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豊津徳【HozuTalk】01死と生をアートで巡る

 先日自己紹介する機会があり、ふと「趣味は文字起こし」と言ってみようと思い言いました。週間ICUCの文字起こしで毎週1万字をいじるのに集中できないことも増えて来てましたが、趣味と言ってしまうとそこはかとなく気楽。しかも新たに始まったHozuTalkが面白すぎる!聞いただけでは頭に入らない私はどうしても文字にして少しでも頭に入れたくなりました。
 欲しい文字は自分で起こす。初の週間ICUC以外の文字起こし(と言っても半分いつも通り感)、初の2万字超です。

 最後に豊津さんの×3、話題に登った自由大学の講座レビュー×2とYouTube×2のリンク、マインドマップアプリで作ったマップを添付してあります。動画で足りなかった人向け22529文字です。
(動画で足りる人は動画で十分です)

山本豊津(東京画廊)×ヨウイチロウ(バラエティプロデューサー)のアートを巡る知のライブトーク第一弾、【8月21日金曜20時】

ヨウ どうもみなさま、おはようございます。夜だけどおはようございます、すいません。バラエティプロデューサーのヨウイチロウと言います。角田陽一郎なんですけど、最近ヨウイチロウと名乗ろうかなと思いながらこのライブ配信始めております。
 えーとあれですね、何なのかというと、山本豊津さんとう方がいらっしゃるんですよ。素晴らしく面白いお話をしていただける、東京画廊というギャラリーのオーナーでいらっしゃるんですけども。僕はもう何年か前からお知り合いなんですけど、毎回お話しているとですね、面白いお話ばっかを教えていただけるので、こんなに面白い話をを誰も聞いてないところで話しているのは勿体ないんじゃないかと思いまして、ならば youtube live 配信してみようかなぁなんて思って始めさせていただきますと。
 で、一応、山本豊津さんで、番組名が「HozuTalk」豊津徳(ほずとく)と書いて「HozuTalk」という感じで番組を始めたいと思っております。はい、ということで早速お呼びしたいと思います。東京画廊のオーナー山本豊津さんです。

1.

豊津 こんばんは。
ヨウ はっはっはっ!横から来るんだ!どうもおはようございます。よろしくお願いします。
豊津 どうも、どうも、よろしくお願いします。
ヨウ すいません、どうも、変なことに声かけちゃて。
豊津 いえいえ、楽しそうなんで。
ヨウ そこ、あれですよね?東京画廊ですよね?
豊津 はい。私どもの画廊です。応接室で書庫代わりみたいなことにもなってますけど。
ヨウ なるほど。なんかアートの本が後ろにたくさんあってすごいな。
豊津 そうでしょ?これね一冊20万ぐらいする本もあるんですよ。
ヨウ うわぁ!それはもうなんて言うんですか、アート自体にも価値があるけどそれをこう集めた本にも価値があるみたいなことなんですか?
豊津 というかその本に載っている作品がみんな数千万〜何億になっちゃったの。この本がないとその価値が担保できないって本があるんですよ。
ヨウ えぇ〜!!
豊津 だから中国の本なんですけど、それはあの中国の人たはどうしても欲しい本なんですよね。

2.

ヨウ なるほどなるほど!ということでまぁこんな感じでざっくばらんにお話ししようというってことなんで、よろしくお願いいたします。
 えっと、ちょっと自己紹介してもらっちゃってもいいですか?山本豊津さんというのはどんな人間なんだってことを。
豊津 私はあの父の跡を継いでちょうど父が創業して今年で70年なんですよ。私はその2年前に生まれてますんで1948年に生まれまして今年、明日が誕生日で。
ヨウ そうなんですよね!明日誕生日なんですよね、おめでとうございます!お幾つになられるでしたっけ?
豊津 72歳。今年も子年だよね?確かね。僕はネズミの12×6になるのか。
ヨウ だから年男ですね。ちなみにここで言っちゃなんですけど僕も今週の月曜日に誕生日で。
豊津 あなたとかは獅子座だよね?
ヨウ 豊津さんは乙女座?
豊津 23日から乙女座になるんだよね。だからちょっと乙女がかった獅子っていうことです。
ヨウ 僕は8月17日で50歳になったので、だから僕は天命を知らないといけないなと。
豊津 若いんだねまだ。色々教えてもらって助かってます。
ヨウ いやそんなことないんですけど、ごめんなさい、話折っちゃったけど、それで東京画廊を?
豊津 武蔵野美術大学はの建築家を1971年に卒業して学生運動が終わった頃ですよね。それで学生運動で影響もあったんで政治家の秘書になって7年間。
ヨウ そうなんですよね、政治家の秘書なんですよね、元々のお仕事が。
豊津 はい。それで面白いんですけどね、今の文化庁と一緒に税制の話をしてるんですけど、その税制の話の一番とっかかりはその私が働いた村山達雄先生っていうのが大蔵省の国税局の人で税の専門家なんですよ。そこで僕は就職して、今70歳過ぎて、なんかこう一緒に税制の話ししてるってなんかなね、すごくぐるーと回ってきた。

3.

ヨウ 僕、豊津さんと最初にお話し聞いた時に面白いなあと思ったのって、アートと政治って全然繋がりないんじゃないかなと思ってたんですけど、めちゃくちゃ繋がってますよね?
豊津 というかまぁ基本的に日本だけは繋がってないのは、日本に文化政策がないからですよ。フランスはアンドレマルローっていう人が文化政策をやってますから。ポンピドーセンターもそうだし、それからあのルーブルもそうだし。すべて文化政策にのっとってやってますんで政治とアートはもう密接な繋がりなんですよ。
ヨウ そういうことなんですよね。それを僕は豊津さんに最初にお会いした時にお話し聞いて、アートってなんかちょっと特別なものだと思ってたんですよ。ところが豊津さんのお話聞くと実は数学とも繋がってるは、経済とも繋がってるは、政治とも繋がってるは、なんならばあらゆるカルチャー、あらゆる生活等つながってるんだなぁということを知って。
 またなんというか豊津さん何でも知ってるから、僕一番最初にお話聞いてびっくりしたのは、アートの値段の付け方ってどうやってつける?みたいなお話を聞いた時に「角田くんわかってるかね?AKBの総選挙と一緒だよ」って言われたんです。つまり人気投票なんですよね。人気だっら高くて、人気じゃなっきゃそんなに高くないってだけなんですよね。僕それまではアートってよく知らないけど高いものとかあるのかな?なんて思ってたんですよ。
豊津 AKB48が有名にならないと価値上がらないじゃないですか。だから無名で価値があるものっていうのはないんですよ。ところが日本だけでなんか人から隠しているとものすごく価値があるっていう風に思い込じゃってるのね。
ヨウ なるほど、それってあれなんですかね、秘仏っていうか仏像って出さなかったりするじゃないでか。それとやっぱりなんか日本ってちょっと考え方が一緒なんですかね、ご開帳しないみたいな。
豊津 日本は宗教改革がなかったから。フランスは宗教改革があって、ルーブルのミュージアムが解放されて、アートは国民勢員に見せて価値が上がったでしょ。日本は例えば今、正倉院でも開放しないじゃない。
ヨウ 基本は隠してますもんね。
豊津 それで一部を時々出すわけで、僕たちは正倉院にある全貌を知らないんですよね。
ヨウ うん何が入ってるんだろうなーっていつも思うんですけど。
豊津 それがやっぱり日本の大きな秘仏っていう話にも関わるんですよ。
もう一つはね、お茶です、茶道。あの一度皆さんの前にお茶会で見せたものはじばらく使えないんですよ。去年出したお茶碗を今年出すとみんなに「また出した」って言われるんですよね。
ヨウ それってなんですか?あのその1回生に価値があるみたいな事なんですか?
豊津 そうそう、そうです。だから一期一会って言うじゃないですか。
ヨウ あー!そーか そーか そーか そーか そーか そーか!かだから一回見た家はお茶碗がまた出ちゃったら一期一会じゃないってことに。
豊津 そう、ないでしょ?また来たかって事になるから。一期一会ってものすごく価値があるように日本社会は言ってるけど極端にに言うと継続性がないってことじゃない。

4.

ヨウ ああそうだ、一回きりですもんね。僕ね、このトークを始めてどっかで話したいなと思ったけど、もう一回目になっちゃうんですけど、アートはサスティナブルなのかっていうことって僕すごいテーマだなぁと思ってるんですね。つまり今回のテーマで死と生をアートで巡るってタイトルを勝手に付けちゃったんですけど、っていうのは僕は17日が誕生日で明日は豊津さんが誕生でもあるのと、僕の誕生日の翌日に父が亡くなって、ちょうど50を待ってる亡くなったっていうのが僕が生まれた翌日に亡なりやがってみたいなこともちょっと思ったりもしてですね。
 で、もう本当に明後日とかお葬式とかなんですよ。だから本当はこのトークもちょっと忙しいんでやめようみたく言おうと思ったんですよ。そうしたら結局、通夜と告別式が日曜日・月曜日になったんですけど、スケジュールが全部ね、邪魔になんなかったの。つまり僕の仕事のスケジュール全部避けてうちの親父の葬式のセッティングとかされたんですよ。つまりオヤジとしてはお前働けと。俺が死んだとかを逆手にとってサボってんじゃねーよみたいなことが親父の遺言だったのかなぁなんて思うとすると、まさに豊津さんと1回お話をするというのはぜひやった方がいいんじゃないかなって。
豊津 お父さんが亡くなりましたよね?亡くなって初めてお父さんがどういう人生を歩んできたかに興味持つでしょう?亡くならないと持たないじゃない。
 だから命って区切りがあるから意味があるんで、その区切りっていうことがすごく大事だと僕は思うんですよね。で、それが死だと思うんだけど、最大の。ところが人間の欲望って究極は不老不死でしょ?ね。どの王様も不老不死を願ってエジプトでもミイラになるわけでしょ?
ヨウ つまり死にたくないっていうのを形にするわけですよね。
豊津 死にたくないっていうのは死ぬから死にたくないと思う。じゃあ不老不死になったらになったら私が生きている意味って何かありますかねえ?
ヨウ 僕は銀河鉄道999って機械の体、つまり不老不死を求めて旅するんですよね、星野鉄郎が。ところが結局、命というのはつまり死ぬからいいんだってことを彼は知って、大人になってあの旅を終わるんですよね。っていうのをたぶん小学生で見たときに、不老不死の方がいいじゃんって思ったんですよ。ところが今の区切り見たいな話をと豊津さんされましたけど、確かにこのままずーっと続いたら何にもしないっていうか、それこそアートなんてものは生まれないんじゃないかなってことはちょっと思いますね。
豊津 だから僕たちは何らかの七五三とかね、成人式とかね、区切りを作ってるって言うのはやっぱりなんか生きて行く時に自分が生きてるって実感を持つためにそれぞれの年齢で区切れをつくって実感を持ってるんだと思うんですよ。
ヨウ もしかしたら誕生日ってのそうかも知れですね。だから12年に一周りで豊津さんの場合は6周り(笑)。

5.

豊津 それかもうひとつ、僕たちは自分で望んでこのように現れたわけじゃないじゃないですか。気がついたらこの世にいたわけだから、たぶんそこから理不尽という言葉が生まれだと思うんですよね。で、理不尽があるから芸術があるわけですよ。ヨウ えっ?!というのはどういうことですか?
豊津 例えば皆この世の中に自分が生まれたくないのに生まれた悩みを持ってるから、
ヨウ 原罪ってやつもそうかもしれないですね?
豊津 そうそう。だから芸術が必ずこの理不尽と関わってて、生きている時の理不尽をどうやって解消するかということで芸術って発達してきたような気がすんだよね。
ヨウ いや確かにそうですね。だって生まれてきたのは別に自分の意思生まれてきたわけじゃないし、死ぬってのも本質的なそうですよね。自分の意思で死…
豊津 死ぬは選べるでしょ。自決ってのがあるから。だからこの頃話題になっている三島由紀夫先生も最後は自決を選んで自分の人生を作品のように作ったわけですよね。あれはだから僕は政治的な意味よりも文学者の作品として。
ヨウ つまりアートだったって事なんですね?確かに三島由紀夫はそんな感じがしますね。
豊津 千利休もそうでしょう?割腹だったでしょ。割腹したときに初めて千利休は謝れば助かるって北政所に言われるわけですよね。
ヨウ 「今なら許すわよ秀吉は」って言われるんですよね。
豊津 でもあそこで謝っちゃうと自分の作品が純粋性保てないと思ったんだと思う。そしたら生きて自分の作品をダメにするのか、死んで自分の作品を完成させるかと考えたら、三島さんと同じことを考えたと思うんですよ。
ヨウ それってさっきの一期一会の話じゃないですけど、結局死というのは一回しかないわけだから最大の一期一会なわけですもんね。それを区切りとしてやることでアートとして昇華されるというか。はぁ〜面白いなぁ!
豊津 アートがいいのは表現されたものが残るでしょ?シェイクスピアの…
ヨウ !!そっか、仮に死んでも個人は死ぬんだけど作品は残るんだ。
豊津 これが不老不死じゃない。
ヨウ ああそうか!うわぁちょっとごめんなさい、なるほどなるほど、つまり人間っていうのはもう1回きりだし、たぶん区切りがあって生まれて死んじゃうんだけど、アートっていうのも僕すごい1回きりのものだなあと思ったんだけど、それで出来上がった作品はサスティナビリティというか未来に残るわけですね。つまり三島由紀夫も千利休もどっちを選ぶかじゃないんですけど作品化したのではないか?自分の人生を。
豊津 あれはたぶん千利休が秀吉に謝って命を存えたとした時に、こんなに神格化されないでしょう?それがもう一ついうのは文学でいう、もしくはアートでいう夭折という概念にになりますよ。天才は早死にするっていうじゃない?早死にしたから天才なんですよ。だから後の作品がおかしくなる前に一番いいときに死んでるのが夭折ってこのなんです。
ヨウ じゃあゴッホとかって80歳とか90歳とかまで生きてたらこうなってなかったんですかね。
豊津 そうかも知れない。でもモネはさ、80まで目が見えなくなっても描いたじゃない。
ヨウ そうですよね、睡蓮が逆にどんどんを抽象化していくのが。

6.

豊津 だから本当の天才っていうのは亡くなるまで創造性を担保した人だと思う。
ヨウ 僕は全然アートなんて素人なんですけど、すごいあの若くして亡くなっているアーティストが多い中、ご長寿の方も多いですよね?アーティストって。僕それって実はそのアートを作るということが何て言うか次の生まれることになっているというか、なんかその死を伸ばしていくんじゃないかなというふうに。
豊津 そこに完成っていう概念が入るんですよ。ピカソがキュービズムを完成して、完成した後に次に出すでしょ?完成っていう区切りはないと次の展開無くなっちゃうじゃない。それから完成すると商品化するんです。
ヨウ なるほど、手に取れるわけですね。
豊津 完成しないと商品化しないでしょ?
ヨウ ずっと書き続けてますね。
豊津 だからねレオナルドダヴィンチのモナリザのほほえみって完成してないんですよ、彼の中では。
ヨウ やっぱりそうなんですか、なんかそんなことはどこかで聞いたことあるなあと。
豊津 ダヴィンチって完成してるっていう作品はほとんどないんじゃないかな。
ヨウ じゃあダビンチってやっぱり商品化しようという考え方がなかったのかも。
豊津 というか多分ダビンチは科学に興味持っちゃったから。サイエンスって完成がないんですよ。
ヨウ なるほど、むしろ研究だからずっと続けていくってことですよね。
豊津 それは1代で終わらないでしょ?ようやくブラックホールがあるっていうの証明できたけど、ブラックホールにはまだ入れないでしょ僕たち。ということは科学は延々と完成はないんですよ。
 だから数学ちゃって可哀想なのはこの間 ABC 問題を望月さんという人が解きましたっていうんだけど、あれ望月さんが ABC 問題解決しちゃうと今まで ABC 問題考えた数学史はゼロになっちゃう。アートはないじゃない、ゼロが。だからいわゆる不老不死なんですよ。

7.

ヨウ 面白いなあ。なるほどなあ。豊津さんは結局それで芸術の道に進まれたじゃないですか。それってパッションみたいなのって今の話に繋がってるとこありますか?
豊津 いやーこれはね、持って生まれた運命みたいなものがあって、僕がどこに生まれるかっていうのも選択できないでしょ?それぞれが生まれた土地に選択ができなかったけど、その生まれた場所を永遠に背負う人もいるわけですよ。豆腐やで生まれた生涯豆腐屋だっていうのもあるし。だから今、近代は生まれた場所と職業が変えちゃったわけよね。
ヨウ ああそうか、職業選択の自由があるから。
豊津 すると今度生まれた場所が変わっちゃうとですね、選択をそこでしちゃったために次の選択が定年が来るんですよ。それで郷里に帰る人もいれば、どうするかっていう問題だと定年っていうのは自分の人生の完成の作品になるかどうかなんですよ。そうるすると社会的な完成と僕が生まれてから死ぬまでの人生とがちょっとズレるわけよね。
 だから社会的な死ってあるじゃないですか。生命としては生きてるけど、社会としてはもういい死んでしまった。例えば今回捕まった秋元さんは国会議員として終わりでしょ。その社会的な死ですよね。今度は自分の人生を生物学的どう考えるかってことを考えなきゃなんです。
 そういう社会的な死とかね、例えば政治的な生っていうのは選挙権を持った時じゃないかな。
ヨウ ああそうですね、今18。
豊津 そうするると18に初めて選挙権を持ったから、そのときに僕たちは政治的な生が産まれたわけです。でも痴呆症になると政治的な生も終わるでしょ?
ヨウ そうですね、後見人がいないとみたいな話になっちゃいますね。
豊津 だからなんか命っていうのはそういうふうに色んな形で考えていけるなと。
ヨウ そうかそうか、身体的な生と死っていうのもあるけどそれが別の維持しても例えば今仰った社会的みたいなこともあるし、もしかしたら自分の中にも、さっき痴呆って仰いましたけど、精神的な死みたいなもありますもんね。
豊津 で、永遠の命はもしかしたら作品なのか、ベートーヴェンの作曲した音楽はベートーベンが死んでも僕達いまだに聴いてるじゃないですか。これは楽譜で表す命ですよね。
ヨウ 楽譜で表す命、なるほどなぁ。
豊津 文字に表す命が文学だし物質で表す命が美術じゃないですか。だから僕たちの中で色んな命があって、なんか命を考えるってすごく楽しいじゃないですか。
 角田君ののお父さんが亡くなった、で、角田君はお父さんの命を考えることになるよね。
ヨウ はい。むしろ今まではそんなに考えてなかったですね。
豊津 角田君の命の中にお父さんの命が何割か占めてるわけ。今度は角田くんの子供にその命がどう繋がっていくのか。

8.

ヨウ なるほどなるほどなるほど。
 生まれた場所と時間は決まっちゃってるじゃないですか。それでお父さんも画廊をやられたんですよね?
豊津 そう。うちの父が画廊やってます。
ヨウ それで豊津さんは子供の頃もう継ごうと思ってたんですか?
豊津 僕は大学は建築選んだぐらいだから。だから私は父の仕事を継ごうというのは一切考えたことないです。
ヨウ でも今のお話をもう散々僕も聞いてますし今のオンエア聞いただけでもアートにすごい魅力を感じちゃってるじゃないですか。転換点ってあったんですか?
豊津 転換点っていうのは、基本的にある母のお友達の人がいてね、私が政治家の秘書をやっていて6年目か7年目ぐらいの時にね、そのおばあさまに呼び出されたんですよ、ホテルオークラに。それでそのおばさんにね「あなた頭の下げ方が品がなくなったわよ」って言われたんですよ。
ヨウ それは政治の世界にいたからっていうことですか?
豊津 分からない。もしかしたら自分の心に従って頭を下げてないってことですよね
ヨウ 政治家の秘書の方ってのはそういう感じかなぁなんで勝手に思っています。
豊津 で、それは他の秘書さん達は知らないけど、そういうものを感じ取ったんだと思うんですよ、そのおばさまがね。それで高齢のおばさまふたりに呼びつけられましてね、言われて、品がないという言葉がすごく響いたんです。
ヨウ ちょっと許せなかった?
豊津 というかね、品がないっていう発想を持たなかったから。品をどうしたらいいかって自分には分からないじゃない。
 どうしたらいいか?他だったらね、何か対応策があるんだけどさ、それで村山先生のとこいってね、辞めさせてくれって言って。それで1年間かなんかお礼奉公っていうの?選挙ね、それをやって終えたんですよ。
 そして、とにかく先があって辞めたわけじゃなくてもう自分の中で混乱して辞めただけだから、家でブラブラしてたんですよね。そしたら父親が「お前ぶらぶらしてるんなら画廊に来ないか?」って言われたんですよ。それで給料は3分の1ぐらいなりましたよね。
ヨウ それおいくつの時ですか?
豊津 27、28くらい。
ヨウ で、画廊に来たら品は感じました?
豊津 分かんないですまったく。画廊の空間は子供の頃から知ってるし、家の中にはたくさんのアーティストも来てるから、そういう環境にいたからね。でも政治家の秘書やってる間はほとんど芸術にあんまり関係なかったから。
 それでぶらぶらしてたわけ。で、それで父親が画廊に来いと。で、画廊に入った以上は便所掃除からだと。で、毎日お便所掃除してね。でね、お便所掃除すると気持ちいいんだよ。これ人間って不思議なもんで、お便所を掃除しているだけでも気分が良くなる。みんなお便所嫌いだっていうんだけど汚い場所を自分がキレイ事するってすごくいいんですよ。
 お便所掃除をして、そのうち一応建築なんだから多少はアーティストよりは会計のことわかるだろうっていうんで、銀行から来てる人が1人いたんでその人の下で会計やったんですね。それがまたね、面白いんだ。
ヨウ ギャラリーの会計って違うんですか?
豊津 父が銀行がものすごく親しくしてた時期があって、その銀行から経理を見るって来てたんです。その人に試算表を教わったんですよ。これがまた気持ちいいんだよ。
ヨウ どういうところが気持ちいいんですか?
豊津 1円でも狂うとやり直しなんだ。で、1円が合うまで夜通しやってるわけですよ、月末。そのうちだんだん1円ががピタッと合うようになる。お便所掃除と試算表は気持ちいいものなんだ。
ヨウ それがもしかしたら品っていうのに繋がるのかもしれないですね。
豊津 そうかも知れない。
ヨウ だから汚い綺麗で綺麗なものが品じゃなくて、僕らが汚いと思ってるものを掃除するとか、会計みたいなものを1円までピシッとやるみたいなものが、実は品なのかもしれないですね。
豊津 今角田君に言われたことでわかるんだけど、もしかしたら品っていうのは秩序だと思うんだよね。僕の中で何かの秩序がきちんと出来上がれば外から品があると思われるのかなと思いますよ。便所を掃除するというのはある種の秩序を作るわけでしょ。会計の1円もそうじゃない。だからそういうことは今の人たちはあんまり興味ないかもしれないけど僕の中ではものすぐリアリティを持ち始めたわけですよ。
ヨウ 僕ね、その品て何なのかなっていつも思ってるんですけど何て言うんですかね、すごいごちゃごちゃして猥雑な感じなんだけど品がある人もいるし、品がある職業なのにすごいいやらしいくて品がないなぁって思う人いるじゃないですか。その差は何なのかなぁってすごく思ってて。
 で、僕は何となく、画廊さんなんてお付き合いないじゃないですか?なんていうかこの10万円の絵を20万で売ろうとか、高くしていくみたいな、つまり品はないものなのかなぁなんて思ってたわけですよ。で、豊津さんにお会いしたら品の塊みたいな方で。
豊津 (笑)そんなことない。
ヨウ いやいや、何と言うか品というか凛というか、これ銀座の老舗の画廊だからなのかなとか。なんか銀座っていう土地もあるのかなとか、すごく思ちゃったんですね。
豊津 たぶんね、1つはね、品っていうのは公っていう問題とすごい関わっていると思う。だから自分のものを自分だけのものにしないでいろんな人に分け与えるっていうことと品がすごい関係ある。
 で、年取ってきたときに自分のものを守ろうっていう気持ちが生まれるけど、その守ろうっていう気持ちじゃなくて、自分を活かしてくれっていう風に人間が開いていくと、それがなんか品とすごい関係ある。だから多分あなたが今まで思い描いた人で品のいい人って考えてみると、何かそういう公性と繋がってませんか?

9.

ヨウ はい。僕それ英語で言うと public 公共性って言ったときに、その人が思ってることが仮に正しいとか正しくないとか、儲かるとか儲からないというとは別に、公共性みたいなものを持っているか持ってないかとすごいあるなーって思ってて。
豊津 だからアートの価値って自分がプライベートで作ってたものが少しずつ公共化していくことでしょ?
ヨウ あの開くとおっしゃったじゃないですか。で、それこそ豊津さんに何年か前にその僕「オトナノの!」って番組にゲストで出ていただいたときに、宮沢男爵さんっていう絵描き、あの僕、豊津さんに言われて買った絵がここに。
豊津 ありがとうございます!
ヨウ はい、これ宮沢男爵さんの絵なんですね。これ豊津さんに勧められて買った絵なんですけど、この方が画家としてまで一人前になる前から東京画廊にいらっしゃってて、で、ある時その豊津さんのアドバイスで、普通ならみんな厳しかったりすると辞めちゃったりするのに、豊津さんいずっと絵を見てもらってたら、ある時この瞬間に開いた感じがするっておっしゃったんですよね。
 で、絵って上手いとか下手とかじゃなくて開いてるのと閉じてるのがあるとおっしゃったじゃないですか。その話ってすごい面白いなあと思ってて。今でも開いたもの閉じたものってずっと思ってるんですけど、じゃあ開いた絵って何なのかって事って、僕の中では分かっているようでわかってないんですけど、何ですかね?
豊津 だからさっき言ったように宮沢君で言うとね、それまで非常にプライベートな作品をずっと作ってて、プライベートっていうのは彼個人の興味だけですよね?彼個人の興味だけっていうのは僕には関係ないんですよ。
ヨウ うーんあの、一般の方にも関係ないですよね。
豊津 そう、関係ないでしょ。本人が好きでやってることだから。ところが開いたっていうのはその個人でやっているものがある時に美術という世界の流れのコンテキストに接触することなんですよ。ああこのコンテキストの中に彼は位置ができたっていう時に開いたという言葉を使うんです。
ヨウ 繋がるみたいなことなんですかね?接触するというか。
豊津 そういうこと。

10.

ヨウ それって普通はオリジナリティみたいなものってよく言ってる人って、だからそれはオリジナルかも知れないけど、つまり閉じてるって言うのは接触してないっていうか、繋がってないってことなんですよね。
豊津 オリジンっていうのは元々は「元に繋がる」とかっていう意味でしょ?辞書で調べると日本人は独特の独創性みたいなこと言うんだけど、英語ではなんかそういう繋がる、元に戻るとか、聖書に繋がるとかっていう意味が確かあるはず。
ヨウ そう考えるとなんかアートの方って、アーティストってなんか自分の独創性を一人だけが理解しててワーッと書いてるのがアーティストがみたいなことって、むしろアートとか全然見たことない人なんかそんな風に思ってるんじゃないかなぁと思うんですけど、実は違うんですね。
豊津 だいたい僕なんかも子供の時からたくさんのアートを見てるからだいたい誰かの見れば何から影響を受けているかすぐ分かるわけですよ。見たことないようなものを僕の前に持ってきた人いないもん。ってことは100%独創性のあるもんなんて世の中にないわけですよ。
 でもこの人はピカソからすごく影響を受けているけどここがピカソと違うなっていうのがあればいいんですよ。独創性がない人はほとんどピカソとか何か色んなものから影響を受けているっていうこと自体が自分で気がついてない人です。
ヨウ 繋がったり接触していることが無いから自分のオリジナルだと勝手に言っちゃってるだけで、見えてないということなんですね?
豊津 そう。自分で過去を調べてみれば、自分がやってるのは誰かの影響だってすぐわかるじゃない。
ヨウ これは僕自分がずっとテレビ作ってたじゃないですか。テレビのバラエティ番組って全然オリジナル性ないわけですよ。パクリのパクリというか。それがなんか自分の中での劣等感だったんですよね。一方アートっていうのはなんかすごいオリジナリティと思ってたんですけど、そうでもないってことですね。
豊津 そんなことないですよ。だってあなたが作ったあの”さんまの番組”(さんまのスーパーからくりTV)だってさ、もうあの”お年寄りのクイズ番組"(ご長寿早押しクイズ)なんか最高ですよね。だから僕は角田君と知り合う前からああいう番組ずっと見てたから、バラエティってすごく面白いのは真似してるように見えるけどどっかでエッジが立たないとやっぱり独創性にならなんだよね。
 “お年寄り”でも何が面白いって司会の人(鈴木史朗アナ)だよな。あの人あってあのお年寄りが活きてるじゃない。
ヨウ すごいマジメな方なんですよ、鈴木史朗さん。
豊津 あの組み合わせってのはあなたが考えるわけでしょう?
ヨウ そうですね。僕っていうか厳密には僕の先輩なんですけど。ただあそこにこうちょっとトークが上手いおちゃらけたアナウンサーだと面白くないんですよね。真面目な人がいい。
豊津 だからその組み合わせがね、もう絶妙だと番組のエッジが立つからやっぱり面白いなと思うよね。
ヨウ そう考えると僕らは番組作ってるにそんなことばっか考えてるんですよ。全く同じだったら本当に著作権侵害になっちゃうなぁだからダメとか思ったりして。でもそうすると、あの部分はいいよな、じゃあ自分たちのオリジナリティって何だ?っていう風に考えて企画を作ってるわけですよ。するとアートも一緒ですね、そういう意味では。
豊津 一緒。モノを作るというのはたぶんどのジャンルも一緒だ思う。これは自動車作るのでも一緒だと思うんですよね。ただ問題なのはそれぞれのジャンルで行き詰まると他のジャンル見た方がいいってことですよね。
ヨウ 車で行き詰まったら車以外の何かを見るってことですね。
豊津 だからHONDAさんの藤沢さんって人はうちでフォンタナっていうのを買ったのは、たぶん自動車があるところまで行ったんで、もう技術的にはここまできたと、技術を超える何が欲しいかという時にリッツを見に来たんだと思う。
 藤井聡太君は人工知能と一緒に将棋するのもそうじゃない。人間同士の将棋界ではもうほとんど…
ヨウ イノベーションが生まれないってことですね。
豊津 藤井聡太君の次の世代はみんなあれを始めるから藤井君も大変だと思うよ。
ヨウ それがパイオニアなんだなぁ。そう考えると、東京画廊って現代美術じゃないですか。そうするとあらゆる新しい組み合わせみたいなものを考えてる方がいらっしゃるところですよね、アーティストとして。
豊津 でもそれは今度は僕の年齢と関わってくるんだよ。例えばもう僕の歳でコンピューターは自分は使えないわけだから、コンピュータを自分の手足のように使っている人たちが考えるアートの空間とまた違うんだと思うんですよね。だからそういうような事も僕は今、自分の肉体的な限界もあるかもしれないと思っています。
ヨウ だから逆に自分のよくわからないものでも受け入れちゃうみたいなことですか?豊津さんって。
豊津 うん。でもそれは僕はその世界で何が大事かということを自分で考えるだけで、あってそこから何が次の世代のアーティストを見つけ出すというのは可能かどうかわかんないです。

11.

ヨウ 豊津さんから見て、この質問自体もおかしいんですけど、次の現代アートってのは何なんですかね?もうメディアは何だっていいわけですよね?行き着くとこまで行っちゃったなあっていうのはもう何十年も続いてるんですよね?そんな中でアートって今後どうなっていくんですかね?
豊津 まず今、日本中のアート、もしくは世界中のアートがエンターテインメントの方に走ってるわけだな。要はこれはあのポピュリズムとすごく関係してて、今、抽象的な絵画を書く人はほぼいないですよ。なぜかと言うと抽象的な絵画は一般の人わからないから。
ヨウ ああ、ポピュラーにならないということですね。
豊津 そう。そうするとポピュラーになるため村上君はアニメーションとか羅漢図とか、もうすでに世の中にあるモノを使わざるを得ないじゃないですか。森美術館でポケモンの絵を描いてみたり。で、これはポピュリズムですよね。だからそのポピーリズムっていうのがどんどんどんどん進んでいくと僕たちが考えてたようなグレードは今、一方ではどんどん下がってるよね。
ヨウ やっぱりそうですよね。どのアーティストの作品を見ても影響受けてない方はいないとおっしゃったじゃないですか、僕もこの人は確かに上手いんだけどなんとなく印象派だしなんとなくキュビズムだしとか、何か見えちゃうなぁって思った時に、上手きゃいいのかなとちょっとだけ疑問を感じる時がよくあるんですよね。
豊津 それは多分ね、今僕たちのアートの世界もすべての資本主義社会で共通な商品化ということになっちゃってるよね。商品っていうのは売れないと意味ないからマーケッティングするわけじゃないですか。そうするとマーケッティングして分かりやすいアートどっかに取り入れないと売れないからやり始めんだけど、僕はねえ、ある程度功を成し遂げたアーティストは一方でダヴィンチじゃないけど難しいことをやってもらいたいんですよ。
 だから優しいことをやるのはもういい、と。それは一方で売れてるけど、ライフワークとしては本当に難しい事を考えた後をやってもらうと、僕はそっちの方が興味あるよね。
ヨウ そこ僕もまったく一緒です。僕去年から東大の大学院通ってるのって、なんかテレビって簡単にわかりやすく作らなきゃ視聴率取れないんだよってみんな言ってるわけですよ。そうじゃなくても視聴率とれるものってあるんじゃないかなってちょっと思ったりしてて、それはたしかに難しいんだけど、でもそれやんないとどんどんレベルが下がって行っちゃうばっかりなんじゃないかなって思って大学行き直したんですよね。
 だからそれが何て言うんでしょうね、防げるというと語弊があるんですけど、そういう作品が出てきたらで変わるんですかね?アートとかも。
豊津 だからそれはこれからどういう方向になるのかわかんないんだけど、一つはやっぱり人工知能ができることによって、簡単に言うとね読みそろばんっていうのが僕がこの世の中に生まれてどうしても自分が獲得しなきゃいけない技術ですよね。読み書きそろばんができないけど生きていられるって言うのはないじゃないですか。そうすると読み書きそろばんっていうのはだいたい何歳ぐらいで確立できるのかなと思うんですよ。そうすると大体まぁ中学生の義務教育内で読み書きそろばんね、漢字がきちんと書けるところまで入れてやれば、ほとんど後は出来るじゃない。
 で、14歳で読み書きそろばんができた人と、もうちょっと時間がかかる人いるよね。14歳で読み書きそろばんができた人は教育から学習に向かった方がいいと思う。
ヨウ なるほど教育をある意味超えちゃって。
豊津 そうそう。ところが今、学校教育は高校生まで読み書きそろばんがみんなができるところまで同じ勉強しなきゃなんないから、できる子はかわいそうなんだよ、犠牲になっちゃう。
だから日本が世界で大学だっけ?なんか教育レベルが下がってますよね、それはね、低いところに合わせているから、日本の学校教育が。
ヨウ それってアートの話と全く一緒ですね。だからやっぱり教育もポピュリズムになっちゃってるしアートもポピュリズムになっちゃってると。
豊津 だからそれはね余力を持ってる人はもったいないよねー。
ヨウ 僕ね、それ教育の方はもうずーっと思ってるんですけどアートもそうだなと思ってて。つまりミュージシャンとかも多分そうだと思うんですけど本当はもっとすごい先進的なことがやれるのに、これをレコードだしてもCD出しても売れないよねみたいになると、結局わかりやすい曲で…みたいな、もっとビートがわかりやすくてとか。
 それってそのレコード会社的には成立してると思うんですよビジネスとしても。ただ人類って考えるとその天才の能力のフルスロットルで使ってない部分がもったいないんじゃないかなーって思っちゃったりするんですよね

12.

豊津 でね、でもう一つアートのジャンルでね、最近考えたのはトーナメントプロとレッスンプロを分けるけるっていう話。
ヨウ なるほど、ゴルフで言えば。
豊津 そう。タイガーウッズっていう天才がいたとするじゃない、トーナメントプロで。タイガーウッズも調子悪いときはアドバイザーがいるんだよね、レッスンプロ。そのレッスンプロはものすごく良いアドバイスするんだけど自分はトーナメントプロになれないじゃない。
ヨウ マラソンのペースメーカーみたいな感じですね。
豊津 そうそうそう。そうすると今の美術学校はレッスンプロを育ててないじゃん。みんなトーナメントプロで勝てなくなるから学校に入るわけだ。
ヨウ そっか。だけどほとんどの人はトーナメントで負けていくということですよね?
豊津 そう。だからそれだったらレッスンプロをきちんとやって、美術学校で最低でもプロのちゃんとしたアーティストになるためには、世界で名だたるアーティストになるためには、どういうことが必要かっていうのをレッスンプロを教えればいいじゃん。
ヨウ そうですね。そっか、だからつまりな変なみんな一緒じゃなきゃみたいなことに限界が来てるって事かも知れないですね。
豊津 だって今度の藤井君だってあの、杉本さん?あれがレッスンプロの役割してるわけでしょ。杉本さんは名人を取れなかったわけじゃない。でも藤井君を育てたってすごいよね。
ヨウ すごい大事なことですね!
豊津 大事なことでしょう!すると彼の役割っていうのは自分でそこを見定めているのかもしれないじゃないですか。
ヨウ そう考えるとあれですね、今、豊津さんが仰ったことかって普通はダメなのは、やっぱり平等とかに反するみたいな、機会均等に反するみたいな話じゃないですか。でもそれって今2020年になったときにそっから議論してもいいかも知れないですね。機会均等とかじゃなくて、レッスンプロとかをトーナメントプロは分けてって考え方の方はどっちの人生も幸せじゃんと思ったら、そっちのほうがいいじゃんっていう風にその辺から製造設計した方がいいんですね、きっと。
豊津 チャンスと能力は別のもんだって考えないと。
ヨウ チャンスと能力は別のもの!なるほど。
豊津 チャンスは皆んな平等に与えるけど能力は違うからね。
ヨウ はるかに違いますよね、うん。
豊津 それをうまく実現するような。それでこの間、文部科学省の人と話してて、ゆとり教育は早すぎたって言ったの僕。社会ががゆとりないのに教育だけゆとりになると意味がない。
ヨウ だから今の分ようってのは一周回ってゆとり教育なわけですよね。だからそのゆとり教育やる前に今のそのまずの制度設計を変えてからゆとり教育入れない限り、結果レベルが下がっちゃうだけなんですもんね。
豊津 だからゆとり教育で育って電通に入ったら、ついていけなくて死んじゃったって話なんですよ。電通自体がゆとり持たなきゃなんないじゃない。
ヨウ そうですね。でもそれは今笑っちゃいましたけど笑い事じゃなくて、本当にあらゆる仕事でゆとりというものが悪しきものになっちゃってますからね。
 それから問題はゆとりが必要ない人がいるわけよ。自分が好きだったら一時何時間も練習しちゃうじゃん。
ヨウ それでいいんだって人がいますよね。なるほどなー。だからそれでいいっていう人の、それでいいのレベルが人それぞれ違うんだから、それに合わせましょうってことが大事ってことですね。
豊津 そうなんですよ。やっぱりだから、さっき命の長さにそれぞれの宿命があるから、その命の長さに宿命があるということがその人の価値の違いだから、それをもう1回考えるような社会にした方がいいじゃないかなと僕は思うんだよね。
ヨウ そう考えると本当にそれって実はアートにもその役目がありますよね。だからそれって、こうやんなきゃ人気にならないから売れないからって言ってポピュリズムに走っているということと、だから売れようが売れまいが別次元でそれを訴えるって言うのがアートの一つの方向としては大事ですよね。
 ただ実際そうするとそういうのを仮に目指している人がいても、つまりその絵が難しすぎて売れなければ、結果その人って絵書き辞めちゃうんですよね?
豊津 いや、そんなことないよ。売れなくてもやりたいっていう人がいるんだから世の中には。親の財産を食いつぶしてやる人がいるんだから。売れるっていることは一つの結果であって、この時期に売れるのか、死んだと売れるかも知れないじゃない。だから基本的には家の父だってこんなにうちの作品が作家が作った時の100倍の値段になるなんて想像もしないで死んでんだから。
ヨウ なるほどそうですよね、具体の作品とかそういう感じですよね、
豊津 でも父親は別に時代の先を読もうとかってやってるんじゃなくて、多分がこれが面白いからやってるんで、家族は大変だとかってあるけど。

13.

ヨウ ああそっか、すごい整理すると結局面白いことやれみたいな方に行き着くんですね。
豊津 面白いっていうことはさっき言った便所そうじゃないけど、面白いことを成就するためには、つまんないことが面白いんですよ。面白いことだけやってたら、面白いは面白くなくなっちゃうの。それぞれ今与えられた宿命の中に面白さを見いだすということが大事だと思う。すると自然と自分のところに何か面白いものが下りてくると思う。
ヨウ それは僕は本当に、それこそ月曜日で50歳になったので、もうなんか選ぶのやめようってちょっと思ったんですよ。自分のとこに来たものをただやろうっていう。それが結果一番面白いんだよなーと思ったんですね。なんか若い頃は面白いものを探してるじゃないですか。でもそれじゃあ仮に面白いものばっかり見つけちゃってもそんなに面白くないんですよね、確かにね。
豊津 「今でしょ」の林先生がそう言ってたよ、自分が面白いと思ってやったことは一つもないって。結果こうなっちゃっただけで、一瞬も面白いと思ってやったことないって。ただやっている中に面白さを見出すことやってたんだと思うけど。
ヨウ だからそう考えるとさっきのその絵がポピュリズムに行っちゃってるのか、テレビがどんどんつまんないのが増えてるなあっていうのは面白い面白いものって見つけてようとしているからかも知れないですね。そこに在るものが面白いんですよね。
 ご長寿早押しクイズなんてそうですもんね、ただのお年寄りが一番面白いという。
豊津 そう。本人が面白いと思ってないことが面白いんだよね。
ヨウ からくりビデオレターっていうのもそうだったと思うんですけど、田舎のお爺ちゃんお婆ちゃんが「ひろし〜元気か〜」みたいなことやってるのがその本人が面白いと思ってたら面白くないんですよね、これがまた。
豊津 でもあれはさ、ああなたがプロデューサーとしてある時間の区切りがあるから面白いんじゃん。あの爺さんずーっと見てても面白くない。
ヨウ 面白くないです。つまりビデオリターなんで、レターという何分かで自分の都会にいる息子に伝えるぞっていうメッセージがあるから、メッセージを1分に言ってくださいねみたいな感じだから、みんな焦っちゃうし、言い間違えちゃうし面白い。
豊津 そのおじいさんの感情に乗らないあの鈴木さんが面白い。あれね、さんまだったら面白くしすぎちゃって面白くないと思うんですよ。
ヨウ さんまさんはそこ知ってるからあれはVTRを見て笑ってるんですよね。なるほどな。面白いことは面白いで思っちゃったら面白くないってことですね。さっきの便所掃除の例えじゃないですけど、あれと同じですね。
豊津 だから僕はお笑いで最も好きなのがモンスターエンジンなんだよ。
ヨウ マニアック!!神様のネタですね?
豊津 私は神だって言うやつね。あの面白さをモンスターエンジン本人が自覚しているかどうかが知りたい。
ヨウ 多分自覚してるんだと思うんですけど、自覚してたら面白くないですよね。
豊津 いやでも自覚してないから次の面白いのが生まれないんだよ。
ヨウ あーまた難しいことを言う!そうか。つまりエンターテイナーはそこを自覚してないと芸にならないんですよね。
豊津 そうなんですよ。だからさんまさんが家に帰ってくると自分の番組をたくさん見るっていうのは、そこで次を作って次の展開に。それがプロなんだと思うんだよね。
ヨウ そこがプロとアマチュアの違いなんですね。
豊津 そういうのをやっぱりタモリさんとかああいうの見てるとものすごくその区切りがうまいよね。ここでやめるとかここで自分は何を選択するとか、そういうようなことがすごくタモリさんは賢いよね。
ヨウ いやーすごいそうですね。だからそれってプロですね、やっぱりね。
 面白いっていうのは面白いて知ってちゃ面白くないんだけど、でもプロはやっぱりそれが面白いと知ってるからやるわけですね。ご長寿早押しクイズのお爺ちゃんお婆ちゃんはクイズのプロではないですからね。
豊津 だからあの区切りで面白いだけだから。
ヨウ つまりそれって、さっきの開く閉じる開くと一緒ですね!面白いっていうのはの開いてるからプロで閉じてたらプロじゃないわけですよね。なおかつさらに話が戻ると日本の美術館、御開帳しないこと正倉院っていうのはずっと閉じてんですよね。もしかしたらアートというものに関して日本はプロフェッショナルじゃないかもしれないってこと。
豊津 これはなぜかというと日本は自分の国が文明を作ったことがないからです。僕たちは明治まで中国文明の下にいたわけでしょ?
ヨウ そこから西洋文明ですもんね。
豊津 日本人は一度も文明作ったことないでしょ。で大日本帝国で敗戰してるから文明にならなかったよね。文明の無い国にってどちらかというと文化の国ですよね。そうすると隠そうって意思が働くんじゃないかと思う。
ヨウ あーをまた面白いなぁ。隠す、ちょっと恥ずかしいですかね?パクっちゃってるから。ちょっとモノマネしちゃったりしてて。でもところが文明を持ってる人達は先人たちのものをある意味真似して作ってるって事をむしろを知ってるから隠す必要なんかないんでしょうね
豊津 そうだと思う。

14.

ヨウ 面白いなぁ。豊津さん間も無く1時間近くになっちゃうんですけど。あっという間だな。本を今書かれてるって仰ってたんですけど。
豊津 あなたに呼ばれている頃に後に「アートは資本主義の行方を予言する」っていう本を書いたじゃない。
ヨウ はい、すごい面白かったです。
豊津 それであの資本主義って題名に入れたのは僕じゃないんですよ。編集者があれに資本主義っていれたもんだから、がぜん僕は資本主義に興味持っちゃったの(笑)
ヨウ そうなんですよね!著者が一番タイトルに影響うけるんですよね。
豊津 そう、それで僕は資本主義をもう一回改めて考えてて水野さんと知り合ったんです。で「コレクションと資本主義」2冊目を。あれは編集者が資本主義って名前つけてなかったらあの1冊で終わってたと思う。
ヨウ アートが資本主義だっていう話って凄い面白いなと思うんですけど、ちょっと説明して頂いてもいいですか?アートと資本主義って違うものだと思ってる人多いと思うんですよ。
豊津 もともと資本主義っていうのはどこで始まったかっていうのを水野先生に話を聞いたんです、資本主義を知りたいから。そしたら水野先生は13世紀かな?にキリスト教が金利を認めた時からだって言うんです。
ヨウ 利息をつけてもいいてことですね?
豊津 そう。で利息を禁止してたんですよ。それまで利息を禁止してたのを、ユダヤ教を禁止してないんですよ。だから禁止しているキリスト教よりもユダヤ教の方が商人が発達しちゃったわけ。金儲けがどんどん資本主義のユダヤ人の方が上手くなるから。ユダヤ今日はそれ禁止してないんでそれでベニスの商人が生まれるわけでしょ。でその金利を認めた時からが資本主義だと。何がアートで行われるって言うと画面にサインを入れることが始まったんですよ。それまでの絵画には個人の名前がないんですよ。
ヨウ 誰が書いたか分からないですよね宗教画ですよね。
豊津 ということは個性っていうのはそこで芽生えちゃったわけね。
ヨウ そっか、インディビジュアルという。
豊津 それまでキリスト教の布教のための絵画だからサインもないしコンセプトもない。サインいれるとその作家が解釈しなきゃならない。それが資本主義とアートの…
ヨウ ほぼ同時で生まれているということなんですね!
豊津 で、絵画がダヴィンチまでいって何が起こったかというと、ダヴィンチはもうすでに解剖をしてるから処女受胎はないっていうことを知っているわけですよね。で、聖母子像の下に胎盤を書くんですよ。
 という風にパラレルに資本主義の発達と美術が重なってて、初めて王様とか教化以外の人がアートを買いだしたのがオランダですよ。
ヨウ 商人たちってことですね。
豊津 そう、商人が肖像画を頼むんですよ。そこにフェルメールが出てくるわけでよ。大きい絵がないんですよ。大きいがなくてキャンバスの上に油絵具で描くから流通しやすいんですよ。
ヨウ ああそっかで、大きいのだったら教会にしか飾れないけど肖像画だったら持ち運びできますもんね。モバイルだ!
豊津 商品としての能力を増すわけだね。それが資本主義と美術のものすごい関係。そこを水野さんの対談で資本主義勉強したから教わったんですよ。
 次にね税制の話になったんですよ。やっぱり先生ねこれから日本は文化政策を含めてやっぱり一番肝なのは税制ですねって言ったんだよ。先生ね、税制を教えてくれって言ったんですよ、水野先生に。「山本君ね、経済学と税制は関係ないんだ。」って言うんですよ、直接。それは財政学だから政治なんですよ。
ヨウ おお!話が戻ってきた!
豊津 そう。それで税制を勉強しだして、税を取るっていうことは何が大事かというと税を取る対象の数字の帳簿がなきゃならいでしょ。これで公認会計士の田中さんと帳簿の話になったんです。これが3冊目の「教養としてのお金とアート」という本が9月2日に角川から出るんですよ。
ヨウ 面白いですね。つまりアートは資本主義と同時にパラレルに動いていて、そこからお金から帳簿、税みたいな話になって、で、sの本が三冊目にでるんだけど、それって結果、東京画廊に来て最初に便所掃除してたって話じゃないですか。
豊津 そう、それが村山先生が税制の大家だからね。
ヨウ はっはっはっすげぇ!これ偶然ですよね?
豊津 そう、偶然よ。
ヨウ 豊津さんの中で狙ってるわけじゃなくて
豊津 僕は与えられた資本主義っていう名前をただ勉強しているうちにこうなっちゃったけど、編集者にものすごい感謝してるんだよ。
ヨウ その最初の編集者の方が資本主義って付けてなければこっちに思考が行ってないんですよね。
豊津 僕は一冊で終わってた。
ヨウ だからその時に交換価値と使用価値の話ね、マルクスの勉強したことあるから、大学の時に。っそれでふっと思ったのが交換価値と使用価値みたいなものは書いたんで、それを読んで資本主義って彼は書いちゃったんだけど、僕はタイトルに資本主義なんてなかったから。考えたことなかったから。
豊津 だからさっき言った公っていうのは面白いんだけど、僕が開くと開いた分だけ誰かが僕を取り上げてくれるんですよ。
ヨウ ですね。だから開くんだ。
豊津 角田君だってあれだけの本出してさあ、あなたがいくら出したい、出したいと思ってても出せないでしょ?
ヨウ そうですね。開いてるから繋がって、誰かからお話が来て。
豊津 誰かが拾わないと。それで僕はその1冊目の本で角田くんとあの大人の、あそこの学校で知り合って繋がったじゃない、自由大学でね。だからやっぱり開いたほうが人間はある意味で賢くなるし、勉強するんですよ。それを美術だけ閉じちゃうから世界から遅れちゃうんですよ。
ヨウ うーんなるほど!じゃあ生きるとは開くことですね?死が閉じるとするならば。ただ生きた時に作ったものはずっと残る。
豊津 特殊な人は自分で閉じますけどほぼ9割以上の人は神が閉じてくれますから。
それまでに自分が開いて生きるということをやればいいんじゃないかなと僕は思ってるの。
ヨウ なるほど!今日のトークはこんな感じですかね。
いやあーすごい!結果、豊津さんのお話と死と生をアートを巡るっていった話で、結構、巡りましたね。
これまた本当に月一ぐらいで行ってもいいですか?
豊津 いいですよ。構わないです。
ヨウ やりましょうよ!どんどん深い話を。
豊津 またね、今日だってあなたがこういう題名を頂いたから色んなこと考えるじゃない。だからやっぱりね、若い人たちに色んなことを刺激与えてもらうと僕自身も蘇るんで。アンチエイジングんだよね。
ヨウ 月曜日に僕が誕生日で、土曜日に豊津さんが誕生日っていうのは、その間にうちの親父が亡くなってるって、やっぱり死と生について巡れという神の思し召しなんだなって思ったんですけどね。
なるほど分かりました。じゃあちょっとここでもう配信は止めちゃいますか。
豊津 どうもありがとうございました。
ヨウ ということで山本豊津さんでございました。また月一くらいでやろうと思ってますので皆さんぜひ見てください。バラエティプロデューサー・ヨウイチロウでございました。
豊津 みなさんありがとうございました。


アートは資本主義の行方を予言する (PHP新書)
コレクションと資本主義 「美術と蒐集」を知れば経済の核心がわかる (角川新書)
教養としてのお金とアート 誰でもわかる「新たな価値のつくり方」
自由大学
自由大学オープンキャンパス第5回「キュレーションとは何か」2011/1/22
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自由大学オープンキャンパス第5回「キュレーションとは何か」
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 2011/1/26
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価値を作ることはアート的
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黒崎輝夫・山本豊津「キュレーション学」@自由大学

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