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見えなくても飲み会に参加しなきゃダメ?!

私はほとんどお酒が飲めないので見えていたときから酒の席は苦手だった。
仲のいい友達と何人かで料理がおいしい店に行ってソフトドリンクを飲みながらおし
ゃべりしたりするのは楽しかったけれど、大学のコンパとかは苦手だった。

特にOBが来た時なんか、女子の先輩に「ビール継いできて」なんて言われると、「ホ
ステスか?!」と突っ込みを入れそうになった。

どうやらコップが空になっている男の先輩を目ざとく見つけてビールを注ぎに行かな
いと行けないらしかった。でも当時矯正視力0.1だった私には不可能な芸当。それよ
か何で学生同士なのにそんなことせにゃいかんのだ。

昭和の大学ならあるあるなのかもしれないけれど、視力以前に女子校で純粋培養され
た私にはあまりの違和感。これはとっとと退却するが吉とばかりサークルを辞めた。


いよいよ見えなくなってからは逆に上げ膳据え膳になったけれど、大勢の集まりはど
こに誰がいるのかもわからないし、慣れない場所では一人でトイレを探すこともでき
ない。ガイドヘルパーさんをお願いすれば仕事なのでつきっきりで面倒は見てもらえ
るけれど、輪に溶け込むのは難しい。

会社の集まりなどはヘルパーさんをお願いするわけにもいかず、結局会社の誰かが責
任をもって私の世話係をさせられる。

学生時代の友達同士の集まりでも5、6人になると何となく私の担当みたいな人ができ
る。その人は必ず私の隣に座ることになるから他の人と自由に交流できなくなる。
友達はそんなに気にはしていないのかもしれないけれど、私は申し訳ない気持ちにな
る。

反対に会社の人はあからさま。私の事が嫌いなわけではないだろうけれど、友達でも
何でもないわけだから1次会で早く返して親しい同僚と次の店に行く気満々だ。

そんなわけで申し訳ないのもあり、私は会社の会合には参加しなくなった。そしたら
もう声もかけられなくなった。しかし皆の平和のためにはこれでいいのだ。


若井視覚障碍者で会社の同期会に誘ってもらえないとこぼしていた人がいたが、逆の
立場で考えてほしい。
羽目を外して飲んだくれたいのに、しかもお金も払っているのに、なぜ友達でもない
ただの同僚というだけの障碍者の世話をしなければならないのか。怪我でもさせたら
大変だし、ちゃんと家に帰れたか心配で記憶を失うまで飲み倒すなんてできないだろ
う。
こっちはそこまで気にしなくともと思うけれど、見える人は心配なのだ。私もいっし
ょに行った人によっては家に帰りついたらちゃんと連絡している。


ほとんどの人は悪気もなければ仲間はずれにしようという気持ちもないだろう。けれ
どもやはり手をかけさせることには変わりない。だから大勢集まる 場からは自然に
足が遠のくようになった。

視覚障碍者のグループでも宴会となると誰がどこにいるのかわからない。たまたま仲
のいい人がいればその人とずっと話している。でも親しい人を見つけられなければ何
となくぼっちな感じで終わってしまう。ボランティアさんがいれば食べ物や飲み物は
持ってきてくれるけれど、それはそれで何となく居心地が悪い。


全盲難聴の友達は見えないから目も合わないし自分に話しかけられたのかどうかわか
らない。話しかけてくれているのに無視してしまう事もあるから飲みの席は苦手と言
っていた。


見えない人の中にも飲み会大好きな人はたくさんいるけれど、それは気の置けない仲
間内前提だろう。やはり表面だけの付き合いの会社の人たちとの飲み会なんていくら
飲み放題であっても招待を失うほど飲むなんてことはできないに違いない。


なかなか会社に溶け込めなくて鬱になる障碍者は多いと聞く。しかし以上の事を考え
たら少なくとも手がかかる視覚障碍者やコミュニケーションが取りづらい聴覚障碍者
は溶け込みづらいのは必定。悪気なく忘れられる事が多いのだと思う。時々声をかけ
てくれたり食べ物や飲み物を取ってくれるだけありがたいと思った方がいい。見える
人は始終動いているから自分だけにつききりというのを期待する方が厳しいのは理解
できるはずだ。

そしてそういう雰囲気が苦手なのは別に障碍者に限った事ではない。障害の有無にか
かわらず大勢の中に入っていくのが苦手な人はいる。自分たちは確かにハンデはある
分不利ではあるけれど、コミュ力とか性格とか別の要素も絡んでいるという事を忘れ
てはいけない。

もし本気で周りから悪意を持たれていると感じたら障害じゃなくて別なところが問題
なのではないかと自省してみた方がよさそうだ。


ドラマに出てくるような「普通の人」にあこがれる気持ちもわからないではないけれ
ど、会社以外にもスポーツや趣味のサークルはたくさんある。そこで同じ障害がある
人でも健常者でも友達を作る事はできるはずだ。

大人になれば学生時代のように学校という狭い世界に囲われる必要はない。どんどん
外にも世界を広げて人生をエンジョイできればそこに障害の有無何て関係なくなるは
ずじゃないかな。

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