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#39 『メルカリ 希代のスタートアップ、野心と焦りと挑戦の5年間』を読んでみて

こんにちは。なびです。

Amazonのプライムデー真っ最中ですが、みなさん何か買われましたか?ネットで何かを買うことが当たり前になった時代、様々なプラットフォームが乱立していますが、あなたはどのプラットフォームをよく使いますか?Amazonや楽天がまっさきに思い浮かびますが、あのフリマアプリで商品を検索することも多くなっているのではないでしょうか?

今回紹介する本はフリマアプリとして国内最大シェアを誇る『メルカリ』の軌跡を描いたこの本です。

【読んだ本】『メルカリ 希代のスタートアップ、野心と焦りと挑戦の5年間』
【著者】奥平和行
【発行所】日経BP
【初版】2018年11月22日


ーーなぜ読もうと思ったか

一言で言ってしまうとメルカリという会社に強く興味を持ったから、です。

フリマアプリとしては後発のメルカリが国内唯一のユニコーン企業として知られていたこと。2014年創業と比較的若い会社であるにも関わらず急速な成長を遂げていること。メルチャリやメルカリアッテなどの様々な新規事業を創出している環境。そして何より、私自身がメルカリのヘビーユーザーであること。

国内トップクラスのシェアを誇るメルカリがいかにして現在の地位にまで登りつめたのか、ふとした拍子で気になってしまったのです。

また、別の目線から見ると、出品情報や取引履歴などからAIや機械学習を活用し、積極的に社会実装している数少ない会社だと思っています。商品画像から自動でカテゴリを分類したり、販売価格をレコメンドしたりとアプリを使っているだけで様々なことを気付かされます。

こうしたメルカリという会社の創設者である山田進太郎氏を始めとする経営陣の奮闘を感じてみたい、という一心で本書を手に取りました。

ーーどんなことが書いてある?

本書はメルカリの創業からIPOに至るまでの激動の5年間のストーリーが描かれています。

日本経済新聞社編集委員である著者が創業前から度重なる取材やインタビューを繰り返して執筆されているため、リアリティを感じられる内容に仕上がっています。特に創業期における「ここからはじまるんだ!」みたいな熱気が感じられるのは読んでいて胸アツでした。

フリマアプリとしては後発だったメルカリがいかにして競合からシェアを奪っていったか、様々な新規事業がどのように日の目を見て、成功したか、もしくは撤退を余儀なくしたのかということを著者の取材を通して赤裸々に語られています。

創業期ならではのドタバタな感じや、組織の成長痛的なもの、不正やトラブルの対応、IPOなどなど、ユニコーン企業と呼ばれた企業の実情を追っているものとしては貴重な内容であったと思います。

本書を執筆した理由について、著者はあとがきの項でこう述べています。

なぜ起業経験者が続々と山田氏のもとに集まるのか。山田氏や経営陣が醸し出す親密さ、悪い言い方をすると内輪感はどこから生じているのか。なぜ、国内事業の足元も十分に固まっていない時期に海外を目指すのか。そして、後発にもかかわらずトップに躍り出た理由も謎だった。こうした疑問を解き明かしたいと思ったのが本書を執筆した最大の理由である。

同じような疑問を解き明かしたいと思うのであれば、本書はきっと刺激的だと思います。

ーー印象に残ったこと

わずか5年のできごととは思えないくらい密度が濃く、文字通り業界を一新させた企業だったということを再確認させられました。世間的に見ると躍進し続けるスタートアップとして認識されていたかもしれませんが、数多くの失敗を経験していること、不正やトラブルに数多く見舞われていることが当たり前のようにあり、ああやっぱり地道に努力し続けてきた結果なんだなあと思いました。

もちろん、突き抜けていくスタートアップらしさは随所で感じられました。

会社設立から5カ月がたち、ようやくサービス開始までこぎ着けた。ただ、当初から利便性が高かったとは言い難い。時間切れで一部機能の開発を先送りしたため、商品の検索はできなかった。売り手が売上金を出金する機能もない。


利用者拡大のフェーズも生々しく、CMやインターネット広告と奮闘しているところなどはワクワクが止まりませんでした。後発であるもののメルカリの認知度は高くなっていき、結果論ではあるけれども広告の力はすごいんだなあと改めて感じました。逆に、広告に予算を注ぎ込むという経営判断もかなり綱渡りだったと思うので、経営陣の度量は計り知れないと感じました。

それまでもメルカリはインターネット広告を出稿していたが、経験が乏しいメンバーはおっかなびっくりだった。出稿によって変化する様々な数値を参考にしながら、次の一手を打つのが精いっぱいだった。これでもじわじわと改善していくことは可能だ。だが、爆発的な伸びを求めるのであれば、広告の量やターゲット、時期、内容について大胆に仮説を立て、実行するしかない。(中略)先行したフリルにとっては、読者モデルのブログへの書き込みといった口コミがダウンロード数を伸ばす切り札になっていたが、後発のメルカリの戦い方はまったく違うものだった。インターネット広告に多くの資金を回し、それによって赤字が膨らむことへのためらいはなかった。
当時はスタートアップ企業のテレビCMは珍しく、あったとしてもゲームがほぼすべてだった。  フリマアプリのCMを流し、ユーザーを一気に獲得することが可能なのか。前代未聞の大勝負が始まろうとしていた。


さらには、メルカリという会社はミッションやバリューを非常に重視する会社と知られています。

「迷ったときはミッションやバリューに立ち返って判断しよう」というのが経営陣の一貫したメッセージだ。そこには、メルカリというプロダクトではなく、実現すべき使命や重視する価値観を求心力としたいという考え方がある。

メルカリというプロダクトではなく、ミッション(実現すべき使命)やバリュー(重視する価値観)を重要視するということを深く重んじていることが伝わってきます。経営陣の思いが従業員に伝わり、それが会社のカルチャーとして醸成されている様は、成功の道筋のひとつなのかもしれませんね。

他にも、山田氏が抱く海外志向の想い、開発拠点が異なる日米での開発環境の独立化、インドにおける優秀な人材採用、テクノロジーに対する積極的な取り組み(旧式のスマートフォンでも速度が落ちにくくする守りの面と、人工知能やIoT、ブロックチェーンと言った最新技術を扱う攻めの面)など、経営のみならず現場レベルの視点でも語られている項目が多かったです。


ーー本書を読んで

メルカリという会社がどのように成長していったのかという刺激的な5年間を感じることができました。創業期から付き合いがあった記者だからこそ表現できる、経営陣と同じ目線でストーリーを追うことができ、臨場感を感じまくりの読書でした。コンテンツとしては幅広く、メルカリ創業のきっかけからサービスローンチ、事業拡大、IPOといった、ベンチャー企業が経験する一連の流れを体験できるのは本書ならではだと思います。

とはいえ、個人的にやや残念に感じられた点もありました。著者があくまで記者としての立場であったため、実際の経営陣とは少し壁を感じられてしまったこと、話の構成上時系列がややわかりにくくなってしまっていることが気になりました。特に後者の場合、話のテーマごとに記載されていることもあってか、時間軸が巻き戻ったり先に進んだりという展開があったりしてやや混乱してしまうところがありました。

最後に、締めくくりとして5周年記念パーティの一幕を引用させていただきます。

「世界で使われるインターネットサービスを創る」。こんな思いを胸に起業してからまだ5年。新規上場こそしたものの、進んだ距離はこれっぽっちだ。世の中の評価はどうあれ、このあたりが実感に近いのではないだろうか。筆者の考えていることを察したのか、富島は思いを語ってくれた。 「まだまだこれからですよ。今の 10 倍、いや100倍になったら、世界的なテクノロジー企業として認められるんじゃないかな」

これからのメルカリの発展に期待しましょう。私も陰ながら(?)応援していきます!

いつも読んでいただきありがとうございます。
それでは!

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