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栃木マスターズ陸上競技選手権の記録処理を終えて

第23回栃木マスターズ陸上競技選手権が、2023年11月5日(日曜日)にカンセキスタジアムとちぎで行われました。栃木県のマスターズの大会としては初めて、NANS21Vシステム(NISHI社)による記録処理を行い、その業務に携わりました。今回は、その経過と感想を綴ってみます。前回記事の続きとなります。


これまでの記録処理対応

栃木県の競技場に、NANS21Vシステムが入ったのは平成14年=2002年のことです。施設に導入されてから21年が経過して、ようやくマスターズの大会で運用されることとなりました。

栃木マスターズ大会における、これまでの記録処理に関連する対応としては、次のような手順で、申し込み・プログラム編成・記録処理・結果出力などが行われてきました(前回記事での表記に加え、より具体的に書いてみました)。

  1. 郵便局の振込用紙に必要事項を手書きで記入し、参加料を添えて申し込む。

  2. 期限までに受け付けた分の紙媒体帳票を見て、担当氏がExcelに手入力する(多くの参加者が常連であるため、関数やコピペの多用で対応)。

  3. 手作業でプログラム編成を行い、Excelのプログラム・シートを作成する。

  4. 大会当日、記録を手打ちで入力する。関数・マクロを活用して見やすい一覧表とする。

  5. 種目ごとに結果がまとまった段階で、種目ごとの大会記録について、プログラムに示された表を見て目視確認し、判定する。

  6. 競技結果を帳票印刷し、掲示板に掲示する。

  7. 記録処理集計のPCとは別のPCで賞状印刷を行う。この際、ナンバーで氏名が呼び出される形式であるが、記録は改めて打ち直す。

  8. 大会後、日本マスターズ連盟提出用のデータを作成し、提出する。

以上、大変な事務処理量になります。特にこれまで、大会記録のチェックと賞状印刷については、競技開始から終了までずっとかかりきりになっていたそうです。参加人数が毎回200名前後ということで、かろうじて人海戦術により処理できていたと、うかがいました。

今後も引き続き、限られたスタッフ人員で運営して行くにあたり、参加人数を増やそう・あるいは、増える見込みであるならば、記録処理システムを導入することは、必然ともいえるところでした。

K氏の本気度

今回初めてシステムを運用するにあたっては、私がすべてお膳立てをするのではなく、これまでのマスターズ大会で、記録処理を含む事務業務を担当してこられたK氏が、直接システムを操作して対応されました。「やってくれ」ではなく「やらせてくれ」という姿勢であり、個人的な、これまでの様々な経験からみて、とてもありがたいことでした。

K氏はこの業務に取り組むにあたり、次のように語っていました。
「陸上競技の記録処理は、今どき、手作業で行う時代じゃない」
「競技終了後、すぐリザルトがWeb上で確認できるような体制が必要」
「賞状印刷も自動でできるように」
まさに、おっしゃるとおりです。

K氏は2か月半前から準備にとりかかり、前回大会のデータをまるごとNANS21Vシステムに落とし込んで、運営のシミュレーションをしたのでした。本気度が強く伝わりました。大会まで、対面でレクチャー・協議すること2回、ほかはメールでのやりとりにより、修正作業を重ねました。

実際に落とし込んでみると、当初は想定していなかった様々な点で、工夫が必要でした。マスターズでは通常の大会とは異なり、M30・M35…など年代別のクラスを扱います。これを、
各クラス同時に競技を行うこと(「競技合体」操作を行う)」
「各競技の選手並び順を、年齢の高い順に並べること」
これらの操作が通常に比べとても煩雑であり、準備が大変なことがわかりました。

また、システムの機能上の課題として、開始時刻が同一の複数競技種目がある場合、並び順の指定ができないことがわかり、今後対応を検討することとなりました。(NISHI社に新機能として要望するべきものかもしれません。)

当日は、想定よりも少ないスタッフでの処理となりましたが、ひとまず一通りの大会運営を終えることができました。賞状印刷も自動で概ねスムーズにでき、事後の記録処理も、これまでと比べれば大幅に手早く終えることができました。Webでの速報も、概ね問題なく機能させることができました。なお、大会記録については、事前の仕込みに漏れがあった種目が散見される状況であったため、もしかしたら判定漏れがあったかもしれない…というところです。

次回大会に向けては、大会記録の事前設定をより正確に行うことを、課題としたいところです。今回は、kyogi.csv の設定で混乱があり、同一名義の種目を複数つくってしまったことで、同じ名前の一方の種目に参加者を当てて、もう一方の(参加者がいない)同名種目に大会記録を設定していた…というミスがありました。次回は事前の仕込みを工夫することで、解消できると思います。

また、「エントリーの簡略化を図れるかどうか」「会計処理の簡便化」といった、運営に関わる事務総量を減らすことも、運営上の大切な課題であると感じました。今後も関わりを保ち、マスターズ大会がより円滑に運営されるよう、様々な面において協力していければと思います。

熱意あるK氏に、NANS21Vシステムを利用した大会運営を実際に経験していただき、共に次への課題を共有できたことを活かして、次回大会を更にブラッシュアップできればと願います。

(もし、この note をご覧になられた競技団体関係者さまで「ウチのところでは、NANS21Vシステムをこんな風に活用しているよ」という工夫・アイデアなどをお持ちの方がいらっしゃいましたら、コメントなどでご一報いただけますと幸いです。)

大会を振り返って

記録処理のことのほかで、大会に関する所見を綴ってみます。

  • 今回、初めてだったのは記録処理をNANS21Vシステムで行ったことだけでなく、会場を「カンセキスタジアムとちぎ」としたことも、初めてでした。大型映像装置(電光掲示板)の活用やシャワールームの開放など、選手の皆さまに快適にご利用いただけたのではないかと思います。

  • 県内のみでなく、近県、さらには遠方から幅広い年代の選手にご参加いただきました。せっかく栃木に来ていただいたので、スタジアムに物産店ブースなどがあったら良いな、と。大会を競技団体だけで開催するのではなく、様々な業種団体などに協賛や運営協力を依頼して展開し、もっと参加人数を増やせると盛り上がるのでは…と感じました。そうしたポテンシャルを十分に持っていると思います。SNSや関係サービスを活用して、まだ参加したことのない方や、マスターズ陸上に取り組もうかどうか迷っている方が「自分も参加してみよう」と思えるような仕掛けをいろいろ組み込んだら、面白いと思います。

  • 80歳代の短距離選手の走りを見て、驚きました。当然ながら、今の自分より速い! そのほか、各種目の競技において(おそらく)長年のライバル同士が競い合い、競技が終わると記念撮影をしたりして親交を深める様子をみて、素晴らしい大会であると感じました。現在の陸上競技選手は、年代別人口比で見ると、中学生・高校生が主体であり、本来は総人口の多い高年齢層の選手は、ごくわずかです。「生きがい」として高い年齢になっても競技に取り組む選手を増やし、それを支える体制をより整えていくことは、陸上競技の発展を図る上で、必要な・望まれる取組であろうと感じました。

結びに

若い人を中心としたチャンピオンシップのスポーツだけでなく、年齢を重ねた方のスポーツも、同じように素晴らしいと思います。「陸上競技の振興」を図る上では、いわゆるトップ選手の競技力向上という視点に加え、人々の生きがいや地域の活性化につながるような幅広い年代の方々を対象とした取組が、より広く展開されるようになることを願います。