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見えなくても水泳大会~やはりオタクはお呼びじゃなかった!!~

先日、無謀にも東京都障碍者スポーツ大会の水泳競技に初出場した。


なぜそんな展開になってしまったかと言うと、コロナ禍で本格的に家から出なくなっ
てしまった私、これではこの年でフレールになるかと危ぶんでいた。

そんな折、全盲の友達に誘われて、彼女と一緒に水泳を習うようになった。
そしたら私の分際でクロール50m泳げるようになった、背泳ぎもできるようになった


目が見えていた大学生のころ、おばさんに混ざって近所に水泳を習いに行ったものの
全く泳げるようにはならず早々に撤退。
そんな私が泳げるようになったのは、辛抱強く手取り足取り教えてくれたコーチのお
かげ。感謝してもしきれない。


でもってすっかり調子をこいた私は水泳大会にエントリーした。
クロールは競争率が高そうなのでマイナーそうな背泳ぎに出場することにする。

全盲クラスは黒いゴーグルをかけなければいけない。ほとんど視力はないけれど、空
間認識だけはある私は水中で真っ暗だと不安なのでとりあえず弱視の部にエントリー
した。


会場は地方によっては地元の障碍者スポーツセンターになるらしいが、東京はオリン
ピックでおなじみのアクアティクスセンター。
もう物見遊山のミーハー気分でテンションが上がる。
アニメ「フリー」の聖地でもあるのだ!

(注:後でフリーオタの友達に聞いたら聖地は前の辰巳のプールだったんじゃないかと
いう話)


しかしレースが近くなってくるとだんだん不安になってきた。
当日の段取りやプールの様子なんかもよくわからないので主催に問い合わせる。する
と恐ろしい事実が判明!!
水深は2m、水温28度

ちなみにいつも練習している障碍者スポーツセンターの水温は32度くらい。もちろん
足もつく。

これはもう溺れ死ぬやつかもしれない!!
事前に様子を見に行きたかったが、アクアティクスセンターはほとんど一般公開され
ていないので出たとこ勝負になる。


そして当日。当たり前だけど、本当に水深2mだった!!

ウォーミングアップができるというので恐る恐る水に入る。水温が思ったより冷たく
なかったのが救いだったが、怖いのでプールのへりやコースロープにしがみついてい
るのが我ながらダサい。
他の選手はどんどん泳ぎ始めていく。

コーチに「あっちで待っているから背泳ぎで泳いできて」と軽く言われ、恐る恐る泳
ぎだしたが、もうほとんどコースロープを手で探している感じなので練習も減ったく
れもない。

25m先で待っていてくれたコーチが、「じゃ、クロールで戻って」とまた軽く言う。
そりゃそうだ、クロール25mなんていつも泳いでいるんだから泳げないわけはないの
だ。

それでも途中でコースロープにつかまってしまう。

腕もいつものように回せていないから、コーチには「全然泳げない人の泳ぎになって
るよ」と笑われる。

それでも背泳ぎは息継ぎがない分いくらかまし。背泳ぎでエントリーして本当によか
った!!クロール50mだったら確実に死んでいた。

背泳ぎのスタートは飛び込みがないので、飛び込み台の下にあるバーにつかまってス
タートする。このバーの高さも事前にわからなかったので懸念材料だったのだが、あ
まり高くなかったので助かった。

スタート練習というのも何回かやらせてもらったが、怖いなりに何となく慣れてきた
。これならそれなりに泳げるかもという感触。

想定外だったのは、自力で淵に上がれない。腕の力だけではなかなか上に上がれず、
コーチやスタッフに引っ張ってもらう。
これも相当格好悪かった。

この段階で大して泳いでいないのにもうくたくたになっていた。
日ごろの練習の時は休みながらも1kmは泳いでいたのに、何という体たらく!

会場がめちゃくちゃ明るいのもハイテンポな音楽が流れているのも、レースが始まる
とストップウォッチの音が流れたりするのも煽られている感じで落ち着かない。

コーチにはキックは多めにだけど、腕はゆっくり大きく水をかくように言われている
のにやたら気が焦る。


そしていよいよ本番。もう生きて帰ることだけ考えようと腹をくくる。

あまりうまくはいかなかったけれど、いつも通りスタートできた。
練習の時も鼻に水が入ったり、水を飲んでしまうなんてことはよくある。それでもリ
カバリーできた。しかし本番に限って水が器官に入って窒息しそうになる。しかも水
深は2m!リタイアしようにも途中で立つことはできない。

息継ぎがないから苦しくないのが背泳ぎなのにこれはどうしたことか。練習でもこん
なことは一度もなかった。
たった25m、、とにかく対岸に着くことだけ考える。

結果は散々だった。コーチもマジでお溺れるかとひやひやしたようだ。
しかしこれが公式記録に残ると思うともうがっかりだ。


朗読の舞台でも練習では間違った事がないところで思いっきり噛んだりする。仲間内
では「舞台には魔物が住んでるよね」とよく話している。魔物はどうやらプールにも
いるようだ。

コーチは場数だよ」と慰めてくれた。

まっすぐ泳げない視覚障碍者がコースロープに当たってベストなパフォーマンスがで
きないのは仕方ない。でもせめて普段から足がつかないプールで練習できれば本番で
も落ち着いて泳げるはず。

課題はたくさん残された。


もらったのは参加賞のタオル。昔銀行で口座を作るとくれたような熨斗紙がついてい
るやつ。それから同じカテゴリーの選手が二人しかいなかったので、1分かかろうが1
0分かかろうが棄権さえしなければもらえる謎の銀メダル。


リベンジはしたいけれど、都大会は年に一度しかない。秋あたりに障碍者スポーツセ
ンターで記録会があるらしいのでそれに出てみようかな。


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