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お見合いしたくなかったので、無理難題な条件をつけたら膝枕が来た件について

かわい いねこです

まずは恒例、今井先生、それから今回はHARUさんにお詫び申し上げます。

不快だったらとっとと取り下げますので言ってください。

煩悩膝枕を聞いて、どこかでナオキを出したかったのです。

ナオキはここでうずもれてしまってはいけない膝だと思いました。

タイトルは例によって、コミックからのパクりですが、アニメ化していないので内容
はわからず、ウィキ先生に伺いました。


所でお兄さんの膝枕は最強です。

うちにいたねこも大きくて暖かいお兄さんの膝が大好きでした。

友人のうちのでかいねこは、身長180オーバーのドイツ人留学生のお兄さんの膝によ
く乗っかっていました。

おばあちゃんもヒサコもいいけど、お兄さんの膝、最強です!



お見合いしたくなかったので、無理難題な条件をつけたら膝枕が来た件について


休日の朝。独り身で恋人もなく、打ち込める趣味もなく、その日の予定も特になかっ
た男は、チャイムの音で目を覚ました。

ドアを開けると、宅配便の配達員がダンボール箱を抱えて立っていた。オーブンレン
ジでも入っていそうな大きさだが、受け取りのサインを求められた伝票には実家の父
親の名前と共に、「枕」という商品名が書かれていた。

「枕」

なんじゃらほいとばかりに男がいぶかし気につぶやく。

「受け取ってもらって、いいっすか?」

配達員に急かされ、男は「取扱注意」のラベルが貼られた箱を両腕で受け止めると、
お姫様だっこの格好で室内へ運び込んだ。

男は思い切りガムテープを引き剥がし箱を開けてみた。

すると、  少し無骨でがっちりとした男性の両脚が、正座のかたちで収まっていた。

「な、なんなんだ、これは!なんなんだ、これは!」

同梱されていた説明書には、健康的で嫌味のない『標準男性』の膝枕。
品名は『ナオキ』とあった。


そこにタイミングよくなのか悪くなのか、電話の呼び鈴が響いた。

今の時代家電にかけてくるのなんて実家の家族しかいない。

「いやー、そろそろ届いたころだろうと思ってな。お前の好みに合う女性がなかなか
見つからないので、とりあえず体脂肪40%、やみつきの沈み込みを約束する「ぽっち
ゃり膝枕」っちゅうのを送っといたわい。ま、寂しいとは思うが当面はこれでしのい
でくれ。」

電話の向こうから、オヤジのドヤ声が響いてきた。


最近、テレビやSNSなどで話題になり、爆発的に売れている商品に「膝枕シリーズ」
というものがあるらしい。
見た目も手ざわりも生身の膝そっくりに作られている。さらに、感情表現もできるよ
うプログラムを組み込まれている。だが、膝枕以外の機能は搭載していない。膝を貸
すことに徹している。

ラインナップは豊富で、男性向けから女性向けまで幅広くカバーしているらしい。


「ぽっちゃり膝枕って、届いたの男の膝なんですけど!
しかもナオキって何の倍返しなんだよ!」
「え?!」

数百キロの距離をはさんで空気が凍り付いたのがわかった。


男がネットで膝枕サイトを確認したところ、ぽっちゃりの横にナオキがあり、どうや
らオヤジは間違えてナオキをポチってしまったらしい。
しかも枕は特注であるため、返品は不可能との事。


「どうすんだよ、こいつ」

とりあえず下着だけではナンなので、自分のハーフパンツをはかせてみると、ナオキ
は心なしかうれし気に膝を弾ませた。


事の発端は田舎からの執拗なお見合い攻勢であった。
「もういい年なんだからそろそろ身を固めたらどうだ。」
田舎の親から怒涛のようにお見合い写真が送られてくる

男の家は地方ではそこそこの名家であった。
大学進学とともに東京に出てきた男は卒業後も家族の反対を押し切り、家に帰らずそ
のまま東京で就職した。

そして今である。

お見合いも結婚も興味のない男はお見合い相手に「体脂肪40%以上の美女」という無
理難題を出した。

条件に合う女性をなかなか見つけられなかった父親は、苦肉の策として、ぽっちゃり
膝枕を送ってきた・・はずなんだが・・!


電話を切った男はナオキに向き合うとため息とともに苦笑を漏らした。

「よりによって、どうしてお前なんだよ。」


男は1か月前の会社の飲み会を思い出していた。
たまたま彼がかかわったプロジェクトが成功し、その打ち上げだった。

「先輩、実はできる人だったんですね。」

隣の席になったヒサヤマが親し気に話しかけてきた。

イケメンで卒がなく、誰にでも親切でフレンドリー。
男はそんな男女共から愛される天然人たらしのヒサヤマが少し苦手だった。

したたかに飲まされた男は酔った頭が傾いてヒサヤマの膝に倒れこみ、膝枕される格
好となった。

その瞬間、男はその心地よい弾力と温かみに魅了された。

骨抜きになっている男の頭の上から、ヒサヤマの声が降ってきた。

酔っぱらった「先輩、かわいいですね。」

男は酔った頭で考えた。自分がヒサヤマを苦手と思っていたのは、言い換えると意識
していたという事なのではないか。


その後も男はヒサヤマの膝が忘れられなかった。

しかし、恋愛経験がない男は、それがどういう感情かもわからないままもやもやした
気持ちを抱えたまま、ひたすらヒサヤマを避け続けていた。


「思ったより、よく出来ているものだな」
男の声に反応したのか、膝が嬉しそうに弾んだ。何故かそれを見ていたら、心が掴ま
れるような感覚に陥った。頬が少し熱い。男は膝枕に指先で触れて手触りを確認した
。男の喉が鳴った。

思い切ってナオキの膝に飛び込んでみる。

大きさと言い、弾力と言い、あの飲み会でのヒサヤマの膝を彷彿とさせる夢のような
フィット感に男は溺れた。

リアルな恋愛なんて面倒くさい。結婚なんてもっと面倒くさい。アクシデントとは言
え、親父はなんて素敵な物を送ってくれたのだろう。
ナオキのひざがあればもう何もいらない。

それより何より、親父が本当に体脂肪40%のリアル美女を見つけてきてしまったらど
うしよう。
性格が合わないって断るか!?

いずれは実家で親父の仕事継がなきゃいけないのかな。

ヒサヤマの「かわいい」ってどういう意味だ!?

男はナオキの暖かな膝の上でまどろみ始める。
もう何も考えたくない。

窓から差し込む暖かな日差しが気持ちいい。
時間はもう昼近くになっていた。


男はこの時まだ知らなかった。
保証書の隅に肉眼で読めないほどの細かい字で注意書きが添えられていることに。

「この商品の、返品・交換は固くお断りいたします。責任を持って一生大切にお取り
扱いください。誤った使い方をされた場合は、不具合が生じることがあります。

そうなのだ。二股でもかけようものなら、頬は膝枕に沈み込んだまま一体化してしま
うのだ。
皮膚が溶けて膝枕にくっついてしまうのだ。
膝枕はそうプログラミングされている。


休日の午後、何も知らない男の頭をナオキの暖かな膝がしっかりと受け止めていた。

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