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見えなくてもえらい人

アスリートの知り合いが、凡人は努力しまくってやっと天才のスタートラインに立て
ると言っていた。

子供のサッカーを見に行ったら、一人めちゃくちゃ上手な子がいて、結局その子の一
人勝ち。その子は後に有名なサッカー選手の○○だった事が判明、なんて話もあった



やる気に勝るものはない、グリットが勝敗を決めるなんて嘘じゃんと思うけど、一方
ではこんな人もいる。

頭もよくて器用で何でもやればできてしまうのにとにかくわがままで飽きっぽくて何
をやっても続かない。結局何も身につかず、今は専業主婦?いやいや、主婦業もちゃ
んとやっているのかわからないという人もいる。

要するにいろんな人がいるって事だ。


そんな中で私がえらいと思った人たちがいる。


一人は盲学校の全盲の英語の先生。
彼は中途失明者。

点字は中途失明者にとって大きなハードルである。
英語の点字は略字と言うのがたくさんあって、よく使うandをa、butをbで表したり、
tionや、過去形のedなどにも決まった略字がある。
日本語の点字もできない中途障碍者が多い中、英語までマスターするのはどれだけ大
変だったろうか。

しかも趣味で勉強するならともかく、教師となるとさらにいばらの道である。
テストを作ったり、生徒が書いた回答を読んだり、成績を付けたり‥。
中途の全盲だとあまりサクサク動けないだろうから、晴眼の先生との軋轢なんかもあ
るかもしれない。
こんな予想できるハードルに敢えて挑戦した先生はよほど英語が好きだったのだろう
と思う。しかし、好きなものとはいえ、見えないゆえに付随してくるだろう英語以外
の困難にも体当たりしようという根性はもうえらい人認定確定である。

ちなみに私も大学で英語の教職は取っていたし、マッサージよりは英語の方が適性が
ある事もわかっていたけどスタンダードな盲人ルートに逃げてしまった。


それからやはり中途失明者で音大に行った人がいる。

彼女は高校生くらいで視力が落ちてきて、進学を諦めたのかもしれない。
でもどうしても音大に行きたかったのだろう。見えなくなってから一念発起して受験
した。

ここでまた行く手を阻むのが点字である。
どう表現されているかは知らないが、点字楽譜と言うものがある。
英語同様点字楽譜のルールを覚えるのは大変な上、中途失明者は点字を読むのが遅い
。それでなくても見えないと楽譜を見ながら楽器を演奏することができないから暗譜
をしなければならない。

やりたいことのために困難な道を努力で踏破した彼女もやはりえらい人だ。

努力も才能なのだろうが、こういう諦めない人たちは私にとってはえらい人なのであ
る。


以前、視力が落ちていく過程で、どのように障害を受容したのかと聞かれたことがあ
る。

いやいや、私は需要はしていない。すべてを諦めたと答えた。
ずぼらでめんどくさがり、最低限の努力しかできないし、やりたくない。そこでカバ
ーできないことは諦める。

一番得意なはずの朗読やナレーションも、点字ができない、編集ができないから戦力
外と言われ、とっとと引き下がった。
編集は勉強すればできるだろうが、点字はもうお手上げである。

めんどくさいから諦めるのも選択肢だが、そこをものともせず突き進んでいけるグリ
ットのある人はもうそれだけで私にとってはえらい人なのだ。


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