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ショウビジネスに踊らされないで

トラックドライバーといえば、今絶賛大炎上中の若手女性ドライバーさんが居ますが…。

もう、ドライバー職なのかインフルエンサーなのかタレントさんなのかもはやわかりません。
賛否両論、ファンもアンチもいて、同じドライバーの中でも意見が分かれております。

歳いった女性ドライバーがアンチだと、更年期だとか妬み嫉みだとか叩かれてもいます。

今日は急遽その話をしようと思います。
誹謗中傷でも叩きでもありません。


で、元ドライバーの焦げ猫としてはどうかというと、自分の娘と同じ歳の女の子を、どんな形であれ働いてるならとやかく批判したかないなぁ…というのが正直なところでしたし、そもそも関心がないのでドラマもマンガも見てません。


ただ彼女が、建前・後付けかもしれませんが、

運送業界を盛り上げたい

…という動機から露出してるようなので、同じように、

「まぁべつにバズってないし好きで描いてるだけだけど業界の役に立てるとしたらそんなとこかなぁ」

…と思ってマンガを描いて業界を晒しているという同じ立場になってしまった今、彼女の売られ方はスルーできない問題となってしまいました。

どちらかといえば「まずいな」と思ってます。
かなり不安です。
業界のイメージが正しく伝わってないので。

タイミング的に2024年問題で人手不足も叫ばれている今なので余計にです。

それと「話題になればお金になる」というビジネスから持ち上げられているご本人の将来が心配でもあります。



「疲労が最高のツマミ」とは思わないでほしい

まず手厳しいことをいうと、「運送業界を盛り上げたい」は承認欲求の後づけでは?…というのは薄々…。

だって矛盾してるでしょう。

疲れが最高のツマミ」なんてキャッチコピーついたら、「こんなに呑まなきゃならないほどトラックドライバーの仕事はしんどいのか」って逆効果では?

コレ…完全にフィクションだったにも関わらず、「トラックドライバーはガサツで助平」というイメージを作ってしまった「トラック野郎」と同じことを繰り返すのでは…。
言っときますが文ちゃんもキンキンも好きでしたし、あの映画はおもしろいと今でも思ってます。
だけど軸が実在人物で、「トラック野郎」から何十年も経って社会が変わった今、とくにメディアの拡散力が全く違う現代で「イメージの曲解」という歴史を繰り返すのはマズイ。

文ちゃんもキンキンももういない今でも、先日60がらみのタクシーの運転手さんが運転が上手いから褒めようと思って「もしかしてトラック乗ってましたか」と話しかけたら、「えっ。乗ったことないですけど。僕運転乱暴ですか?」って返ってきたんですよ。
そんぐらい、イメージっていちど付いちゃうと取れないんです。

呑んじゃいけないとは言ってません。

ただ、バズったからには影響力を考えて正しい発信をしてほしいんです。


「今日もいい汗かいた29歳、今夜もビールがうまい」

…も怪しいのに、

「パレット積みオンリーの会社に転職した49歳、業務がなんでもビールがはうまい」

…までできないでしょう(苦笑)。

それは本人もわかってるとは思います。
今は彼女の人生のバブル期でしかないし、いち個人の人生の花ざかりで済めばいいがこの件は社会問題を含んでいる…。

絶対に、本人が言うような「業界イメージのアップ」というハッピーな結果では終わらない予感がする。

そしてすでにアンチの心ない言葉によるハラスメントやストーカー被害の危険性も…。
サジェストキーワード見るとわかります。危険だなと。

一時的に彼女の楽しそうなさまを見て業界に入ってくる若手が増えたとしても、業界の真実ではなくてオフでお酒呑んでるところにウェイトが置かれちゃってるのが問題なんですよ。
それに全部が全部彼女が行ってるような鷹揚な会社ばかりじゃない。

「酒呑みに行ってる時間なんか無いじゃん。思ってたより楽しくねえわ」

…ってなる子も多いと思うんですよね。

だってあの毎日のポスト投稿は同業者から見て不自然です…独りであんなに毎日のように小綺麗にして大量に呑み食いできるほどの時間と給料をくれる運送会社は正直言ってないです。
夢を壊すようで申し訳ないですが。

たとえこれが誰かの奢りでも、「映え」のために並べてるだけでもですよ、そもそも「疲労が最高のツマミ」っていう概念で仕事の楽しさを語るっていうのはどんな職業でも的外れでしょう。

だからあれを、本当の「トラックドライバーを楽しくやっている姿」と思ってほしくないのです。

ドライバー職の楽しさはもっと別のところです。


本人の人生がどうなるか

たぶん引き際も計算入れて動いてるでしょうけど、いつか落ち目になって一般人に戻る日がくるわけでしょ、最悪事故とか不祥事でもあり得るし…。
そうなったら今後どこ行っても「あの、業界イメージ引っ掻き回しちゃった人…」っていう黒歴史がついて回ると思うんですよ。
それを何十年も、歳取って再就職もどんどん難しくなっていくのに引きずって、メンタル保って生きていける?っていうのが心配ではあります。

あわよくばトラックドライバー職を踏み台にタレントになろうとしてるのか、ヤバいことに転んだら畑違いに転職すればいいやって思ってるかもしれないですけど。
こんだけ有名になれば、玉の輿で寿退社して働かなくても一生安泰!…ってもしかして思ってる?

でも自分を有名にしてる職業から手を引くことは、「運送業界を盛り上げたい」という主旨でついてきてる人を裏切ることになるでしょう?

さきざきいろんなことが起きて、思ったとおりになれなかったら、絶対アルコール依存症にならないって言える?
いつの日か知らない間に、「いろいろしんどいからビールがうまい」にすり替わるんじゃないかと…。

焦げ猫自身が、トラックに乗れずいろいろうまくいかない時期があってお酒を呑みすぎるようになって、アルコール依存症の治療を自ら受けたことがあるからわかるんですよ。

それも、焦げ猫にはまさに22歳の娘がいるので、いち大人としても他人事ではありません。

ライターの橋本さんは、「売らんかな精神の周囲の大人も悪い」とおっしゃってます。
確かに22歳じゃ社会的に成人とはいえ人生経験もまだまだなわけです。
自分の22歳を振り返って、現に22歳の娘がいて、22歳の男の子(大型免許取ったあとのカズオ)を描いてても思うけど。

仕事の経験もそんなにないのに業界を盛り上げようっていうのにまず無理があって、若い女性であること、酒豪であることをくっつけないと話題にならなかったわけでしょう。
てかそもそも逆なのかな、若手女性ドライバー➕酒豪で人気が出て、あちこちからオファーがあるから理由を考えなくちゃならなくなった、それが「盛り上げよう」。

人気の理由はコレ、焦げ猫世代の人は知ってると思いますが、「おやじギャル」がもてはやされたブームの再来でしかないんです。
SNSがある現在だから、いち個人がバズってるだけで。
それが、電車やバスで通勤してるような普通のOLさんとかだったらまだいいけど過失での殺傷能力の大きいトラックドライバー酒ってのが非常にマズイ…。

特に心配なのはやはり事故ですよね。
プロドライバーという看板で売ってて事故やったら、ましてやお酒のイメージがくっついてたら、たとえシラフのときの事故であっても、受ける社会的制裁は計り知れず、本人だけならまだしも当然業界のイメージも逆にますます悪化します。

最悪、社会的影響がひどかったら、「トラックドライバーは休日でも一切酒呑むな」「酒呑む奴は採用しない」…という風潮にもなりかねません。

焦げ猫は今の病気になる前は休みの日に自分で料理して家で呑むのが大好きでしたよ。楽しみのひとつとしてなら、彼女と同じでした。
呑めなくなった今でも、お酒が悪いとは言いたくありません。
それはドライバーの本音で、アンチはお酒というひとつの楽しみが奪われることを懸念してるし、ファンは酒気帯びで運転しなきゃいいじゃないかと言ってるだけの話で根っこは変わらないのではとも思います。
お酒を嗜む人に関しては、ですね。

で、「今」が崩壊したときの本人のメンタルとかその後の人生とか心配だし、安易に承認欲求に負けず、自分をもっと大事にして、目立つなら考えて目立ちなさいって個人的には思うんですよね…。

これ以上は年寄りの説教になるので言いたくないです。


この記事のタイトル「ショウビジネスに踊らされないで」は、彼女がSNSだけでなくテレビや出版などのメディアに大きく露出することによって、ショウビジネスによる演出もあるのにそれを見る人がまんま受け取ってしまうことへの危惧と、本人への警鐘でもあるわけです。

繰り返しますが酒を呑むなというのではありません。
影響力が大きいのだから責任持ってやってくれって思ってるだけです。


運送業界を盛り上げる方法はほかにいくらでもある

「運送業界を盛り上げたい」のは大いに結構だと思います。
私ももう自分が乗れなくなっても、そうしたいから有識者会議に参加してるし、若い人にドライバーの仕事の楽しさを知ってほしいから「カズオの運行日報」のようなマンガを描いたりしてる。

トラックYouTuberという形で発信している人もいます。

ちなみに「カズオの運行日報」は業務に関して実話ベースとはいえ基本すべて架空のキャラクターで、職場環境に関しては焦げ猫の理想も入ってますからセミフィクションではあります。
そして、そのすべての登場人物に「聖人君子のようなトラックドライバーの鑑でお酒一切飲まない」なんて設定はしていません。
むしろ年末年始の長期休暇に里帰りしない寮生の呑み会イベントのエピソードも予定してます(笑)。
お酒を避けてない、フィクション部分もある、という点だけ考えると彼女のドラマやマンガと同じなのかもしれませんが、私は、SNSでバズらなくても、お酒というアイテムを使わなくても、その拡散力が微々たるものでも…マンガという武器で運送業界の盛り上げに貢献したいと思うようになりました。

仕事がしんどい現実は現実として描く。
でも楽しいこともいっぱいあったから、30年やってこれた。

「カズオの運行日報」第1話の最後のページ、初めて自分のトラックをあてがわれたカズオの笑顔。
これだけじゃないけどこういう楽しさなんです。

「カズオの運行日報」第1話より

それをわかってもらえるマンガを描けたらいいなと思っていますが、アルコールや覚醒剤の問題もやはり実際あった話を知っているので、いずれ1度は話題にしなければと思っています。


運送業マンガ「カズオの運行日報」はこちらで〜す。


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