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解説「カズオ中距離デビュー」 カズオの運行日報 第14〜15話

今回はカズオが初めて単独で車泊のある中距離の仕事に出るお話でした。

焦げ猫も初めてのときはホームシックになりましたよ〜。
今みたいにスマホもないしエンジンもうるさかった(振動もかなり)のでなかなか寝つけなくて、しかも場所が国道8号線沿いの日本海を臨むようなエリアで…浜田省吾さんの「防波堤の上」が脳内無限ループ(爆)。

一般道利用で当時は休憩・休息の決まりもなく、まさに「哀しいほど自由」でした…。

やっぱり数回運行すればホームシックも一般道での距離感も慣れますが、今回のカズオの運行のように朝積めて翌着っていうような時間に余裕のあるケースは、ないこともないけど少ないです。
帰りも、15話最後のコマの槍杉さんの指示のように「次の仕事は地元で今日積みだから高速で帰ってきて」というのは経理としてはあまり歓迎しないパターンですね。距離にもよりますが、運賃発生しないのに深夜割引のない時間に全線高速ってのは。
良心的な荷主さんだと色つけてくれますが…。

でも、初めて単独で行くんだったらこれくらい余裕のある仕事に行かせてもらえると理想的ですね。
かくいう焦げ猫も、その「防波堤〜」で震えてた翌日、納品終えたら「帰りもゆっくりでいい」と言われ、たら汁定食食べて温泉入ってから帰りました(笑)。



食いっぱぐれ


基本、車泊のある中〜長距離の運行は、13話で佐竹さんが言っていたような工夫をドライバー自身が頭使ってやらないとなりません。

第13話より

というのも、「4時間につき30分の休憩」「運行開始から終了まで13時間以内」というコンプライアンス上の縛り(3/31までの旧制度。今月からはもっと厳しくなったはず?)があるうえ、「高速は深夜割引が効くように利用しなければならない」という経費上の縛りもあるからです。

「やっとマトモに寝させてくれる長距離の会社に入れた」
…と思ったら、意外にその縛りのせいで困ったりもしたんです。

減速車線上に路駐するしかなく朝4時ごろお巡りさんに「もう空いてるから中入って!」と叩き起こされたコトもあります。

今回のカズオの、

「シャワーも飲食店も遅くまでやってるような施設に行けず食いっぱぐれた」

…という経験は、それまでコンプラお構いナシのブラック運行か高速をほとんど使わない地場しかやったことのなかった焦げ猫が、ちゃんとした長距離の会社に入って初めてやらかした経験そのものです(笑)。

焼きおにぎりやたこ焼きを売っていた(ニチレイさんの)自販機は全部売り切れ、先輩ドライバーから「外にコンビニあるよ」と聞いてフェンス乗り越えて行ってみたら廃業してた…とかですね。

第15話より

しかし、2020年のコロナ禍ではシャワー使用禁止や飲食店の時短営業が一斉に行われ、作中のカズオのようにシャワーや食事にありつけない!!というのをほぼすべての車泊運行ドライバーが経験したと思います。

今はSA・PAの整備が進み、キャパシティの小さい施設にもコンビニができたりもしていますが、例えば大阪より西に行くのにメジャーな山陽道より中国道のほうが施設がしょぼい分空いてるので好んでこちらのルートを使う人もいます。
東北方面も常磐道は北へ行くほどわびしいんですが、そういう部分で東北道より狙い目と考える人もいます。

そういう「なんにもない」PA等を想定して食料や体拭きシートを常備しとくわけです。


チャート紙とは?


第14話でカズオが出発前にCDみたいなのを機械に入れてますが、アレは「アナログタコグラフ」という運行記録計です。

第15話より

昔はメーターパネルに鍵が付いててパカっと開けて用紙を交換するモノでした。

要は何時から何時までどれくらいの速度・エンジン回転で走ったか記録されるモノですが、現在ではこのアナログタイプを使う会社は少なくなりました。
もう20年以上前から「デジタコ(デジタルタコグラフ)」といって、メモリーカードやGPS連動の電波で記録できるようになっています。

アナログ式ですと、毎日の日報に何時から何時までどう動いたか手書きしたうえに最後にこの丸いチャート紙にもいろいろ記入する…というのが手間ですが、デジタコなら運行開始なら運行開始のボタン、休憩したら休憩のボタンを押す…というだけです。
デジタコが勝手に作ってくれる日報のほかに会社の日報も書くという会社も多いですがそちらはだいぶ簡略化されてきています。

デジタコのデメリットは、「しゃべる」のでドライバーがうるさく感じることです。

会社で設定したスピードを超えるとアナウンス・警告音。
急ブレーキ・急発進を感知するとツッコミが入り、4時間近く走ってれば「長時間運転です」とお節介を焼かれます。
そういう記録もしっかり残って点数化され、社内の評価として見せしめの材料にされるコトもあります。

でもこの音声アナウンス、デジタコのメーカーによって違ってて、いすゞ純正の「みまもりくん」システムは音声がよくできてておもしろかったですね(笑)。
「スピード、出しすぎですよ❤︎」
「疲れていませんか?休憩、取りましょ❤︎」
…とか。あれは人の声録音したモノじゃないかなぁ。
ほかはいかにも事務的な合成音声(イントネーションが不自然)なのでイラっとしました。

やはりデジタコは機械そのものよりシステムの導入にお金もかかるし改ざんしにくいので、アナログもまだまだ現役です。
もはや新車買うと標準で端末はついてくるのに、わざわざアナログつけてる会社もあります。

ただ、改ざん目的でアナログに執着してた会社でも、大きな事件をやらかすと半ば強制的にデジタコに切り替えさせられるようです。
それでも機種によっては改ざんできるようですが。

…ので、就職にあたってはデジタコの会社だから安心、アナログだからブラック…とは一概に言えないです。


オフィス家具、什器、建材等の「店入れ」


今回のカズオの仕事は工場で生産された製品をいわゆる「店入れ」する仕事です。
倉庫や問屋に納品するのと違うのは、直接使う人・売る人が待ってるっていうのを肌で感じるところですかね。
製品のエンドユーザーに近いといいますか。

「水害でダメになった店舗什器を急ぎで」は、実際にあったパターンです。
そうでなくても、オフィス家具の場合は建築中・リニューアル作業中の現場に入れることが多く、本当にあんな感じで佐官屋さんや鳶さんなど建築作業にかかわる人が集まって降ろしを手伝ってくださる現場が多かったです。
中には、お店のスタッフさん…普段はレジや品出しをするであろう方々がリレーで降ろして搬入というお店もありました。
人数いるので速い速い…。
「新しいものを建てている」現場なので皆さん活気づいている、というのもあって楽しかったですね。

第15話より。この「みんなでやる」雰囲気、スキです。

ただ、個人宅の建築現場や住居用マンションに足場や給湯器を持っていく仕事もしたことがあるんですが「監督さん不在の現場」はなぜか雰囲気が謎に悪いです。
いろんな専門職の人たちがきてそれぞれ黙々と自分の仕事をしていて肝心の発注者が居ないことも多く、ほかの職人さんは自分が発注したモノでないと相手にしてくれないうえ、「そこに置くな!」とか言うので(^_^;)

お店・病院とかだと納品日時には出荷元の家具メーカーの監督さん居るんですけどね。

建材のバラマキも、市場の配達と同じで初見殺し&皆んな言葉が乱暴フレンドリーだったりなのは同じですが、基本的に建材のほうは「建てたら終わり」なので市場のように馴染みになれるってところがないんですね。
慣れれば「半・置き配だと思って」やればいいので、淡々とこなしたい人にはいいと思います。


冷凍車ってそんなにうるさいの?


15話中でカズオが隣の冷凍車の音に辟易してますが…。

冷凍車を非難してるのではありません、焦げ猫も乗ってましたので「あるあるネタ」です。

カズオだって2tの冷凍車乗ってたのに?…と初期からの読者さまは思うと思います。

トラックに取り付ける冷凍機は、だいたい中型車(4t・増t)まではエンジンの動力を直結で借りて冷やす方式なので、冷凍機が回っていても「ちょっと音が大きいな」くらい。

が、大型車になるとそれでは冷やしきれないのと、走行に使う巨大なエンジンを回しっぱなしっていうのもなんなのでか、サブエンジンで冷凍機を回す方式が多いです。
このサブエンジンによる冷却が、排気量は小さいけど大きな音を出します。
ドライバーはアイドリングストップして休んでても庫内の温度が上がるといきなり作動しだすので、慣れたつもりでも一瞬ビクッとはしますね…冷凍車ドライバー当事者でも。

でも大型冷凍車の仕事やってると、しまいにゃ「あの音がカッコいいんだ」くらいになってきたり(あーソレは焦げ猫だけかも・爆)、そもそも誰もが必要とする食べ物メインで運ぶので…なんていうのかな、自分の仕事に持つ「誇り」がわかりやすいというのはあります。
わかりやすいというだけで、運ぶ品物に貴賤はないですけどね。

とりあえず、パーキング等のマスの場所は棲み分けされてるワケでもないし、カズオが「俺も来年(大型免許取れたら)乗るかも…」と言っていたように不可避だと思って冷凍車ドライバーでもそうでなくても慣れるしかありません。


いこいの時間を持つこと



第15話より

カズオがギターを忘れてメソメソしてますね。
いつのまにか泣き虫キャラになってしまってるけど、泣きたいときに泣けるからメンタル強い、っていうタイプかも…。
自分で描いといて他人事のようですが、以前のお話で神主さんにカズオが「あなたは強い人です」と言われたのは、他人の痛みを知ってたり中学生時代から働き詰めでも疑問に思わず続けてるって部分ですね。
焦げ猫はメンタルというか肉体が豆腐なのに極限まで我慢するタイプなので、「吸血鬼すぐ死ぬ」のドラルクみたいに突然「スナァ…」って崩れちゃうんですよ(爆)。

それはさておき、自分のトラックに楽器積んでるドライバーも珍しくないと作中に書きました。

楽器でもなんでも、寝る前の儀式というか、なんかこういうレクリエーションの習慣があると切り替えがうまくできます。
車泊ですとずーーーっと仕事してる気分になりがちなので、焦げ猫は寝る前に寝台でマンガ読むのが習慣でした。

正直、ブラック運行させる会社で車を停めていられるのが1日に3〜4時間しかないと、
「メシよりフロより眠る!」
…ってなっちゃうんですけどね。

このマンガに出逢ってくれた方々にはなるべくそういう会社に就職してほしくないですが、とくに「自分専用の車両」「乗り回しナシ」つまり私物持ち込みを休みや給料と天秤にかけちゃうと難しいモノがあります。
「乗り回し(自分専用の車両がない)」だと、楽器はおろかポットや着替えなど私物が置いておけないので、とくに長距離だと地味にストレスなんですよ…。
会社運営として乗り回しさせたほうが儲かるので、時間も短くお給料もいい会社が多いですけどね。
こと長距離をやりたいようであれば、専用車であるかないかとワークライフバランスとはよーく吟味してくださいね。


トラックドライバーの「やりがい」


コレはあくまでも焦げ猫の私的感想なんですが、やっぱりこの仕事の「やりがい」は「荷物を待っている人たちに、無事に届ける」コトだと思います。

仕事の「楽しみ」は業務ごとにいろいろあるけれど、「やりがい」はそれに尽きると言っていいと思います。

「ありがとう」や「ご苦労さま」ももちろんなんですが、荷受けさんがトラックのナンバープレートを見て、
「ええ〜○○からきたんだ!」
って言ってくれるだけでも、遠くからきた甲斐があったなと感じ取れます。
作中のように人が集まってくれてわっせわっせ手伝ってくれるのも、「荷物待ってたよ」感が伝わってくるし…。

無人納品、置き配よりも対面(荷受けさんがいる現場)が楽しいなと焦げ猫が思うのはその辺です。

これはドライバーの性格でわかれるのですが、人と言葉を交わすのが煩わしいので無人納品がいいという人もいます。
宅配なんかは数こなさないとならないので、時間の縛りなく置いてこられる置き配はドライバーにとっても助かるけれど…。

置き配メインだったり、挨拶があっさりだったりしても、第2話のように最後に「荷台が空になる」ことでも「やりがい」を感じられます。

第2話より

もちろん荷受けの態度が悪くて頭にくることもありますが、それだけにねぎらいのことばが頂けたときは嬉しいですし、何度も行くような現場なら打ち解けてくることもあるので、それもまたドライバー冥利です。

「より大きい車で、より遠くへ…」

…と、「やりがい」を追求したくなったカズオ。
コレ、焦げ猫がこの仕事の「沼」にハマったときの経験なのでした。


次回のマンガ「カズオの運行日報」は、業務のお話は少しお休みして、2話にわたって登場人物のプライベートを描く「番外編」です。

昭和ノリのギャグマンガがおスキなかた、80's前後の昔の洋楽がおスキなかた、ロカビリーがおスキなかた、空耳アワーがおスキなかた。
ぜひお読みにいらしてくださいませ(^^)

今回の解説の元マンガ、カズオの運行日報 第14話〜第15話はこちらです!↓

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