見出し画像

ブランクがあっても挑戦できる社会に

「あの話、どうなったの?」
「あぁ、今日受けてきたよ!」
「そうなの!?どんな感じだった・・・?」

幼稚園帰りに寄った公園で、突然ママ友たちが真剣な顔つきで話し始めた。でも、普段バス通園のため、久しぶりに公園に来た私には、何の話なのかさっぱり分からない。

尋ねてみると、ママ友のひとりがその日、8年ぶりの社会復帰を目指してパートの面接を受けたそうだ。

彼女が面接で話した条件は、

・週3勤務
・10時~13時半までの勤務希望

だった。この条件を見て、シフトに入れる時間が短いなぁと感じた人もいるかもしれない。

確かに短いが、幼稚園のお迎えが14時で、園の預かり保育は定員オーバーしている。だからお迎えまでの13時半までしかシフトに入れない。

短時間勤務希望に加えて、店長から言われたのが、
「8年も本当に何も仕事しなかったの?」
「どうしてその間、少しも働かなかったの?」
だそう。

もちろん、ママ友は8年間遊び暮らしていたわけではない。子どもを二人産み、下の子が幼稚園に慣れ、進級するまで育児に専念していたのだ。

ママ友は、「8年間のブランク、めっちゃ突っ込まれちゃった~!やっぱり今さら社会復帰って難しいかなぁ!?」と、悔しさをにじませながら笑っていた。

8年間のブランクを突っ込まれて感じた悔しさのわけ

画像6

子どもを産んでから8年間働いていないことが、そこまで突っ込まれるべきポイントなのだろうか。私は話を聞いて、すごく悔しくなった。

この悔しさはどこから来たのだろう。考えてみると2つの原因があった。

①専業主婦は何もしていないわけじゃない

1つ目は、「8年間、どうして少しも働かなかったの?」という言葉が、「専業主婦は暇だ」と言われているように感じたからだ。

専業主婦だって、日々家族の暮らしを守るために毎日戦っている。家事の効率化を常に図り、当然大人の思い通りに動いてくれない子どもたちにメンタルを強くしてもらいながら。

▼専業主婦が培うことのできるスキルについて、以前考察した記事

私は、専業主婦も効率化や臨機応変さといった、社会人として必要なスキルを磨けると思う。少なくとも、初対面の人に「何もしてなかったんでしょ?」と言われるほど、専業主婦は暇じゃない。

だから専業主婦の日々を軽んじた言葉に、思わず悔しさがこみ上げたのだ。

②事情があって仕事を辞めざるを得ない女性もいる

世の中には出産後も、元いた会社で働き続ける女性はたくさんいる。でも、なかには妊娠中の体調不良や家族の転勤など、様々な事情で仕事を辞めざるをえない女性もいるのではないだろうか。

また、事情がなくても、バリバリ働くことから離れる女性もいる。

私は仕事で体調を崩し、結婚を機にがむしゃらに働くことは辞めた。自分の心身を大切にしようと思い、家族の転勤を機に派遣やパートで働き始めた。出産後は育児に専念するため、専業主婦になった時期もある。

幼稚園のママ友の中には、介護士や保育士、ネイリストなど専門知識・技術を必要とする仕事をしていた人も多い。中にはかつて日本一の技術で表彰された優秀なママもいる。

でも、みんな妊娠や出産を機に仕事から離れ、今は専業主婦だ。ただ、専業主婦だからといって、みんな「働きたくない」とか「仕事が嫌い」なわけではない。話を聞くと、働けるなら働きたいとも思っているのだ。

ここに、2019年に内閣府が女性の職業意識の変化について調査したデータがある。

画像1

(引用:内閣府 「男女共同参画白書 令和2年度版」

見ると、「子どもができても、ずっと職業を続ける方がよい(ピンクの網掛け)」、「子どもが大きくなったら再び職業を持つ方がよい(紫の斜線)」と考えている女性は、合わせて83.4%にものぼる。

さらに、保育園と幼稚園に通う子どもの人数比を調べてみた。平成25年度と少し古いデータだが、3歳児については同程度の比率で、4~5歳児にかけては幼稚園に通う子どもの方が多い。

画像2

(引用:厚生労働省「保育をめぐる現状」)

ちょっと無理矢理だが、このグラフに、先ほどの83.4%という数字を当てはめてみると、幼稚園に通わせるママ達の中にも、ある一定数は「働きたい」と思っている人がいることになる。

実際、幼稚園にも預かり保育を活用して働くママはたくさんいる。その一方、働きたいのに働いていない幼稚園ママもいる。

これはなぜだろう。どういう違いがあるのだろうか。

その疑問を紐解くヒントは、女性の職業意識変化のデータにもある「子どもが大きくなったら」という言葉にあるのではないだろうか。

子どもが大きくなるのはいつ?問題

画像4

私の周りのママの中にも「子どもが大きくなったら働きたい」人は多い。先ほどの女性の職業意識変化のデータからも、およそ5人に1人の女性が「子どもが大きくなったら働きたい」と思っていることが分かる。

でも、「子どもが大きくなったら」とは、いつだろう?
子どもが成人したら?小学生になったら?幼稚園に入ったら?

その感覚は人それぞれだろう。ただ、「働きに出れるくらい、子どもに手がかからなくなったら」というのが、おそらく共通の認識ではないかと思う。

手が掛からなくなる=まとまった時間が取れるようになること?

働きに出るためには、まとまった時間が必要だ。私のようなフリーランスなら、自宅で家事・育児の合間に仕事ができる。でも、会社員や派遣、パートの場合、職場で一定時間、仕事をしなければならない。

「まとまった時間を取れる」という観点からは、幼稚園入園が1つの「子どもが大きくなった」タイミングだろう。でも、幼稚園の場合、お迎え時間を考えると、冒頭のママ友のように10~13時半といった短時間しかシフトに入れない。

果たして短時間でも雇ってくれる会社やお店は、どれほどあるのだろうか。

先ほどの、内閣府 「男女共同参画白書」には、以下のようなデータもあった。

画像3

(引用:内閣府 「男女共同参画白書 令和2年度版」)

2019年、女性の非労働力人口2,657万人のうち、231万人もの人が働きたいと思っているのに求職していなかった。その理由としては、「出産・育児のため」が31.1%で最も多く、次いで「適当な仕事がありそうにない」が28.4%だった

この28.4%の人の中には、「子どもが入園(入学)して、短時間なら働けるものの、雇ってくれる職場がない」と考えている人も多いのではないか。

実際に「短時間で雇ってくれる職場がない」と考えて、求職前に幼稚園の預かり保育を検討するママも何人かいた。だが、私の周りの幼稚園の預かり保育は、既に定員オーバーだ。もちろん仕事が決まっていたら、優先的に預かり枠に入れてくれる。でも、仕事が決まっていない場合、残り少ない枠に入れてはくれない。

パートを探す前に、まとまった時間を確保しようと預かり保育に応募したところで、預かり保育の通年利用枠には入れないのだ。

ママが活躍する社会になるためには園のあり方から考える必要がある

今回、色々なママ達から聞いた話を元にこのnoteを書いたが、私の周りはほとんど幼稚園ママだ。保育園に子どもを通わせるママ達や、その他の環境のママ達にも、幼稚園ママとは違った苦労があるだろう。

たとえば、私は保活をしたことがないが、想像以上に大変だと聞く。希望する保育園にはまず入れないし、希望する園に決まらなくても、預けられるだけ良かったと話す人もいる。

幼稚園は幼稚園で、働くためには思っていたよりも時間が取れないと感じる人も多い。預かり保育は枠が少ない場合もあり、あてにならない園もある。

保育園を増やしたり、幼稚園の預かり保育の枠を増やして欲しいと言いたいところだが、そうなると先生達の待遇も気になる。

教育新聞(2019年10月10日付)によると、幼稚園教諭は年間休日数が平均130日ほど確保できているものの、保育士は平均で105~110日と少ないうえ、週休2日の確保も難しいそうだ。

ママ達が働きたいときに自信を持って働ける社会になるためには、幼稚園や保育園のあり方から、先生達も含めて一緒に考えていかなければならないのだと思う。

わたしもいつか幼稚園ママだけでなく、色々な立場や環境のママ達から話を聞いて、ママ達が挑戦しやすい社会について多角的に考えてみたい。今回このnoteを書いて、そう思うようになった。

無理と決めつけず、自分らしい人生に挑戦しよう

画像5

「パート、受かったよ!」

数日後、ママ友から嬉しい報告を受けた。4月の午前保育期間が終わったら、働き始めるそうだ。

会うたび気になって「採用の連絡来た?」と尋ねていたので、私もとても嬉しかった。他のママ達も結果が気になっていたらしく、たくさんのママ達が「どうだった?」とたずねていたようだ。

結果的に、元々面接を受けた店舗ではないものの、チェーン店の他店舗で採用になったそうだ。実は面接の時、さんざんブランク期間を突っ込まれたものの、堂々と質問に答えていたら、「君、接客向いてるね」と褒められたらしい。

「働きたいけど、短時間だから無理かもしれない」
「働きたいけど、ブランクがあるから無理かもしれない」

そう決めつけるのはもったいない。挑戦すれば、意外とチャンスは多いようだ。なぜなら、今回ママ友がパートに受かったことをきっかけに、他のママもパートの面接に挑戦して、数年ぶりに働くことになったからだ。

今回のママたちの挑戦には、わたしも勇気をもらった。専業主婦として得たものに胸を張って、短時間でもブランクがあっても、自信をもってやりたいことに挑戦する女性が増えたら良いなと思う。

【後日談】10~11時ではシフトに入れない問題

春休み最後の日、幼稚園から手紙が届いた。中には4~5月の日程表が入っていた。

幼稚園からは「例年だと、4月の3週目からは通常保育(14時まで)です。」と言われていたが、届いた日程表には「5月10日まで11時半までの午前保育です。」と書かれていた。

・・・え、聞いてたのと全然違うやん?長くない?なんで?

「午前保育期間の預かり保育は、通年利用の園児のみ。臨時利用は不可です。

ほーん・・・。え?

その後パートに受かったママ達とLINEで共に絶叫した。
そんな大幅な変更、はよ言うて。みんな4月の3週目から働く気でいたから、パート先に電話しづらいと言っていた。さすがに10時~11時まででは、シフトに入れてもらえない。

働くママにやさしい世界は、はるか遠い。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?