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NVIC アナリストのつぶやき第6回 「プロ野球チームから学ぶ投資信託」

皆さん、こんにちは。NVIC note編集チームです。

今回のアナリストコラムは、北陸富山の漁港出身の若手アナリスト野口が担当します。
自身も「投資初心者」として投資信託での資産形成に取り組む立場から、「投資信託」を身近に感じてもらうため、プロ野球チームにたとえて解説します。

プロ野球チームから学ぶ投資信託

今年は金融庁の報告書が話題になったこともあり、個人の資産形成への関心が一段と高まっているように感じます。

国も、個人の資産形成をサポートするためにNISAやiDeCoといった投資に関する税優遇制度を充実させており、なかでも投資信託がNISAを利用して最も多く購入される商品となっています(出所:金融庁「NISA・ジュニアNISA 口座の利用状況調査」)。

しかし、投資信託協会が全国の20歳~79歳の男女を対象に実施した調査では、投資信託の保有者は2018年時点で14.7%にとどまっています。

投資信託の非購入理由としては、「投資の知識がない」、「損をしそうで怖い」といった理由のほか、「まとまった資金がない」といった理由が上位にあがっています。

では、そもそも投資信託とは何でしょうか?
投資信託協会のホームページから抜粋します。

「投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品で、その運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配される仕組みの金融商品」

これだけを見ると、確かに投資の知識がなければイメージしづらく、損をしそうで怖いものやハードルが高いものに思われるかもしれません。

今日は、皆さんもイメージしやすいプロ野球チームをたとえにとって、投資信託の概要を見てみたいと思います。

(プロ野球チームイメージ図)

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(投資信託イメージ図)

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プロ野球チームでいうと、監督(ゼネラルマネージャー)が編成方針に則って、投手や捕手といった選手を獲得し、運営を行っています。

投資信託も同じように、運用の専門家(ファンドマネージャー)が運用方針に則って、株式や債券などを選択し、運用を行っています。

プロ野球チームでは、投手力に重きを置いたチームもあれば、打撃力のある選手を揃えたチーム、若手をメインに据えたチームもあり、編成方針の違いによって獲得する選手も変わってきます。

投資信託も同じように、日本の会社の株式のみを組み込んだものもあれば、日本のみならず海外企業の株式や、債券を組み込んだものもあり、運用方針の違いによって、組み込まれる株式や債券などの種類が変わってきます。

投資信託に組み込まれる株式や債券などの違いによって、それぞれの投資信託が持つ特徴が異なってくるため、投資家は運用方針や投資信託の中身をしっかり確認して、自分の希望に合った投資信託を選ぶことが重要になります。

例えば損をするのが怖いという人にとっては、比較的リスクが小さい(代わりに期待できるリターンも相対的に小さい)債券中心の投資信託を選ぶことなどが考えられます。


なお、プロ野球チームと投資信託の違いとして、ファンとして応援するのか、オーナーとして保有するのかという点があげられます。

皆さんもある日のスポーツ欄で突然ひいきのチームのスター選手がライバルチームに移籍してしまい、モヤモヤしたというような経験はないでしょうか。
そのような場合でも、通常、そのチームのファンでいることまでやめてしまうというケースはまれだと思います。

投資信託の場合、運用方針が明示的に変更されることはあまりありませんが、監督であるファンドマネージャーの交代や、選手である投資先が大きく変わることは起こりえます。
皆さんはその投資信託のオーナーですから、毎月発行されている月次レポートや、決算期ごとに作成される運用報告書の内容を定期的に確認することも重要です。
仮に当初期待した姿とは全く違う運用内容になってしまい、もう信じられないと感じた場合は、解約するという判断も必要になるでしょう。

当然ながら、ファンとオーナーの違いは経済的な効果にも関係します。

プロ野球チームが、その運営が成功し優勝しても、チケットやグッズを購入していたファンには目に見えるリターン(経済的なメリット)はありません。

一方で、投資信託が良い運用成果を達成すると、投資信託を購入していた投資家には、投資していた金額の増加や、投資額に応じた分配金の獲得といったリターンが発生します。
反面、運用成果が悪くなった場合には投資家が損をすることもあります。この点は銀行の預金などとは違って、基本的に元本が保証されているものではないため注意が必要です。


オーナーになる、というとまとまった資金が必要と思われてしまうかもしれませんが、プロ野球ファンがチケットやグッズを少額から購入できるのと同じように、投資信託の投資家も少額から購入できるようになっています。
例えばネット証券を使うと、100円からでも投資信託を購入することが可能です。

よって、仕事や家事、育児などで投資を学ぶ時間が無く、投資の知識をなかなか身につけられない人にとって、投資信託は運用の専門家に少額から運用を代行してもらえる商品といえます。
一方で、専門家に運用を代行してもらうため、それぞれの商品に手数料が発生します。商品によって手数料の水準に差があるため、その点も確認する必要があります。

簡単な概要ではありますが、このように理解することができれば、個人の資産形成の手段の一つとして、投資信託をより身近なものにイメージすることができるのではないでしょうか。


さて、プロ野球チームのファンは、上述の通り目に見えるリターンは得られませんが、思い入れのあるチームを応援することを通じて、高揚感や満足感、チームや他のファンとの一体感といった目に見えないリターンを得ています。

そのため、「今年優勝できそうかどうか」で応援するチームをころころと変える人はいないと思います。所属している監督や選手の魅力、本拠地とする地域への愛着、チームブランドなどが、ファンにとってどのプロ野球チームを応援するかの基準となっています。

一方で、一般的には投資信託では目に見えないリターンは得られないため、主に運用成果が、投資家にとってどの投資信託を購入するかの基準となっているように思います。

ただし、過去の運用成果のみで投資するかどうかを決めるのは非常に危険です。将来の運用成果がどうなるかは、過去の成績からだけではわからないからです。

結局のところ、野球チームを選ぶときと同様に、その投資信託はどんな運用方針(編成方針)で、どんなファンドマネージャー(監督)が、どんな投資対象(選手)を選んでいて、それらが一体になって今後もいい成績を期待できそうなのかどうか、を確認していくことが重要です。

また、個人的には投資信託でも目に見えないリターンを投資家に提供することは可能であり、重要であると考えています。

例えば、投資家がその投資信託を購入することで、月次レポートや運用報告書から他では得られない有益な情報を手に入れることができたり、運用報告会やセミナー等のイベントへの参加を通じて、ファンドマネージャーや同じ投資家仲間とリアルに繋がったりといったことが考えられます。

今後、資産形成の手段として投資信託の購入を検討される際には、目に見えないリターンを生み出す要素についても、選択基準の一つとして意識してみてはいかがでしょうか。

(担当:野口)