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にゃるらが読んで面白いと思ったマンガ15選 2021

 今年も「このマンガがすごい!」に掲載させて頂きました。ありがとうございます。それでは、面白かった漫画をどんどん載せていきます。

 ↑去年のベストです。

 ↑こっちは良かった本と曲。



いじめるヤバイ奴

 マジで凄い作品です。序盤が試し読みできるので、一度目を通してもらいたいのですが、1巻から想像した内容と現在では作風が全く違う。絶対に序盤からでは想像できないヤバすぎる展開が続く。漫画ってこんなに自由なんだ! と驚かされます。

 1巻の表紙がこちらで、まるでイジメを題材にしたダークで重々しい、胸くそ悪さを楽しむ漫画に見えるのですが、

巻を追うたびどんどんカオスかつスタイリッシュな表紙に。中身は、それ以上にぶっ飛んだ話の連続。

 序盤こそ、たしかにハードなイジメ漫画ではあるのですが、それが中盤からは、

イジメようにもナイフが効かなくなったり、

「喜」しか感情を持たない赤ちゃんが平然と登場したりする。

 恐怖も笑いも熱さもバトルもイジメも全てが詰まった、とにかく先が読めなさ過ぎる、「迫力」の点では間違いなく令和でトップの作品。是非是非、僕を信じて読んでもらいたい。


死神ドットコム

 今年のきらら作品では一番ツボにハマりましたね。
 超貧乏でギャンブル狂のダメOLと、彼女の魂を頂くために借金返済を手伝うことになったポンコツ社畜死神の同居生活!

 どこまでもハチャメチャな関係が描かれ、終わった日常と小汚い美少女たちをこれでもかと堪能できます。きらら作品なのに「幻覚」「イカれ人間」「狂気」という荒廃したタグが付けられてしまうほど。

 作者である『優しい内臓』先生は、そのペンネーム通りの世界観をお出ししてくれるので、そういった趣味の方も大満足! 先生は『キルミーベイベー』の大ファンですので、きららの中でも特殊な需要を完全に理解してくれているのだ! かわいいデフォルメな絵柄で、ひどい目に遭う女の子大好き!

ハイパーインフレーション

 たくさんの魅力溢れた作品ですが、なんといってもグレシャムのキャラクターが良い。

 彼は、お金が儲かるなら絶対に裏切らない。主人公と協力することが金に繋がる限り、惜しみなく彼を助け続ける。もちろん、情なんて一切ない。逆に言えば、主人公より儲かる存在が現れた場合、自動的にそちらにつく。もはや善悪を越えた存在なのですね。

 つまり、主人公たちは、過酷な世界を生き残るために、グレシャムを最大限利用して儲け続ける必要がある。グレシャムは物や人の価値を一切見誤らない。

 悪役と共闘する展開ってそれだけで熱くなりますが、共闘の理由が極めて明確なのは新しいと感じました。去年で一番好きだった漫画なので、ランキング一位に選んでみたよ。

明日、私は誰かのカノジョ

 各所で話題になりまくりなので、僕のnoteの読者は既にある程度知っているでしょうから、今回は「ゆあてゃ」に焦点を当てて紹介します。ある程度も知らないのであれば、今すぐ読みなさい!


 舞台が歌舞伎町に移ってから登場する少女・ゆあてゃは、そのあまりのリアリティから、現代の思春期女子たちを惑わせてしまった存在です。


 具体的には、ゆあてゃの地雷系な容姿に憧れて整形したい女性たちが急増し、その度に漫画のキャラなんかになれる訳ないと説明する羽目になった高須社長を困らせているのだ。そのせいで、『整形でゆあてゃになりたいという人が増えて正直困っています。』なる動画が投稿され、結果的に高須社長が最もゆあてゃや、彼女に憧れる少女たちへの理解がある存在となったのです。
 あまりに真に迫りすぎたゆえに起こったインターネット珍事件でした。

 夜の街には、こういった特殊な世界がある。


チ。―地球の運動について―

 宗教と科学は切っても切り離せない。
 なにごとも理論で解決する科学者と神は相性が悪いのではと、無宗教の方が多い日本では誤解されがちですが、神を信仰するからこそ、上位存在が創り出した美しい世界の法則を科学者たちが研究している側面もあるのです。

 といったことが、↑の本に書いてある。そして、『チ。―地球の運動について―』でも、その神と科学の関係を色濃く描き、宗教の怖さと強さがテーマにした作品。

 神を信じるからこそ人類は発展してきた。「天動説」に異を唱える異端者は処刑されて当然。「地動説」なんて神に反する。
 しかし、聡明な科学者たちは、神を信仰するからこそ、「地動説」の美しさに囚われ処刑を恐れず命を賭ける。果たして、どちらの人間のほうがより神を信仰する敬虔な信者と言えるでしょうか。
 これは信仰を武器に戦う男たちの情熱と清らかさが描かれた、美しい物語なのです。

 あと担当編集がネットに強くて僕の読者です(自慢)。

スイカ

 めちゃくちゃ高い画力とホラー作品への理解度から繰り出されるシュールギャグを楽しむ、唯一無二なギャグ漫画。
 とにかく、それが全てなので、多くを語るのは無粋な気がします。かわいい・怖い・笑える! 感情豊かになれる良い漫画ですよね。


今日はまだフツーになれない

 2021年で最も女性同士の関係の描写が好きだった作品、「今日はまだフツーになれない」です。

 二人の主人公、高橋と山下(ともに27歳)は、タイトル通り「フツー」になれない。高橋は可愛いものが大好きでメイド喫茶勤務のフリーター、空気が読めず周囲に合わせられない繊細な山下は駆け出しの漫画家。同級生たちは就職や結婚で「フツー」を歩んでおり、二人は自分たちが社会に適合できない事実を節々から感じ続けていく。

 漫画家として活動する山下はまだ良いが、かわいいだけが生き甲斐の高橋はさらに辛い。勤務先では最年長だし、同窓会に参加した際、自称「かわいすぎる髪の色(ピンク)」にしているような人間が自分だけであることを思い知る。昔はエゲツない腐女子だった友人ですらフツーになっているのに。僕は、彼女がピンク髪を「かわいすぎる髪の色」と認識しているのが好きです。かわいすぎる答えがあるのだから、自身がそれを纏うのは当然でしょう。
 高橋の方も、イベントで昔の作家仲間に漫画を褒められるも、漫画を諦めて結婚した向こうは多くの体験をしているのに、自身は恋愛も仕事も知らない。しかし、体験が重要なはずの漫画家になったのは自分の方だと不思議に思う。
 作品内では、このような「フツー」の現実が描かれ、それに対する二人のスタンスを表現していく。読者視点では、いつまでも変わらぬ二人で居て欲しいが、社会はいつも「フツー」を求める。何が正解か分からないまま、人は生き続けていく。

 という内容を我慢できずに、先日の記事↑でまったく同じ文章を書きました。

美少女化したおじさんだけど、ガチ恋されて困ってます

 展開に「ギャップ」があるからこそ、読者たちは強く心を揺れ動かすものですが、この『美少女化したおじさんだけど、ガチ恋されて困ってます』は、正しくギャップでできている。
 突如、美少女化してしまったおっさんたちが集まって、互いに協力しながら生きていくお話ですが、このおっさん描写が非常にリアル。本当にハゲでデブで童貞で性格も悪いおっさんたちが大集合しており、そこに救いはまったくない。
 元からそれなりに清潔感のあるぬるいTSとは全く違い、小汚いおっさんたちと美少女姿の強烈なギャップをウリにしている。もちろん、美少女化した後の彼女たちを取り巻くおっさんたちも、隙あらば襲う気満々の性欲野郎だらけ。地獄の体現。

 何もかもが汚いからこそ、美少女(になったおっさん)たちの可愛さが光る。性欲から逃げずに、おっさんの悲哀と気持ち悪さを描ききっているからこそ素晴らしい!
 生まれつき可愛い無自覚な美少女たちよりも、おっさんだったからこそ美少女の可愛さを最大限利用できるわけで、「可愛い」への新たな挑戦と解釈を僕らは本作を通して体験するのです。
 つまりは、僕の性的嗜好とベストマッチなんですよね。


トリリオンゲーム

 劇画界の大御所・池上遼一先生と、『アイシールド21』『Dr.STONE』の稲垣理一郎原作の最強タッグ。こんな最強のふたりが組んで面白くない訳ないのですが、この漫画に登場する主人公ふたりも同じくらいに最強かつ魅力的。

 顔もコミュニケーション能力も最強な「陽」の男と、とにかくパソコン技術だけは最強の「陰」の男がコンビとなって、何兆円ものお金を稼ぐため、いびつな現代社会へ切り込む。
 能力的にはデコボココンビながら、どこまでもお互いを信頼しているゆえに、トントン拍子に話が進んで成長していく様が気持ちいい! 『Dr.STONE』でも感じましたが、頭のキレる男たちがサクサク問題を解決していくだけで読後感が最高なんですね。そんなネームが構成できる作者の頭の良さとテンポ感の賜物ですが。

 もう既に話題になりまくりですが、今後さらに有名になっていく一作でしょう。誰が読んでも気持ちが良い、素晴らしい漫画です。


DEATH NOTE短編集

 デスノート本編のその後の世界を舞台にした短編集。
 「ノートを拾った正常な倫理観の人間が、他人を殺めずにどこまで利用できるか」という妄想をした読者は少なくないと思いますが、その結果を作者自ら予想の何倍も上を行く展開と知能戦でお出ししてきて、清々しい気持ちになります。
 夜神月の時代ならともかく、ネットの連絡網や防犯カメラが充実した昨今では、デスノートの真価を利用するのは難しい……。しかし、せっかくノートを拾ったのだから恩恵は受けたい! もちろん、それで人を殺してしまったら夜神月と同じ末路を辿るわけで、自身の精神が狂わない方法で。あなたならどうするでしょうか?
 そんな当時の読者の妄想を、作者が自ら100点以上のクオリティと頭脳戦でお出ししてくれるのですから、僕らはそれを読まなければならないのです。
 余談ですが、「夜神月は試しにシブタクを殺してしまった時点で精神がおかしくなっていた」説がありますが、僕はその説が好きです。例えどんな超人のフリをしようとも、現代で殺人という業を背負った瞬間、それはもう正常なレールから外れてしまうのだ。

デッドプール:SAMURAI

 あのデッドプールがジャンプとコラボして短期集中連載! 次々と襲いかかる絶妙なジャンプネタ……と思わせて敢えてサンデー作品をパロディしたりなど、まさにデッドプールらしいネタを仕組んだメタメタの嵐のような作品。

 とにかく毎週デッドプールが読者をビビらせようとしてくれるので、次はどんなビックリを用意しているのだろうと、作者の挑戦心へ挑むような気持ちで読める唯一無二な作品。

 短編だからこその迫力でちょうど良かったなと思いました。これが何冊も続くと絶対に息切れするのが分かる生き急ぎ具合ですので、短い中にありったけのパロディやメタネタが詰め込まれていて、とにかくお腹いっぱいになれます。

満州アヘンスクワッド

 「アヘン」をテーマにしているだけはあり、薬物の描写が容赦なくて良い。もちろん、それだけが見どころではないのですが、世界を巻き込む最悪の麻薬の恐ろしさと快楽を何より丁寧に描くことは重要ですからね。
 残酷な世界で起こる薬物の恐怖と、それを利用して成り上がる主人公の勇姿を読むことができます。

 強くて狡猾な女いいよね……。嗅覚とアヘン知識に長けた主人公と、彼と手を組んで成り上がろうと企むマフィアの娘。こんなにワクワクする関係はなかなか無いですよ。
 どんな善人も悪人もアヘンにハマってしまえば平等に麻薬中毒者という恐ろしい世界観を体験してください。

TOUGH 番外編 柔の章

 一応、タイトルに「タフ」を冠するものの、殆ど本編と関係ないので、こちらから気軽に読めます。
 パラリンピックで活躍した柔術家をモデルに、盲目の柔術家を主人公に、目が見えないからこその人生観が描かれた名作。猿渡先生の短編に死力を尽くす情熱が伝わり、一冊完結ながら読後感が気持ちよすぎる! しかも、この画力ですからね。間違いなく漫画界でもトップクラスの画力と演出力ですから、真っ当にカッコいい男たちを描かせたら右に出る者はいない訳です。
 中でも、盲目の障害者の性欲をきちんと描いたのが凄く良かった。無意味に美化し続けず、同じ人間であることに真正面に向き合っているからこその描写に感じました。嗅覚のない障害者としても、変に配慮しない強さに感動……。
 やっぱり猿渡先生は凄いよ。

野良カメコのピラミッド

 うだつの上がらないおっさんカメラマンの日常を描いた作品。どこにでも居るカメラマンとコスプレイヤーたちの、飾らない実態が描かれており、過度にゲス過ぎもせず、かと言って綺麗過ぎる描き方もしていないので、「本当にこんなもんなんだろうなぁ……」と不思議な気持ちになれます。

 主人公のおっさんも「自分だって性欲はあるものの、手を出したら一発アウトであると自覚しているからこそ良い人を演じる」絶妙な距離感が良い。そう上でイケメンカメラマンに好きなレイヤーを取られ続けて泣き寝入りする、悲しい現実も良い。でも、おっさんはイケメンカメラマンを恨まない。「そういうもの」だと知っているから。この力関係もリアルで良い。

 作者自身の経験が活きているんだなと分かる一作で、良くも悪くもリアリティのあるおっさん事情を読むことができます。中年カメラマンの現実を知りたいというイカれた欲望がある方には、確実にオススメできる一作。


上京生活録イチジョウ

 トネガワ、ハンチョウに続くカイジスピンオフ。
 主に40代以上の共感を得たトネガワや、30代以上のハンチョウと違い、イチジョウの方は20代に染みる内容となっております。

 ハンチョウたちって、もうおっさんだから自由に人生を謳歌しようと前向きなんでよね。そこに中年の悲哀がエッセンスになっている印象ですが、対してイチジョウは「意識が高いものの若さゆえに何もできない苦しみ」が主に描かれます。これは刺さる人には確実に刺さる。


 上京して友人とルームシェア貧乏暮らし……全く同じ状況だったので気持ちがわかる。そのうえで、毎日なにか意味のある行動をしようと思うも、気づけばマンガやゲームで日が暮れる毎日……! 焦りばかりが募るものの、お金も人脈もない以上、残っているのは「やればできるんじゃないか?」という根拠のないプライドだけ……!
 そんな生活の中でも、僅かな喜びや成長を少しずつ噛み締めていく。正しく10代後半~20代前半で、日々やりきれなさを感じている若者たちに読んでもらいたい作品です。

 ↑本当にツボにハマったので、インタビューも行ってきたよ。よければ、こちらも読んでみてくださいね!

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