です。
・うつ病になってマンガが描けなくなりました 発病編
主にギャグ漫画家として長年戦ってきた相原コージ先生による実録漫画。ここまで名のある作家が急に描けなくなってしまう瞬間の描写が恐ろしい。
漫画が描けることをアイデンティティにして生きてきた作家が、その漫画を描けなくなった事実と真面目に向き合いすぎて、うつのスパイラルに飲み込まれていく……。
怖い。急に自己の存在価値を見失ってしまう。『コージ苑』や『サルまん』でのハイテンションギャグを読んできたので特にキツい。文字通り命を削って漫画を作り続けてきたことが分かってしまうのがつらい。
なにはともあれ、今はこうして当時の心情を俯瞰して漫画にできているのですから、本当に良かった……。
・本田鹿の子の本棚
年頃の娘の部屋に毎回忍び込み、彼女の本棚から一冊選んで「娘はこんな本を読んでいたのか……」とお父さんが驚いたり、感動したり、心配したりするだけで構成されている、紹介した中でもかなり異質な漫画。
こう紹介するとなんだか真面目そうな印象を受けるかもしれませんが、基本的には鹿の子が読む本の奇天烈さを楽しむ作品。
本好きの鹿の子が選ぶ小説は、どれも一癖も二癖もあり、そりゃお父さんも思わず心配したって仕方がない。けれども、思春期ってこんなかんじの突飛な本読んじゃうよね! っていう共感もあるっちゃある。そもそも、毎日娘の本棚を漁るお父さんの方が10割悪い大前提があるし……。
毎回毎回、なんなんだこの漫画は! と驚いているうちに次の話になっているような、単行本で通して読むとジェットコースターのような激しい緩急でめまいがします。ぜひぜひ、あなたも鹿の子の愛する小説の世界を体験してください。
・放課後ひみつクラブ
かわいい。とにかくとてもかわいい。少年ジャンプ時代から、多くのジャンルに挑戦してきた福島先生ですが、どれもつねに「かわいい」ことは崩さなかった。
その先生が、ジャンププラスという新天地で、あますことなく「かわいい」を発揮している。もちろん、かわいいだけでない読み心地のシュールさはベテラン作家ならでは。2022年で一番かわいかった。真にかわいいを極めたお嬢様は、そのギャップを活かしたギャグ表現にだってつねに意欲的なのだ。
・スーパーの裏でヤニ吸うふたり
なかなかパッとしない会社員のおじさんと、拗ねた雰囲気が独特のお姉さんが、コンビニの裏でいっしょにタバコを吸ってちょっと会話するだけの日々の連続。
「スーパーの裏で男女がタバコ吸うだけで面白いってありえるのか!?」と試しに読んでみたら、本当にスーパーの裏で男女がタバコを吸っているだけで面白かった。それこそタバコ休憩の気持ちでふとした時にページを開いてみるのに最適な漫画です。なにより顔がいいのです。
・まじめな会社員
ものすごい解像度で残酷な、けれどもその過酷な展開も「リアルで起きうる範囲」に収まっており、それゆえドラマチックすぎない現実感が余計に恐怖や嫌悪感で包み込む作風。
作中でねっとりと描かれる、「普通にちょっとダメな人による思考」が心を抉る。ちょっとだけダメなのだ。思いっきりダメ人間に振り切れていたり、ダメなりに行動力があればドラマが生まれる。しかし、彼女は「まじめな会社員」なので、けっして大胆な行動に踏み込むことはない。そして、ゆっくりと周囲との差ができていく。
大切にすべき「焦り」や「拘り」を、ちょっとしたサブカル趣味に昇華することで消費してしまう切なさ。が、それが「ふつう」で「まじめ」な若さすら失った人の現実。日本の片隅で毎日発生していて、しかし話題性がないのでひっそり沈んでいくだけの、そんな日常。
・追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 ~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?~
なろう原作であることを逆手に取り、王道的な原作を、コミカライズ時に大胆にアレンジした意欲作。作画担当が「業務用餅」を名乗っている通り、まるで業務のように淡々と見たことのないマンガ表現を展開していくのが小気味良い。謎に包まれた実態と、時折見せるストイックに面白さだけを追求している態度に好感。
「原作のある作品で、こんなことしていいんだ!」といった飛び道具的な要素のみでなく、一筋縄ではない主人公やヒロインたちの魅力、ちゃんと漫画の展開として(王道としての原作の面白さもきちんとなぞる時はなぞる)スッキリ楽しめる作風。
あらゆる面でオススメの作品。マジでなにこれ。
このマンガがすごいに選んだのに、誌面だとタイトルが短縮されて掲載されたのがショック。
・幻怪地帯 Season 2 エーテルの村
伊藤潤二先生の新刊。今年は、短編集をオムニバス形式でアニメ化した二期もNetflixで配信されましたし、新作アニメも控えていますから、どんどん潤二先生のホラーで耽美な世界観が海外に広まって嬉しい。もとから世界中から愛されている作家ですけどね。圧巻の画力と、それゆえの美しさ、ねちょっとした恐怖は随一。
シーズン2とタイトルに入っていますが、基本は短編なので気にしないで問題ないです。が、表題とは関係ない「怪奇ひきずり兄弟」は過去作を知っている方がニヤッとできます。先生は、この日本が誇るべき画力を持ってほっっっっっとうにくだらないギャグを描く。素晴らしい。それにしても、今作の怪異は規模がでかい相手になりましたね。街のちょっとした怪異には留まらず、もう世界中を恐怖に陥れる存在が増え始めてドキドキします。
そんな潤二先生も推薦する名作の復刻『フランケンシュタインの男』も良かったです。古き良き王道ホラーと少女マンガチックな絵柄。昭和の怪奇もぜひ併せてご堪能ください。
・ゆうやけトリップ
なをををををををさんにオススメして頂いた、COMIC FUZ連載作品。女の子二人で夕暮れ時の心霊スポットを冒険するという内容なのですが……
とにかく背景の描き込みが素晴らしすぎて、その情報量に圧倒されているうちに読み終わってしまう。これは読者体験として非常に気持ちが良い。かわいらしい美少女キャラクターを主軸にしつつも、日本ならではの風景を楽しむ趣は、まるで水木しげるやつげ義春を読んでいるようです。
ふとした時にKindleを開いて、さーっと背景を眺めてうっとりする。こういった作品は、紙で買ってランダムでページを開き、そのコマの背景をじっくり堪能するのもいいですよね。どこを切り取っても美麗でレトロチックな背景が展開されている喜び。
相当な時間と熱意を持って連載されているのでしょう。本当にありがたい。このクオリティをアニメでも観たいと贅沢を願ってしまいます。
今年もいっぱい面白い漫画を読んでいきたいですね♪
↑去年のベストです。
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